女神様×女神様 その4
存在進化したリトリサ女神見習いのおかげで、ログインの街のお店を安定して営業出来る目処がたったわけなんだけど、
「となると……あとは商品をどいうするかだな」
俺は腕組みをしながら首をひねった。
今日も、それなりの在庫を持っていったつもりだったんだけど、1日で全部売れてしまったわけだし……
「フリフリ村長さん、その事でしたら……」
そんな俺の元に、テテが歩み寄ってきた。
「村のみんなのレベルがすごくあがっていますので、商品の備蓄がすごく増えているんです」
テテが案内してくれたのは、メタポンタ村のはずれの倉庫だった。
こんなところに倉庫なんてなかったはずなんだけど……
「アドワさんとオドワさんが作ってくださったんです。村長代理として建設を許可させていただいたのですが、村長さんの指示で場所を移動することは可能ですので、いつでもお申しつけください」
「いやいや、むしろ俺がログアウトしている間に必要に応じて対応してくれて助かるよ」
「ありがとうございます。そう言って頂けると助かります」
俺の言葉ににっこり微笑むテテなんだけど……場所的にも、畑が作れない荒れ地に作ってあるので土地を有効活用出来ているし、村の入り口からは若干離れてはいるものの整備された通路が延びているのでそれも問題ないように思える。
テテに案内されて倉庫の中へ入ってみると、
「……こ、こりゃすごいや」
思わず感嘆の声をあげてしまった。
外見だと、俺が住んでいる家より一回り大きいくらい、入り口近くに建設してある倉庫よりも一回り小さい感じのこの倉庫~便宜的に第二倉庫と呼ぶことにするけど、
「この中って、入り口近くに作った倉庫の倍……いや、3倍は物が入っているんじゃないか?」
目を丸くしている俺の前には、すごい数の木箱が山積みになっていた。
その木箱には、
『メタポンタ村商品』
『リザード族の村商品』
『エルフの村商品』
といった札が張られていて、その札を触ると中身がウインドウ形式で表示されるようになっていた。
「今日、持っていっていただいた商品は入り口近くの倉庫の中の品物だけでしたので、こちらの商品はまったく手をつけていないんです」
テテの言葉に頷く俺。
実際、地下通路が設置されている入り口近くの倉庫~便宜的に第一倉庫って呼ぶことにするけど、今日はあの、第一倉庫からしか品物を持っていなかったもんな。
「それに、村のみんなもすごくレベルアップしていますので、もっともっと商品を生産することが出来ます」
「なんか……すごいな、マジで……」
在庫の山を見上げながら、ただただ目を丸くしている俺。
その視線の先では、いくつもの木箱を抱えているブランの姿があった。
両肩に、自分の倍以上の大きさの木箱を抱えて運んでいるブランなんだけど、全然重たそうに見えないんだよな。
まぁ、ゲームの中の演出なんだろうけど、さすがブラックドラゴンだけあって、その力がすごいって事なんだろう。
「あぁ、主殿。お疲れ様です」
俺に気がついたブランは、ニコッと笑みを浮かべながら頭を下げた。
同時に、両肩に乗せている木箱まで傾いたんだけど……現実世界だったら確実に俺の方に倒れて来ている木箱の山は、物理法則を無視した形でブランの肩にへばりついたままだった……って、まぁ、これもゲームだからってことなんだろう。
「ブランは、ここの手伝いをしてくれているのかい?」
「うむ、テテ殿に頼まれてこの倉庫内の木箱の管理を任せてもらっている。テテ殿の指示で、ポロッカも警備の合間に手伝いをしてくれている」
確かに、倉庫(ここ)は力持ちなブランにはもってこいの働き場所といえる。
ポロッカにしても、力持ちな熊型モンスターなわけだし、こちらも適した配置といえるだろう。
「ブランも、お疲れ様。これからもよろしく頼むな」
「あぁ、任せておけ主殿」
俺の言葉に、力こぶで応えてくれるブランなんだけど、適材適所に人員を配置してくれているテテって、村長代理として申し分ないどころか、俺に変わって村長をしてくれてもいいんじゃないかと思えてしまうくらいだ。
「テテ、いつも村のために頑張ってくれていてありがとな」
「いえいえ、私はただ、与えられた仕事を一生懸命こなしているだけですので……それに、フリフリ村長さんがいなかったら、こうして能力を発揮することも出来ませんでしたので」
俺の言葉ににっこり微笑むテテ。
テテをはじめとした、メタポンタ村で暮らしている仲間キャラのみんなは、この世界ではノーマルNPCって分類になる。
モンスター討伐がメインの、このゲームの中では外れキャラ扱いで、低級のモンスター相手でも簡単に倒されてしまう……そんな存在なんだ。
でも、縁あって、俺の村で暮らしてもらうことになって、こうしてすごく頑張ってくれているわけなんだ。
テテと話をしていると、イースさんとエナーサちゃんが歩み寄って来た。
「ノーマルNPCさんがこんなに役に立つなんて、びっくりでしゅ。こんなの、元いた情報掲示板サイトの皆さんも知らなかったでしゅ」
「でも、モンスター討伐には向いていなかったわけだし、このディルセイバークエストの中で内政をメインにするプレイヤーも、今までほとんどいなかったわけだし、誰も知らなくて当然と言えば当然ですね」
互いに頷きあっているイースさんとエナーサちゃん。
そんな2人の前で、俺はテテの頭を撫でていった。
俺より若干背が高いテテなので、少し撫でにくかったんだけど、まぁ、どうにか手が届いている。
「え? あ、あの……フリフリ村長さん?」
「いつもホントにありがとな。これからもよろしく頼むよ」
困惑した表情を浮かべているテテ。
そんなテテにニカッと笑みを浮かべながら頭を撫でている俺。
現実世界でやったらセクハラと言われかねないんだけど、ゲームの中なら問題ないよな。
俺が頭を撫でていると、テテは頬を赤らめてうつむいていった。
「……あ、あのフリフリ村長さん……ご存じですか? 私達仲間キャラって、ああやって家族を作ることも出来るんです」
そう言ってテテが指さした窓の外へ視線を向けると、そこでは、背中に赤ちゃんをおぶった男性キャラが畑を耕しているのが見えた。
「あの赤ちゃんって、ひょっとしてメタポンタ村で暮らしている仲間キャラの子供なのかい?」
「はい。村の中で仲良くなった男性キャラと女性キャラが一緒に暮らしはじめて、子供が生まれたんです」
「へぇ……そんな機能まであるんだ」
テテの説明を聞きながら感心しきりだった俺なんだけど、そんな俺の元に一歩踏み出してくるテテ。
「……そ、それでですね……わ、私にも同棲することで子供を産む事が出来る機能が備わっていてですね……」
「あぁ、そりゃそうだよな。他の仲間キャラが出来るんだし、テテだって出来てもおかしくはないよな」
「はい……それでですね……もし、フリフリ村長さんさえよろしかったら、私と……」
モジモジしながらそんな事を言い出したテテなんだけど……
「……ちょっとテテ……旦那様の役にたてているからって、ちょっと調子に乗りすぎじゃありませんこと?」
テテの首筋に、抜刀された剣が押し当てられた。
その背後には、絶望のオーラモーションを発動させているエカテリナの姿が……って、まぁ、そうなるよな……一緒にこの場にいたわけだし……
「いいい、いえいえいえ、フリフリ村長さんの本妻は当然エカテリナ様でございますし、そのお邪魔をしようとは思っておりません。ただ、子を成す協力をして頂けたらと思っただけで……」
「はぁ!? それって旦那様と不倫させろって事よね!? 何言ってんのよ、この泥棒猫!」
「あああ、あのですね、別に行為をする必要はないんです。このゲームではそう言った行為は認められていませんし、ただ、私の家で何日かログアウトしてくださるだけで……」
「い~や~で~す~! そんなの本妻が認めませんわ!」
「ででででもですね、子を成すと、色々と特典もありますので、フリフリ村長さんやエカテリナ様にも色々と恩恵が……」
「そんなの、私が旦那様と子を成せばいいだけの事じゃない!」
そう言うと、俺の手を掴んだエカテリナは、
「さぁ、旦那様! アタシと一緒に子作りするんだからね! 拒否権はないんだから!」
俺を引きずりながら倉庫を出て行ったんだけど……おいおいエカテリナ、そう言う行為は、このゲーム内では禁止なんじゃ……
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