第28話
「こんなモンスターは見たことありません」
サル型モンスターの死亡を確認するために近寄ったVは、護衛としてついてきた鉄兜にそう言った。
「A国・・・・モンスター?」
「かもしれませんね。国境沿いですから」
二人はサル型モンスターが死んでいることと周りの安全を確認した上で、手を魔法で光らせて後方で控えていた二人に合図。
それをみたドリーとマリーは二人の元に向かってくる。
かなりの距離。二人とも腕前はいい。
二人は近距離での戦いより遠距離から狙う方が得意。
鉄兜はバリバリの前衛派だが、指示された役割を適切にこなせる経験者。
なので
「マリーとドリーが遠距離からモンスターを狙い追い払う。鉄兜はその間、モンスターが二人を不意打ちしないように剣を持って護衛」
という戦闘スタイルになった。
そしてVは、まぁ戦闘はどうにも不向きなので下働き。鉄兜の後ろでモンスターが来ないか監視したり、倒したモンスターの戦果確認をしたりする。
「でけぇサルだ」
二人と合流したドーリーはサルの死体を確認してそう言った。
鎧と兜で着ぶくれしている鉄兜と比べても一回りはでかい。
「見たことありますか?」
「ないですね」
銃を担いだマリーは率直にそう答える。
「一応埋めておくか?」
「これを埋めるには相当時間がかかりますよ」
「大きい・・・大変」
「私が燃やしますから、周りに穴を掘ってもらますか。防火用です」
三人の相談に対してマリーはそう指示をだす。
雇い主の意見は絶対。
A国軍の隊長が冒険者に出した指示は「斥候」だった。
露払い、先遣隊、ニュアンスとしてはそう内容で
「捜索隊の先行して危険がないか確認してくれないか」
というもの。
現在、騎士団も軍隊は辺境公の霊廟でセレモニーと捜索隊に関する取り決めや、残りのパーティーの受け渡しに関する書類交換などを行っているが、両機関ともダンジョン探索については素人の集まり。
一方で冒険者はダンジョン探索の心得もあるというよりそれが仕事なので慣れたものだし、少人数で動くこともなれているので小回りが利く。
辺境公が雇った民間人であれば捜索隊を正式に結成する前に別働隊として動いても問題ない。つまりセレモニー完了前に動いてもいいということで先遣隊の仕事を任されたわけだ。
それに冒険者たちにとって騎士団や軍隊と協力したよりも単独の活躍の場があった方が依頼主の覚えもいいだろうという心遣いもある。
「もし少しでも危険と判断したらすぐに撤収してくれ。君らの仕事はその危険を取り除くのではなく、危険を我々に伝えることだ。あの地域を見回るうえでそこまで大きな危険は確認されてないが、一流どころの冒険者たちが壊滅状態に陥ったのも確かだからな。あそこで何かがあったのは間違いないんだ」
これは隊長の指示。騎士団長も同様の意見を述べた。
「こんなもんですか」
モンスターの周りに浅めの穴を掘った三人は雇い主に次の指示を求める。
「じゃぁ焼きますから。下がっていてください」
そういって三人が下がったところで銃を構え呪文を唱えるマリー。
玉は入っていない。銃は彼女にとっての杖。
呪文を唱え終わるのと同時に引き金を引く
燃え上がるサル型のモンスターの死体。数分間穴の中で燃え続け、そして急に消える。
残るは灰と骨だけ。それに三人は土をかぶせて完全に消火。
「ふう、行きましょうか」
手際よく片付ける三人を眺めて満足したマリーはそう言い、Vが地図を見ながらダンジョンへの道を進んでいった。
道と行っても獣道だが。
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