第31話


 ダンジョンの中は湿っぽかったが、Vの松明は4本もいらなかった。

 薄気味悪い緑色の苔が発光しているし、所々に採光用の窓があるので意外と明るい。

「なんだ。この建物」

 たまに部屋があるので4人で周りを警戒しながら確認するが、そこにはもう何もない。

 あるのは薄気味わるい苔だけだ。あとカビ。

「危険・・・どこが?」

 表にあった立て札を思い出しながら鉄兜の一言。

「モンスターがいる形跡はありませんね。人がいた感じでもない」

 獣の毛や足跡みたいなものが全くないのをみたVの答え。

「おかしいですね。周りにはあんだけモンスターがいた形跡があったのに。動物すらいない」

「動物が寄り付かないんでしょうか?」

「寄り付かない?聞いたことがありませんねぇ」

 ダンジョンはモンスターが集まるからダンジョンだ。

 古代のダンジョンに至っては中からモンスターが湧いてくることすらあるときく。

「中を確認したのは初めてなんじゃないか。外にモンスターがたくさんいるのを見て危険って立て札だけ立てたとか。村人はここには来ないだろうし、来るのは密猟者か迷い込んだやつ程度だろう。騎士団も見回りで中を確認しない」

 ドーリーは前を確認しながらそう言った。先の方に光が見えるが、あれは壁が崩れているだけだろう。

「周りにモンスターが居るから中にもいると思ってダンジョン扱いですか。まぁ可能性はありますが、にしても動物やモンスターが少しは荒らすでしょう。ここまでいないのは逆におかしい」

 Vの言葉を聞きながら一行は前へ。


 先に進むと廊下の片方の壁が崩れており、外が見える。

噴水か池かわからない水たまり。

「一回外に出よう。全体が把握できそうだ」

 そういってドーリーはその壁から外へ。次にV。

 二人の手を借りてマリーが続き、最後に三人で鎧の鉄兜を引っ張る。


 中央にあるのはおそらく池だが、噴水のように整備されていた。

 石で作られた丸い囲い、中央から湧き出る水、、下を見たら敷き詰められた石、上を見れば空が見える。

 それを四角く囲むように建てられているダンジョン。

「そこから湧き水でもでてるんでしょうか?きれいですね」

 池の水は水路を通って建物の中へ。

「飲める?」

 鉄兜の疑問。

「少しまってください」

 そういってVはカバンから透明な瓶にひもを括り付けて水に投げ入れる。

「いるのか?紐」

「触ったら手が解けるとか、そんな可能性も無きにしも非ずなのがダンジョンですからね。慎重にやらないと」

 そういって汲みだした水に魔法をかける。

 色が真っ黒に変わる。

「魔法に詳しくないが当ててやろう。真っ黒になるのは飲めません、ってことだろ?」

「いえ、飲んだら死ぬってことです」

 黒は猛毒、赤は死なないがヤバい、変色しなければ安全、ちなみに黄色は「わからん」という事。

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