第18話 何で?

「いつからこの練習やってるんっすか?」

大村くんの問いに、先輩は

「入部して少しした頃からかな」

「そうなんだよ。凄いだろ!

 1日も欠かさずにやってらっしゃるんだよ」

池崎くんがなぜか偉そうに言いました。


「お前はいつから一緒にやってんの?」

大村くんの問いに、池崎くんは

「4月の終わりくらいかなぁ。

 先輩が一人で素振りしたり、

 自分でフライ上げたりしてるの見かけて

 なんかいてもたってもいられなくなってさ。

 だって先輩、へた・・・あっ・・・」

池崎くんがうっかり口を滑らせて、気まずそうにしていると

「いいよ。別に。へたくそだもんな。俺」

「いや、そのぉ。すみません。

 とにかく一緒にやりたいと思ったんだよ」

先輩は全く怒った様子もなく、笑顔で聞いていました。


「お前らは何で、一緒に来ようと思ったんだ?」

池崎くんの問いに、大村くんと私は顔を見合わせて

「そりゃあ」

「ねぇ」

「たぶんお前と同じだよ」

私たちはお互いに顔を見合わせて、微笑み合っていました。

先輩もずっと笑顔で聞いていました。


「じゃあ、自分たちこっちなんで」

大村くんと池崎くんが交差点で立ち止まって言いました。

「町村は?」

池崎くんの問いに、私は少し戸惑いながら

「私は・・・こっち」

私はとっさに池崎くんたちとは逆の方向を指して言いました。

「あ、そっ。じゃあ、お疲れしたっ」

大村くんと池崎くんが歩いて行きました。


私は初めて、先輩と二人きりになってしまいました。

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