第33話
昔 首都のはずれの大きな商人の家にて
「こんにちは」
「これはおぼっちゃん。お久しぶりでございます」
「話は聞いているだろう?家から出たんだ。貴族じゃないからさ。そういう喋り方はやめてくれよ」
「いえいえ、これは私個人の考えで行っているだけですから」
「そうか。まぁ、それに命令できる立場でもないけれどさ」
「その、こんなお願いするのも筋違いなんだが、今日はお願いに来たんだ。鎧を作りたいんだが、誰かいい職人を紹介してもらえないか。君は顔が広いだろう」
「鎧ですか。何に使われるのです?」
「冒険者になったんだ」
「冒険者ですか、それはまた」
「それはまた、の続きは大体わかるからいいよ。それでもなったんだ。剣一本で稼げる商売にね」
「さようですか。しかしお坊ちゃんの才覚なら冒険者でもトップクラスになれますでしょう」
「お世辞だね。でもありがとう」
「しかし鎧ですか、よい職人は何人も知っておりますが、何か好みでもございますか?」
「新人がいいな。有名所じゃない、仕事もあまりこなしていないようなさ」
「命をかけるものですから、実力に疑問があるのはどうかと」
「正直に言ってそこまで予算がないんだ。新人なら足元を見れるだろうし、こちらの足元を見ることもないだろう?それに早いうちから恩義を売りつけておけば長い付き合いになった時に何かといいかと思ってね」
「商売上手ですな。冒険者ではなく当社で働きませんか」
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