第70話 気にすんなって


「おいおい。どういうことだよ。せっかく楽しみにしてきたのに」

「高坂・・・。あいつか。くっそぉ」

声の主は金子先輩と一緒にいた柄の悪い人たちでした。


「おい!高坂!」

金子先輩がベンチの上から叫びました。

高坂先輩がベンチから出て、スタンドを見上げました。

「てめぇ、なんでここにいるんだ?せっかく児玉のエラーを楽しみにしてきたのに」

高坂先輩はあからさまにムッとした様子で

「お前にはもう関係ねぇだろ!だったらもう帰れよ!」

そういうと高坂先輩はベンチに戻りました。


またベンチの上から声が聞こえてきました。

「金子。どうすんだよ。ただ野球観たってつまんねぇじゃん」

「帰ろうぜ」

「ちょっと待てって。せっかく来たんだし、ちょっと観て行こうぜ」

金子先輩はきっと、高坂先輩に言われて帰るのが気に入らなかったのだと思います。

試合中に邪魔するようなことが無ければ良いのですが・・・


「よし!整列だ!」

松島先輩の号令で、ベンチ前に選手達が整列しました。

「おら!しっかりやれよ!」

「ぎゃはははは」

金子先輩のヤジと、連れの人たちの笑い声が聞こえてきました。

高坂先輩はスタンドを睨み付けています。


「高坂くん。気にすんなって」

先輩が高坂先輩に微笑みかけます。

「そうだな、すまん」

高坂先輩も我に返った様子で、ようやく試合に集中できそうです。


「いくぞ!」

「おう!」

松島先輩の掛け声とともに、選手達が元気いっぱい、挨拶に向かいます。

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