第65話 夜営
目の前には焚き火とそこにかけられたガチャ製の鍋。そして焚き火のまわりには串に刺さった魚。
火の番をしているショウ。
その向こうには眠り続けるリスティアの姿があった。
その横顔を眺めながら、先程までのことを思い出す。
ディガーの波乗りスコップに曳航されてたどり着いたのは、私たちが入った洞窟の入り口の下にある砂浜。
すぐさま、ディガーと二人してリスティアを閉じ込めた容器をスコップで割る。
溢れ出す溶液。
取り出したリスティアは素人目にも衰弱した様子で。
私は急いでガチャ製のポーションを何本も振りかける。
しばらくして、顔色戻り呼吸が落ち着いたリスティアを見て、ほっと息をつく。
私が安堵して座り込んだ横で、ディガーが上を指差すジェスチャーをする。
なんと無く頷く私。
ディガーはそれを見ると、いつの間にか回収していたロープで炎熱のスコップを背中にとめ、するすると目の前の崖を登っていく。
──あー、鞘とまではいかないけど、スコップを保持しておく物が欲しかったんだ、ディガー。全然気が回らなかったわ
そんなことを思いつつ私が見守っていると、あっという間に崖を登ったディガーは、洞窟へと入っていく。
ディガーが見えなくなり、気を取り直すと、今出来ることをしようと、私はスマホを取り出す。
まずはユニット管理。
──やっぱり、こっちもキミマロと焔の民の少女はグレーアウトしている。呼び出すのも出来ないんだ。この名前の隣の数字はユニット装備のと同じクールタイムっぽいな。
私はスマホを眺めてため息をつく。
「キミマロが呼び出せるまで、ここで足止め、かな」
思わず漏れる呟きのままに、辺りを見回す。
砂浜は幅数十メートル位の狭さ。その周囲の崖には所々に洞窟がその口を開けているが、簡単には登れそうにはない。
「初めてリスティアを見つけたときみたいに簡易担架か、背負子みたいなものでも作るか? いや、なんかひっくり返す未来しか想像できない。やめとこう」
私は今いる砂浜で夜を越すことに決める。
そうと決まれば、出来るだけ快適にしなければ、と意気込む。
ちょうどそこに、ディガーを先頭に、ディアナとショウが顔を出す。
二体とも、少し怪我をしている。
「ディアナ! ショウ! 無事で良かった。ディガー、ありがとう、二人を連れてきてくれたんだね」と思わず二人と呼んでしまう私。
三人とも、するすると器用に崖を降りてくる。
すぐさま取り出しておいたポーションをディアナとショウにもかけてあげる。
「改めて、三人ともありがとう。お陰で無事にリスティアを助けられたよ」
ディアナとショウは横たわるリスティアの穏やかな顔を見る。そして嬉しげに、にやっと笑いあったように、私には見えた。
その二人の肩を労るように叩くディガー。
そんな彼らに私はキミマロが呼び出せるまで時間がかかることと、夜営するのに洞窟まで登るのが意識のないリスティアを連れていくのが不安だと伝える。
「で、とりあえずこのままこの砂浜で夜を越そうと思うんだけど」と私。
揃いのサムズアップで答えるディガー達三人。
そしてすぐさま夜営の準備を始めるディガー達に遅れまいと、私もスマホを開く。ガチャのリザルト画面から使えそうな物のピックアップを始めた。
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