第77話 霊峰

 翌日の午後、キミマロに乗った私とジョナマリア。

 粛々と霊峰サマルンドに向けて飛び続けていた。


 昨晩は無事に宿で一夜を明かした。食事も宿で提供され、大きなトラブルもなく過ごすことが出来てほっとしている。


 私はキミマロの背で、スマホを取り出す。


 ──昨日の投稿はどうなったかな……。おっ、なかなかいいね、ついてるじゃん。どうしようかな、ガチャを回すか貯めておくか。


 そこで私は目の前に座るジョナマリアの背中に声をかける。


「ジョナマリアさん!」


「はい、何ですか」


 振り返り答えてくれるジョナマリア。


「一つ、伺っておきたかったんですが、この後の旅程で、注意するべき点とか、厄介なモンスターとかはいますか?」


「そうですね。私も空の旅は初めてなのでどうなるかわからないのですが、霊峰サマルンドには、鳥型の大型モンスターがいると言われています。ただ、普通に登っている限りは、滅多に姿を表さないので……」とジョナマリアは顎に右手をあて、こてんと首をかしげる。


 そんな何気ない動作で苦しくなってしまう自分の胸を懸命に無視して質問を続ける。


「それは、空を飛んでいると襲われる可能性がありますね。普通に登るとどれくらい時間がかかるんですか」


「人の手の入った登山道があって、半日ぐらいですね。このペースだと、夕方に麓には着きそうですので、もし歩いて登るんでしたら明日にしましょう。夜間はレイス系のモンスターが出ます」


 私はそこまで聞いて悩む。どんなモンスターでも、焔の民の少女を出せば突破は出来るだろうけど、少なくとも禿山になるのは確実。それにメタモルフォーゼした姿をジョナマリアさんに見せるのも抵抗がかなりある。


 キミマロも強いけど、彼女を乗せたままアクロバットな動きをさせたくないし。とすると、遠距離攻撃手段の少ないうちの子達だと不利だ。

 ここは大人しくジョナマリアさんの提案通り、明日、歩いて登山にするのが無難か……。


「あ、見えてきました。あれがサマルンドです」


 と、私の思考を遮ったジョナマリアの声に顔を上げる。


 正面遠方の地平線に、長々とした山脈が見えてきた。

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