第五話:レインボープロジェクトって知ってますか?
突然、私達の前に現れたステイツのフリートレス2隻!
彼女らは、私達の建造された場所を占拠し防衛していたのです!!
「…………わかりました!
武装は解除します!!」
「オイ、それでいいのカ!?」
「いいに決まってるでしょ、敵じゃないんだからロ巨!」
「その略し方なんだクソ司令!」
「司令……?
そのチビが司令官?」
サンディエゴ、と名乗ったフリートレスは、西武のガンマンよろしく構えていた5インチ砲をクルリと回してホルスターに収めます
ステイツ艦らしく様になってるぅ……!
「隣のオイゲンとかいう子並みにチビで悪かったね!!
もう17だからお酒飲めるけど!」
「アホか!飲酒は18からダロ!?」
「アホはどっち、ロ巨!
ここは、貴女たちのいた世界と法律が違うの!!」
ぴくり、とその言葉にステイツ艦二人が反応します。
「どういうことだ?」
「きいてそこの二人!
この時間だと、さっき空をコウモリの翼のおっきなトカゲが飛んだはず」
「「!!」」
「見たんだ。ワイバーンは知ってる?貴女たちの世界にはいないはず」
「……た、たまたま皮膜の大きなトカゲを動転のあまり見間違えただだ、だけかもしれないじゃあないですかね……???」
いやめっちゃ動揺してるじゃないですか、エンタープライズ氏。
めっちゃ見てたんじゃないですか、完全に。
「わ、訳わかんねー事言うんじゃねーぜ!!!
そりゃ、そりゃデカいドラゴンは見たけどだからどうしたってんだ!?
別の世界だ!?
まだ別の星の、そうだよD.E.E.P.の星とかに拉致られた方が現実味があるぜ!!!」
いやめっちゃ動揺してんじゃないですかサンディエゴさーん!
それもそれで突飛な話じゃないですかもー、ステイツのSF脳はー
「じゃあ、
その頭の上に乗っているのをどう説明するの?」
え?
あ……!
「「へ……??」」
よく見たら、二人の頭の上……!!
小さな、2頭身ぐらいのゆるい造形の人型の小さな生き物が、
どうやって作ったのか小さな魔法瓶片手にお茶飲んでます
そう、これは妖精さんです
これには、サンディエゴさんもエンタープライズさんもお互い指差して無言で大口を開けて驚いて固まってます。
「こ……ここ、こんなことって……!!」
「悪い夢であってくれ……!」
二人の頭の上で妖精さんが飛び立ったあたりで、ようやく司令官も口を開きます。
「結構ここは大昔から、そういう人間がやってくる言い伝え多いけど、
こういう反応も言い伝えどおりで安心だね。
夕立!!説明してあげて!!」
「了解ですー……では僭越ながら!」
そんな訳で夕立説明中…………
今日の出来事、この奇妙な世界の大陸ニューロペーのこと……司令官のミスに……
そして、エルドリッジの話になった時、二人の顔が変わります。
「エルドリッジですって!?!
じゃあ……まさかこの現象は『フィラデルフィア・エクスペリメント』だと!?」
「…………エンタープライズ……まさか、『ビフレスト』ってそういう……!?」
「待ってください。
ビフレスト、って?」
二人は、意を決したように私たちに向き直ります。
「……分かりました、道中説明します。
まずは来てください。現状をお教えします」
「まず、エルウィナ・フワ司令官。
勝手ですが、後『5隻』我々は建造しました」
「これで11人……11隻かー。
……多いね、なんでまた?」
「拠点である『ビフレスト』の機能の修復、そしてその護衛です」
「さっきからアスガードの神の移動魔法の名前言ってるけど、ビフレストってなんのこと?」
「アスガード……アースガルズ!?北欧神話の神がここにいんのか!?」
マジか、さすがファンタジー……!
「知り合いもいるし紹介しても良いけど、質問に応えて」
気になる情報増えましたけど、まずはこっちですねたしかに。
「まず、昨日夕立が建造された廃墟から見たほうが良いでしょう。
着きましたね、
例の廃墟に着くと、バチバチと溶接の音が聞こえてきます。
入り口に入るなりムワ、と熱気が出てきて……って今なんて言いました??
「ういういー!
エンプラちゃんどうしたーい?」
……建物の奥、建造用の施設が丸々鎮座している場所の近く。
ワンサイドアップのヘアースタイルに、タンクトップと野暮ったい作業ズボン、そしてクレーンとサブアームを身につけて、煤けた顔でゴーグルを外しながらこっちを見るフリートレス。
「おぉ!?なんだええ
そして出てきた言葉は親父のような下衆な物
「バカを言わないでください、明石!!」
「口では嫌がってるけど身体はどうかな〜、ほれほれゲヘヘ、ステイツ艦はええ身体しとるの〜?」
「キャァッ!?!?セクハラは辞めなさい!!
正義じゃない!!」
すかさず近づきエンタープライズさんのお尻を撫でる。
「間違いない、
「げぇ、セクハラ明石じゃーん!!」
「中身が親父で有名な明石はん!?」
「腕はいいけどセクハラで身を持ち崩すタイプのクズ艦明石か!!」
「どこかの基地では、人間の女性士官にパイタッチして解体された記録もある生粋のダメ艦装少女の明石さんですね」
以上、大東亜連合艦の共通認識でーす
「ガッチャーン!?
酷くねぇ!?どうせ生殖も出来ねーし一部の艦なんて水兵相手に慰安任務してるらしいし、触って揉むぐらいいいじゃん!!それ以上しないぜ!!
ねぇそうでしょドスケベボディで有名な白露型の子ぉ!!」
「さっそく揉まないでくれますぅ?」
「ガッチャーン!?」
おっぱいガッツリ揉んだので右フックしておきました。
あ、常人は首の骨折れる威力ですけど、フリートレスは平気でーす
「うぅ……でも気の強い子に叩かれるのも良いかなぁ、なんて……グヘヘ」
「……メデューサかヴェスタルが良かったのですが……我らがステイツの工作艦が来てくれれば……」
「なるほど、工作艦が欲しくて建造を行ったですねエンタープライズさん。
当方のダメ艦で申し訳ありません」
「手厳しいねぇ大井ちゃーん!?
これでも仕事は終わってんだぜ!?
『ビフレスト』のメインコンピュータ部分直したんだぜ、ほらさぁ!!」
バン、と叩いた建造装置。
瞬間、グゥン、と音を立てて、計器が動き灯が灯って、メインモニターが映し出されます。
「……UNFS……ビフレスト……?」
画面の背景に書かれた言葉。
察するにこれは…………
「UNFS……
「しかし、私の記録が正しければ、我々EUGとクイーンダムが参加しないと表明したためにお釈迦になった防衛計画の名称では?」
「そう、シャルンホルストさんのいう通りです。
ですが……どうも我々の記憶は、すでに5年も前の物のようです」
指差すモニターの日付は、西暦2167年
「……2167年……!?」
「我々の最終ログよりも……5、6年も……!?」
「5、6年って…………違う世界の人間の私はよく分かんないけど、まるでずっと意識を失ってて、時が大きく進んでたみたいな……?」
「……失礼します。データを拝見させてください」
ふと、そう言って大井さんがフリートレス用の端末に近づきます。
「大井っち、何するの?」
「まずは艦装させていただきます」
カシャン、
《LIGHT_CRUISER. LIGHT_CRUISER. LIGHT_CRUISER.》
「
《WEIGH ANCHOR.》
短い言葉とともにフリートライザーを起動した大井さん。
光とともに現れた軽巡洋艦の大井が静かに武装となって彼女へ纏いました。
「私は、3つのモードを使い分けられます。
言うなり、艤装が展開し、無数のコンソールとモニターを持つ情報処理ユニットに変形。
2次大戦の艦の名前が嘘のような……まぁあくまで作られた時代は大分後ですし……光景を経て、大井さんが半透明なフリートレス用の端末へ視線を合わせます。
瞬間、ビフレストのメインコンピュータのデータがモニター一杯にウィンドウとしてポップアップしてきます
意味わかります?ぱぱぱ、って色んな情報やら文字列が出てきてるんですよモニターに!!
すごいのは、ずっと端末を見ている大井さんの目の動きです。
恐らく、これ全部脳内で再生中なんですよ……!!
流石、教導任務も
駆逐艦の私じゃ、こんなことできません……!
「ねぇ、よくわかんないけど……それ大丈夫なの?」
「司令官、ご心配には及びません。
大井は、このような任務にも耐えられます……
ラーニング完了」
えっ、この短時間で!?
「…………やはりと言いますか、あの倒れていた駆逐艦エルドリッジは無関係ではないようだと判明しました。
司令官にも順を追って説明いたします」
す、と指を動かしただけで、メインモニターに必要な情報が出てくる。
「もう機能を掌握したのカ!?」
「EUG、及びステイツのフリートレスも処理能力は高い個体はいるそうですが、私も捨てた物ではありませんね。
まずは、この計画を見てください」
ファイルから出てくるのは、シンプルな書類作成用ソフトで作られた一枚の計画書。
「れ、レインボー・プロジェクト……!!」
ステイツ艦じゃなくっても、その単語は驚きですよ……!!
「レインボープロジェクト……虹の計画??」
「…………駆逐艦エルドリッジには、都市伝説……要するにまことしやかにささやかれる奇妙な噂が存在しました」
レインボープロジェクト
この計画は、当時普及したレーダーから身を守るために、レーダーに使われているマイクロ波、電磁波の反射を消すために、大型テスラコイルを使い物理的に船体の電磁波を消すというものだった。
ある海域で行われた実験は、実験参加したエルドリッジを見事レーダー波から消すことに成功。
しかし、船体を包んだテスラコイルの電磁波は、不気味な光とともにエルドリッジを海面から浮かせ……
エルドリッジは、物理的に消失した。
数時間後、北米大陸ノーフォーク沖で見つかったエルドリッジ内部の乗員は、悲惨な状況だった。
突然身体が燃え上がり、服だけが船体に焼き付けられ、あるいは凍りつき、船体に身体がめり込み……
地獄の惨状と化したこの実験は、その出発点から本来の計画名ではなく、こう呼ばれるようになった。
そう、
かの有名な都市伝説、
フィラデルフィア
「レーダー……って遠見というか、千里眼とか探知魔法みたいな物だよね?
反探知魔法の原理に似てるけど、これは私の世界でも失敗に近いし、それで本当に消えるの?」
「これはあくまで都市伝説です。
フィラデルフィア計画は、実際にはそんな記録は存在しません」
「ただ、こっちのレインボープロジェクトはそっから付けたんじゃねーの?」
「そう通りです。
目的も、レーダー消失ではなく、本当に次元移動のためだそうです」
フォン、フォン、と資料を空中でスワイプしてモニターを切り替える大井さん
「このプロジェクトは、相次ぐ敵D.E.E.P.出現による制海権の喪失を取り戻すべく、敵の本拠地へ乗り込むための方法を模索する計画『ガンバスター構想』の一環だそうです。
次元の穴である『ワームホール』を開けるだけなら技術的に可能だそうですが、問題はそれを通るまでの時間を稼ぐ方法を研究していたとあります」
「嘘……じゃあ簡単に別の世界に行ける、ってこと!?」
「簡単ではないでしょうね。
このファイルによれば、ワームホールの維持は現状でわずか0.05秒が限界であり、
1:駆逐艦エルドリッジの所属する班による『膨大なエネルギーにより、ワームホールを長い時間固定する方法』を研究するチーム
2:別働隊による『その0.05秒の間にワームホールを移動する方法』を模索するチーム
に分かれて研究していたそうです。
1のチームが、この実験施設兼任の潜水艦『ビフレスト』を拠点にしていた『レインボープロジェクト』のチームということになります」
フォン、と人事ファイルへ画面が変わります。
「計画は、この
「待てオイ!」
「大井です」
「ちげーって!!その筋肉ハゲメガネの写真!」
と、サンディエゴさんの言葉に、隣のエンタープライズさんも驚きの顔を見せます。
「……ラフィー!!
聞こえますかラフィー!!」
突然無線を繋ぎ、恐らく外にいる誰かと通信を繋げます……ちょっと耳近づけて盗み聞きしちゃえ
『はーい、すっかり忘れられてるラフィーちゃんですよーだ。
今更なんだよー、今サボってお空の鳥だかトカゲだか数えてんだよー、どうせ無視してたんだろー、なーひどいなー、私無視とかひどいなー!』
「馬鹿なこと言わないで!!
あの死体は凍ったままですか!?」
『筋肉ハゲメガネの死体は未だに氷漬けだよ、まるでママの冷蔵庫みたいー。ママいないけどさー』
「そっちに行きます!!
それの監視を続行!!」
乱暴に無線を切り、明石さんに指で指示をだして恐らく直したであろうタブレット端末なんていう場違いなものを持って来させます。
「写真をここに写して移動しましょう!!
皆に見せるものがあります!!」
***
「Hey!皆さんお揃いでー!
パーティでもするなら呼べよなー、ウサギは寂しいと死ぬんだよぉ!?」
そこにいたウェスタン風な可愛い格好とウサミミなリボンの女の子、恐らくラフィー……ラフィー!?
「「本当にラフィーだ!?!」」
「げぇ!そこの駆逐艦はソロモンの!!」
思わず綾波ちゃんと声合わせちゃいました。
まぁ直接会った事は史実も実際もそんなにないですが……
「戦艦に挑んだヤベー奴までいるとは……!」
「特攻を我々より速くやった艦じゃないか……!」
「はい、お前らいう資格無しー!!
私より苛烈なことしてんだからね!!」
「なんでも良いです!!
ラフィー例の死体は!?」
ぶー、と頬膨らませて無言で指差すラフィーちゃん。
「いったい何があるのですか、エンタープライズ?」
「それよか大井ちゃーん、ここ!!
昨日あのエルドリッジを見つけた場所じゃん、ほらこの草が丸くはげてるとこ!!」
「あ、本当だ……!」
「本当カ!?」
「暗くてもこの後には見覚えがあります」
というか、最初に合流した組がそんな事を呟いてますが……
「なに、ここ……??」
司令官の言う通り、ここは普通の荒地じゃないです。
あの廃墟を中心に、転々と続く謎の跡。
草が丸く焦げてたり、地面が丸くえぐれてたり……
「ミステリーサークル、って奴、ですか?」
「じゃあ、そこの駆逐艦も見るかい?
作った奴の死体」
え?
と、さっき指差した先、同じような跡の中でも大きく窪んだ穴から、妙な水蒸気が……
ごくり……
なんでしょう、謎の緊張があります。
司令官も、みんなも、少しずつそこへ近づきます。
やがて、穴を覗くと……そこには……!!
「!?!」
「まさか……!!」
「…………同じ顔、でしょう?」
エンタープライズさんの手のタブレットの人事ファイルに浮かぶ、
ハーキュリーズ・ジョージ・ウェルズ博士が、氷漬けの死体となってそこにいたんです……!!
「…………氷魔法でもこんな死に方しない……!!
どう言う事……?」
「フィラデルフィアだ……!
この死に方は、どう見たってフィラデルフィア計画の証言と同じ……!!」
サンディエゴさんは、勝気な言動のわりに死体には慣れていないようで、気分が悪そうな顔でそう言います。
……ん?てことは……まさか……!
「……」
「夕立、どうしたの?」
「…………埋まってる」
「え?」
失礼を承知ですが、一度手を合わせて弔った跡、このウェルズ博士の死体の下を掘ります。
すぐに、埋まった死体の下は硬い何かに当たりました。
「……やっぱり、」
「気づきましたか。
その通り、それは『船体』です」
土をかき分けると、少し埋まった博士の体は、やはりと言うか船体の一部───鋼鉄性の物に埋まっています。
「船体の一部と融合した状態で……凍りついて死んでいる……!」
「ふ、船の一部って意味だよね、それ……!?
あれ……まって、じゃあ残りは!?」
私達はその事実に気付いて、エンタープライズさんを見てしまいました。
「……あちらに」
荒地が終わり、断崖絶壁の海。
その真下に、その鋼鉄の塊がありました。
全長役1km
所々球形に穴の空いた船体は細長い円柱でまるで飛行船のよう。
「アレが……ビフレスト……!!」
恐らくは、
我々フリートレスが異世界に飛ばされた原因……!!
***
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます