行間三
行間3 Episode ZEROTHREE「ゆりの日記4 ?」
行間3
ゆりの日記4
今日もここにあそびに行きました。
今日も、あの子を追いかけて山にのぼりました。
あの子は、イノシシ? をかたにかついで帰ってきて、おばさんにわたしているのを見て、びっくりした!
すっごく大きなイノシシだったから、なんかこわかったけど、おどろきました!
でも、すぐへやにもどって、すみにいたので、こえをかけました。
「ねえ、ねえ、まえはありがとう。いっしょにあそぼう!」
って言ったんだけど、みつめられました。はずかしかった。
そしたら、あの子がにこってわらったの! すごくかわいいおかおだったよ!
「あぅぅ、あ、い、が、お」
やっぱり、ことばがしゃべれないのかな? あの子はわたしの言ったことをまねしたの、ちょっと言えていなかったけど、がんばってて、……かわいかった。
「うん!」
そのあと、ことばをおしえたんだ!
あのことおしゃべりしたいしたいし、でいと? とかしたいし、そうだ!
とうやこっていうばしょ、すっごくきれいだってママにおしえてもらったんだ! だから、あそこに行く!
「これは、『あ』」
「やぁ」
「う~ん、あ!」
「あぁ!」
「そう!」
がんばって、かきながらおしえたんだ!
何日くらいかな?
もう三日、くらいしたかな?
あの子なかなかおぼえてくれないの、ちょっとむずかしいのね、ことばをおしえるのって! ママってすごいんだなっておもった!
なんか、気が付きました。
わたし、あの子のお名前、聞いてなかったの! だから、聞いてみたの! そしたら、小さな声で、言ったの。
「く、ろ」
くろ? クロ?
初めて聞いたとき、あの子らしいなって思った。だって会ったとき、そんな風に思ったんだもの。
暗くて、しずかで、目立たない感じ。
ちょっとこわいくらいだった。
「わたしはね、ゆり。あれ、前に言ったかな?」
「ゆ、り?」
「そうそう! ゆりよ!」
すっごく笑ったの。とってもかわいく笑ったんだ!
もっと言葉教えるのを、うまくなりたいな‼
とあるレストランにて。
いつも通りの黒いスーツを身に纏った男が厳ついヤンキーと顔を向き合って座っていた。
「予想外だな、この状況」
そんなクソみたいな発言に、ッチ、と吐き捨てたこのヤンキー。
すぐに口を開いて、
「は、クソだな。大体ナァ、少し早まったくらいで、上の連中も焦りすぎなんだよォ」
「……そりゃ、焦るだろ。計画が三日ほど早くなったからな、『PARALLEL』に送り込んだスパイは何やってんだ、まったく」
「は? あいつじゃねえ、俺たちの指示に従ってないカーネーションの奴らだろ、今回はァ」
的確なのはヤンキーの方だった。
今回の作戦、国家機密組織とカーネーションを激突させて反乱、もしくは大掛かりな革命を起こしたいというもので、二つの組織に多重スパイを送り込んでいたのだ。
ただ、今は、スパイが「PARALLEL」の方についてないといけない期間であり、むしろ上の幹部の連中がカーネーションを操作して激突されることになっていた。その操作は証拠の音声やカメラによって確定的になっていたのだが、奴らの技術が予想外に高かったのだ。そのため、その計画を前倒しで行わなければならないと本部では大騒ぎで、今ここまで来ていたところだったのだ。
「まあ、スパイの野郎も、なんですぐ教えてこなかったんだろうかなァ?」
「そう、か、ヤツもぐるなのか?」
アホか? と言わんばかりの顔でスーツの男を見つめて、
「まあ、裏切りでもしでかしたりして、ナァ⁉ ックハハァァ‼‼」
「その可能性も否めないな、ったく、世話が焼くな、くそったれ」
「どうせすぐ、命令が下されルサぁ」
「だなぁ、現場の野郎に任せるとしよう……」
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