第71話 ざまぁみろ


「お願いしゃーす!!」

ホームベースを挟んで、両チームが向かい合い、元気よく挨拶をし、

後攻の私達、陵成高校ナインが元気いっぱい、グラウンドに散って行きます。

ボール回しの手伝いを終えると、先輩は一人、ベンチに戻ってきます。


「あいつ、何で一人だけこっちくんだ?」

「そりゃあ、一人だけ補欠だからさ」

「一人だけ?」

「そうそう」

「なんか、これはこれで面白れぇな」

「だろ?」

「ぎゃはははは」

金子先輩たちの嫌な笑い声が聞こえてきます。


でも先輩は全く気にしていない様子で、ベンチに戻って来るや否や、

「さぁ!声出していこうぜ!」

大きな声で、チームを盛り上げようと頑張っています。


対戦相手は夏の大会ベスト16の光南学園。

強い相手ではありますが、大村くん要する陵成高校ならきっと勝てるはず。


「プレーボル!!」

鳴り響くサイレンと共に大村くんはゆっくりと振りかぶり、

松島先輩のミット目掛けて、力強いストレートを投げ込みました。

「ストライーク!」

「ナイスボール!」

先輩が真っ先に声を掛けます。

内野陣からも続いて声が飛びます。

「いいぞ、大村!」


スタンドからは金子先輩たちの声は聞こえてきません。

きっと大村くんの豪速球に言葉も出なかったんだと思います。

私は心の中でつぶやきました。

「ざまぁみろ!」

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