第22話 9回裏2アウト満塁

1回戦、2回戦と順当に勝ち上がった僕たち陵成高校は

3回戦で昨年ベスト4の強豪、城東高校と対戦することになった。


試合は初回、相手ピッチャーの立ち上がりを攻め

松島くんのタイムリーで1点を先制

大村くんの好投が光り、8回まで城東高校を完封

相手ピッチャーも2回以降立ち直り、追加点を許さず

緊迫した投手戦となっていた。


晴れ渡った空の元、夏の暑い日差しがグラウンドに照り付けている。

マウンド上は恐らく40度くらいはあるだろう。

さすがの大村くんにも疲れの色が見え始めていた。


1点リードのまま迎えた9回裏

先頭打者こそ三振に切って取ったものの

続く打者2人に連打を浴び

1アウト1、2塁

続く打者はレフトフライで2アウト

続く打者に四球を与えてしまい2アウト満塁のピンチを迎えてしまった。


マウンド上に集まる内野手たち

松島くんを中心に、先輩方が大村くんにエールを送る中

上山くんは1歩離れたところで、黙ってその様子を見ていた。


守備位置に散って行く内野手たち

声を出し、気合の入った内野陣の中

上山くんが守る1塁だけ、時が止まっているかのように、妙に静かだった。


「大村くん、大丈夫ですよね?」

「うん。もう大村くんを信じるしかないよ」

「大村くん!頑張って!」

「大村!あと一人だ!頑張れ!」

町村さん、池崎くん、僕の3人は、スタンドのフェンスにしがみついて

ただただ声を上げて、応援するしかなかった。

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