なんか、村が賑わっていて…… その5
ログインの街で、フオドーハと提携するという思わぬ出来事があった俺。
これで、ノーマルキャラの中でも有能なスキルなんかを所持しているキャラを選りすぐって迎えることが出来るようになりそうだ。
ただ、メタポンタ村の規模が大きくなれば、有能なスキルを持っていないキャラ達も迎え入れてあげたいなぁ、と思ってはいるんだけど……
「フオドーハのリストが1000人を超えて、さらに更新されるくらい販売される仲間キャラがいるわけだし……さすがにそこまでは難しいか……」
思わずため息をついてしまった。
◇◇
ラミコが気合いを入れて引っ張る荷車にのってメタポンタ村へ戻った俺達。
そんな俺達を、ファムさんとテテが出迎えてくれた。
出発するまでは姿がなかったファムさんなんだけど、
「いやぁ、ちょっと色々ありまして……まさか事情聴取されるとは夢にも思いませんでした」
そう言って苦笑しているファムさんなんだけど……ま、まさか……朝、俺の部屋の様子を裸で見に来たせいで、警察に通報されたとか……い、いや、いくら一般常識が若干欠如気味な古村さんだからって、まさか通報されるくらい長時間外にいたとは思えないんだけど……とはいえ、なんか怖くて詳細まで聞くことが出来なかった。
ファムさんとテテの2人と一緒に、新しくメタポンタ村の住人になった10人の仲間キャラ達の家を決めていった。
そんな中、鳥族の女の子が、
「ウチ、あの木の上に住みたいわぁ」
って、関西弁で村の一角にそびえている巨木を指さした。
「それはかまわないけど……でも、居住スペースはどうやって作ればいいかな」
巨木を見上げながら首をひねっていると、
「大丈夫やよ、フリフリ村長はんが許可してくれれば」
「そうなの? 別に俺はかまわないけど……」
俺が許可したのを確認すると、鳥族の女の子は背中の羽をばたつかせながら巨木の木の上の方へ移動していったんだけど、すると木の枝の間に
ポンッ
っていう音とともに、こじんまりとした小屋が出現した。
「ウチら鳥族は住む場所が木の上と決まってるさかい、住むことが許可されたらこうして家が自動で出現するようになってるんやわ」
そう言うと、鳥族の女の子は嬉しそうに笑顔を浮かべながら木の上の小屋に入っていった。
これだと、土竜族の男の子は土の中に家が……とか思った俺だったんだけど、
「あ、俺っちは普通の家でよろしく、よろしく」
と、少し軽い感じで人間キャラ達の後方に移動して、一緒に家を見て回っていた。
なんか、ちょっと拍子抜けしちゃったんだけど、まぁ、そんなキャラも中にはいるんだろうってことで、自分を納得させた俺だった。
ちなみに……
人間のキャラ達は、みんな自分で名前を持っていたんだけど、鳥族の女の子と土竜族の男の子は、
「せっかくやし、フリフリ村長はんに名前をつけてほしいなぁ」
「俺っちもそれに賛成! よろしく、よろしく!」
なんか、2人同時に名付けをお願いしてこられてしまって……とにかく、名前を付けるのが苦手な俺は明日まで待ってくれるようにお願いするのがやっとだった。
……ラミアだからラミコって、すっごく適当な名前をつけてしまった過去があるだけに、今度はしっかり考えないとな……
そんな事を考えながら、今日のプレーを終了し、ログアウトしていった。
◇◇
「……あ~……なんか、今日はすごい1日だったなぁ……」
昨夜から小鳥遊が泊まりに来て、そのまま朝からでかけたわけなんだけど、
いきなり全裸の古村さんが部屋を訪ねてくるし……
休日なのに、電車で早苗ちゃんに出くわすし……
すっぴんの東雲さんにまで遭遇して……
……あ、いや……すっぴんの東雲さんを見れたのは、むしろご褒美というか……いつものナチュラルメイクの東雲さんも綺麗なんだけど、すっぴんでもすごく綺麗なんだってのを確認出来たのがなんか嬉しかったっていうか……まぁ、でも、東雲さん的には見られたくなかったらしくて、すごい勢いで立ち去っていったわけだし……そうだな、この話題には今後も触れない方がいいだろうな。
ピロン
「……ん? メッセージ?」
こんな夜中にメッセージが届くなんて……はて?
首をかしげながらスマホを確認してみると、送信してきたのは東雲さんだった。
ちょうど東雲さんのすっぴん姿を思い出していたもんだから、思わずドギマギしてしまった俺なんだけど……いかんいかん、まずは内容を確認しないと……
『夜分遅くに申し訳ありません。先ほどまで、ゲーム内でご一緒させて頂けて光栄でした』
いつものように、礼儀正しい挨拶を、まず送信してくれている東雲さん。
こういった常識をしっかりわきまえている東雲さんが、こんな夜中にメッセージをしてくるなんて……なんか違和感を感じた俺。
続いて届いたメッセージには、
『実は、ディルセイバークエストの攻略サイトの今後の運営のことでご相談させて頂けたらと思っているのですが、もしお邪魔でなければ、明日ご自宅にお邪魔させていただけないでしょうか?』
……はい?
いや、その、なんだ……攻略サイトに関しては、今後も協力させてもらうって約束をしているので、その相談にのることは別に問題ないんだけど……えっと、俺の部屋で?
……いや、そりゃあ確かに、昨夜から今朝にかけて小鳥遊が泊まっていたけどさ……あれは、小鳥遊が俺のことを男性として意識していなかったっていうか、一緒にゲームをする友人的な気持ちだったからこそであって……ま、まぁ、なんか、時々それっぽい雰囲気になりかけたような気がしないでもないんだけど……結果的に、男女の関係になってしまうとか、そんな事はなかったわけだしな。
それに、東雲さん的にも、家の外でゲームの会話をしているところを取引先の相手や上役の人達に見られたらまずいと思っているのかもしれないな。
ゲームの会話云々を抜きにしても、俺と一緒にいるところを誰かに見られることを懸念しているのかもしれないし……そう考えた結果、東雲さん的に『俺の部屋で会うのが一番無難』という結論に至ったのかも……
……それに、俺なら、東雲さん相手に変な気を起こすこともないだろうって、信用してもらえてるのかもしれないし。
『わかりました。何時くらいに来られますか? 必要なら途中まで迎えに行きますよ』
あれこれ思案した後に、そう返事をした俺。
すると、すぐに返事が返ってきた。
『では、朝10時頃にお邪魔させていただきます。昼食の準備はお任せください』
普段はコンビニで食事を済ませる事が多い俺だけど、それなりに料理を作れるんだけど、せっかく東雲さんが任せてって言ってくれてるんだし、ここは好意に甘えさせてもらってもいいんじゃないかな、って思ったわけで……
『じゃあ、よろしくお願いします』
そう返事を返しておいた。
次のメッセージが届かなかったので、俺はシャワーを浴びて寝ることにした。
「……しっかし、昨日は寝た気がしなかったからなぁ……」
大あくびをしながら、俺は風呂場へ移動していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます