第47話 あの打球

池崎くんはポカーンと打球を見送っている。

大村くんも打球を見つめている。


「そうだ!今の良いぞ!

 大村!もう一丁!」

「は、はい!」

大村くんは我に返ったように向き直った。


しかし、この後は、また空振りや凡打ばかり。

どうやら、さっきの打球はマグレだったらしい。


「あの打球、凄かったっすね!球場ならホームランっすよ!」

池崎くんが嬉しそうに言った。

「それは言い過ぎだけど、確かに、あれは良かったな」

松島くんがそう言うと、大村くんが

「俺、あの後、ちょっと力入っちゃいましたもん」

「バーカ!それじゃあ、練習になんねぇだろ」

「すみません」

「なんとかあの感覚をものにできると良いけどな」

松島くんの言葉に、僕は

「はい」

と答えた。

松島くんは怪訝そうな顔で僕を見た。


「まぁ、どっちにしろ、あれをコンスタントに出せなきゃダメだな」

松島くんの言葉に、池崎くんが

「なんだ。結局、松島さん辛口っすか。

 せっかく盛り上がってたのに・・・」

「うるせぇよ。さっさとグラウンド整備しろ」

「はーい」

池崎くんと大村くんはグラウンド整備、町村さんは片付けを始めた。


僕もグラウンド整備に向かおうとすると、松島くんが僕を呼び止めた。

「児玉、ちょっといいか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る