色々おかしいというか その2

 その後も、何度か釣りに挑戦した俺なんだけど……釣り糸を投げる度に鳥系モンスターが飛んで来て針の餌にくいつくもんだから……一時間近く悪銭苦闘したにもかかわらず、俺の釣り糸が湖面に到達することは一度もなかったわけで……


「さすがにこれ以上は釣りも出来ないしなぁ」


 陸にあがったロックトータスの背中から、後方へ遠ざかっていく湖を見つめながら思わずそんな言葉を口にした俺。


 そんな俺の背後には、俺が釣りまくった鳥系モンスター達が山積みになっていて……って、これって釣果といってもいいんんだろうか?


「パパ! すごいです!」

「こんなにいっぱい釣り上げるなんて、お父様素敵ですわ!


 まぁ、クーリとフリテリナが喜んでくれているし……とりあえずよしとするか……


「しかしあれだな……なんで釣りの餌に鳥系モンスター達がくいつきまくったんだろう……」


 そんな事を考えながら改めて釣り竿を確認した俺。


【伝説級釣り竿 SSS級 シードラゴンでも釣り上げることが可能】


 まぁ、色々規格外な性能を有しているのはステータスウインドウで確認出来たんだけど……


「……あれ?」


 ここで俺はあることに気がついた。

 釣り糸の先、針につけた餌なんだけど、これってエカテリナからもらった品物なんだけど……


【高級撒き餌(飛行モンスター用)】


 ……ん?


 一度目をこすり、改めてウインドウを見つめる俺。


【高級撒き餌(飛行モンスター用)】


 ……うん、間違いない……この撒き餌って、飛行モンスター用じゃないか……そりゃ鳥系モンスターがよってくるわけだ……


 原因が発覚してようやくすっきりした俺なんだけど、ウインドウはそのまま閉じて、釣り針についている餌はそっと収納ストレージに格納しておいた。

 結果的に子供達も喜んでくれたわけだし、俺自身もありえない体験が出来て楽しかったわけだし……それでいいじゃないか。


「エカテリナ、ありがとね。おかげで楽しめたよ」

「ほ、他ならぬ旦那様と子供達のためなんだもん! これくらいどうってことないんだからね!」


 俺の言葉に、いつものツンデレ口調を返してきたエカテリナなんだけど、その一方で、


「……おかしいわね……なんで鳥系モンスターがこんなに寄って来たのかしら……撒き餌なんて使ったことがなかったけど、こんなものなのかしら……」


 ブツブツとそんな事を呟いていたわけで……確かこの撒き餌ってS級未満のモンスターにしか効果がないって話だったし、S級以上のモンスターしか狩っていないエカテリナには無用の品物だったんだろう。


 そんなわけで、


「じゃあスクショとりますね!」


 同行していたエナーサちゃんに記念写真を撮影してもらった俺達。


 釣果である鳥系モンスターをバックに、Vサインをしている俺と、そんな俺に抱きついているクーリとフリテリナ。

 そして、俺に抱きつきたいものの、ツンデレ体質が邪魔をして手をだせずにいるエカテリナというどこか笑える記念写真になったのは、我が家ならではなのかもしれないな、うん。


「そういえばゴーメ、ロックトータスはどこに向かっているんだい?」

「基本的に、ロックトータス様は自由気ままに移動なさるのですが、今日はイベントフィールドの方へ向かっておられるみたいございます」


 俺の言葉に、恭しく一礼しながら応えてくれるゴーメ。

 

「イベントフィールドってことは、エカテリナが狩りをしている場所なのかな?」

「えぇ、そうなんだからね!」


 ツンデレ口調で応えるエカテリナなんだけど……気のせいか、ソワソワしているような気がしないでもないというか……


 あ、そりゃそうか……


 イベントフィールドってことは、現在開催されているイベントの会場ってわけだし、イベントでしか登場しないモンスター達が出現している場所ってことだもんな。

 イベントではいつも上位に入っているエカテリナなんだけど、今回のイベント期間は家族ですごす時間を優先したせいか100位まで表示されるランキングのギリギリあたりにしか名前がなかったんだ。


「あのさ、このままイベントフィールドに向かってもらうことって可能かな?」

「えぇ、それは問題ありませんが……」

「じゃあ、お願いするよ。あと、村からポロッカとグリン、それとラミコも呼んでくれるかい?」


 俺の言葉を確認すると、ロックトータスにお願いするためにロックトータスの頭部へ向かって走っていくゴーメ。その後方ではゴーレム狸達が村へつながっている扉へ向かって走っていった。


「あのさ、エカテリナ」


 ここで俺はエカテリナへ向き直った。


「俺さ、今までエカテリナが戦っているところって、動画やスクショでしか見たことがないんだけどさ、格好いいところを見せてもらってもいいかな? 子供達も見たいと思うし」


 俺がそう言うと、クーリとフリテリナも笑顔でエカテリナを見つめていく。


「ママ! 僕すっごく応援します!」

「お母様! 頑張ってください!」


 そんな2人と、俺の笑顔を見つめていたエカテリナはというと……


「そ、そんな事を言われても、アタシはみんなと一緒の時間をすごすと決めたんだからね!


 って言いながらも、いつの間にかドラゴン装備に着替えていて、手にもドラゴン攻略に効果的なエルフの弓を……


 さらに、


「ママ! 来たベア!」

「狩り、お供するわ!」

「ドロップアイテムの収集は妾におまかせなのじゃ!」


 村から到着したポロッカ、グリン、ラミコの3人の姿を確認すると、


「……で、でもまぁ、そこまで言われたんじゃあ、活躍してあげるしかないんだからね!」


 って、言葉の意味がどこかおかしい感じのツンデレ口調を叫びながら、


「さぁ、行くんだからね! みんな!」


 背中に飛翔用の羽根を具現化させて前方に向かって飛び立っていった。


 最近のエカテリナは、自分のためじゃなく、俺と一緒の時間を楽しんでいる感じだったんだよな。

 それでも楽しんでくれているみたいなんだけど、でもエカテリナは元々モンスターを狩るのが楽しくてこのゲームをしていたわけだし、たまにはこうしてイベントにも参加させてあげないとな。


 そんな事を思った俺は、


「じゃあ、2階のベランダからママ達を応援しようか」


 クーリとフリテリナを連れて別荘の中へ入っていった。

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