第12話 冒険者ギルドへ
リック商会では、商会長がちょうど居て、ベニートが経緯を話す。私は大袈裟なぐらいのお礼を言われた。
謝礼の話しになったので、無難に現金を相場程度で、と伝える。
なんといっても無一文なので、何を始めるにしても現金は必要ですし。
頂いたのは、金貨4枚と半金貨10枚。こっちの世界では、これで5ロケと言うと、さっき馬車でベニートが言っていた。だいたい2、3ヶ月分の生活費になるぐらいの価値らしい。
ちなみに金貨5枚で、銅貨50万枚換算、50万マールと呼ぶらしい。
去り際にベニートがたずねてくる。
「クウ殿はこの後はどうされますか? もしまだここらに来たばかりで身分証をお持ちでなければ、冒険者ギルドに登録するのが手っ取り早いですよ。それだけの実力をお持ちなら簡単に登録出来るはずです」
「身分証ですか。それは確かに持ってないですね」
「ガーリット達も、このあと任務報告のため、冒険者ギルドに向かうと思いますので一緒に向かわれると良いですよ。まだいるはずです。呼ばせましょう」
しばらくするとガーリットが1人でやってくる。
「クウ殿! 良かった。お礼がまだでしたね!」
「お礼はリック商会から頂いたので大丈夫ですよ。それに話し方も無理して敬語にしなくても良いですよ、ガーリットさん」
私はガーリットの無理した様子に、思わず提案してみる。
「そうか? それはどちらも助かるぜ。ああ、そういえばこのあと冒険者ギルドに登録に向かうときいたぜ。良かったら推薦させてくれ。それで少しはお礼になると思う」
あっさり敬語をやめるガーリット。だいぶ無理をしていた様子に思わず苦笑がもれる。
「その方が、らしくて良いですよ。それで、推薦、ですか? よろしくお願いいたします?」
「まあそりゃ、推薦がどういう事か知らないよな。続きはギルドに着いたら一緒に説明しよう。もう行くかい?」
「ええ、行きましょうか。黎明の嘶きの他の方は?」
「後は報告だけだったからな。皆それぞれ帰ったよ。それじゃあ行くか」
リック商会のベニートさん達に別れを告げ、連れだって歩き出す私とガーリット。
馬車ではあまり気にしていなかったが、足元の石畳も黄色味がかっている。
不思議な風景だなと、思いつつ私はガーリットの後を追う。
辺りはなかなかの賑わいを見せている。見たことのない食材を露天で売る店や、怪しげなグッズをゴザに広げるもの。なかなか見ていて飽きない。
「ついたぜ。ここが冒険者ギルドだ」
ガーリットの声にキョロキョロしていた私も示された方を向くと、地味目の建物が目の前にあった。
(ああ、黄色くない普通の石色をしているから地味に見えるのか)
私たちはドアを開け、中に入る。
中は薄暗い。
窓が極端に少ないのか、真っ昼間なのにランプが吊るされ、辺りを照らしている。
「失礼しまーす」
私は声をかけて進む。
薄暗くて見えにくいが、カウンターのようなものもなく、ドアが立ち並んでいる。
「おう、こっちだ」
ガーリットが手招きしている方に向かう。
「なんだか薄暗いですね。人もあまり居ないようですけど」
「薄暗いのは防衛地点にするため、なんだとよ。窓を矢を射かける最小限まで絞り、壁も厚く作られているんだそうだ。スタンピードが起きたときの避難所の一つだからな。どこの冒険者ギルドも同じ作りらしいぜ」
そういって、ガーリットは右端のドアをあけ、通路を進む。突き当たりには下へ向かう階段が。
私は恐る恐るガーリットに続いて階段を下っていく。
薄暗いなか、下るにつれ、さらに暗くなっていく。
階段が終わり、視界が開ける。
部屋だ。
四隅に燭台を掲げた大きめの部屋。中央の薄暗がりのなか、1人の美しき魔女が居た。
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