第39話

 深夜。

 二人は交代し、それぞれのテントで眠りをつく。

 そしてVは夢と想像の間の物を見た。


 雨が降る深夜、もしかすると昼かもしれない。どちらにしろ暗かっただろう。

 ほかのパーティーは別の部屋で焚火を囲んでいる。


 その中でなぜか二人、別の部屋に。


 そして、何を言っているかわからない口論。


 理由は金か、恋か、名誉か。冒険者など大抵俗だ。モンスターの発生原因や分布状況などで喧嘩しない。

 そして男が部屋から出ようとしたとき、女が短剣を抜いて、後ろからぶつかるように刺す。


 男かもしれない。


 いや、傷口は下から上に突き上げていた、背は低い、あの短剣を持ち歩くのは女が多い。


 偏見か。


 ならもう少し低い方が刺しやすい?

 衝動で殺したのだろう。

 そんなの気にしていない。


 刺して。混乱して。


 ほかのパーティーも気づく。

 また混乱。

 仲間の死体。仲間を殺した仲間

 混乱。まとまりがない。けれど、一流のパーティーはそんな場面に出会うことはまずない。

 そんなのは三流がやるトラブルだ。

 だから混乱。


 逃げる。


 とりあえず逃げよう。

 そういった話になる。

 武器、そのほか何に使えるかわからない荷物を手当たり次第に。

 必要かどうかわからない。いや、必要な物を持てていない。


 そして雨が降り、真っ暗な中、ダンジョンから飛び出して、森の中を駆けていく。

 どちらに行くでもない。だから国境を越えた。

 道もわからない暗闇。


 残された死体。


 緑色の藻が周りに集まる。



 その死体の顔は、僕だ。

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