第四話:謎の艦装少女ですって!?





 場所は変わって、保健室。



「アホか?未知の生物なんかそうそう治せる訳ないだろう!」



 メガネの不自然なぐらいイケメンで耳も尖っている保険医のレピオス先生曰く、まぁ当然ですよねー。



「えー、ダメぇ??

 せんせー、あーしらたしかに血は青いし割とメカな女の子なんですけどぉ、そこら辺魔法の力でパパっと出来ないっすかー?」


「無理だと言っているだろう?

 そもそも回復魔法は万能じゃあない、本人の生命力があってこそのものだ!

 命が薄い状況で、体に負担をかけてどうする!?」


「ぐあー、魔法でも無理めかー……ごめんねぇ、ステイツの駆逐艦ちゃーん!!」


「そして許可なくベッドを占有するのか、お前らは」


「え、重病人に床で寝ろって事っすかー?」


「くっ……許可はやるからせめて話を通せって事だ!

 早く乗っけろ!安静にさせるんだぞ!」


 えー、私と軽巡洋艦の方とでこの駆逐艦……恐らくステイツ所属の子をベッドに乗せます。


「ふぅ……まさか大破艦がいるなんて、えっと……」


「あ、あーしの名前?めんごめんご、あーし神通じんつう!!

 川内せんだい軽巡洋艦装少女ライトクルーズフリートレス2番艦の神通でーす!

 よろしくね、ゆーちゃーん!」


 早速あだ名付けられました

 めっちゃ馴れ馴れしいギャルなひとですね


「つーか、あの先生もよく見たら人間っぽくねーし、ここどこよ?」


「ああ、実は……」


 夕立、説明中…………


「ウケる〜!!笑

 じゃあマジ異世界じゃーん!!笑

 なろう系じゃーん!!笑笑」


 大爆笑する神通さん

 いっそ、この情況で笑える胆力がすごい


「なんだ、お前たちの世界も他の世界を言い表す言葉があるのか?」


「一応はあるっすねー。

 ところで先生どこ住み?LANEレーンやってる?」


「住所を教える義理もなければ、最後の言葉の意味も分からん」


「あちゃー!せっかくイケメンとの出会いがー!

 まぁしょうがないかー」


 すっごいなこの軽巡洋艦装少女ライトクルーズフリートレス

 ギャルだ……どこまでも


「───神通だっけ?先生をナンパしない方がいいよ、既婚者だし」


 と、ガラガラと保健室のドアを開けてやってくる司令官。


「きゃ〜♪司令官〜♪

 待ってたし〜♪本当カワイイ〜♪」


 いやすごいなこの軽巡洋艦装少女

 司令官に早速抱きついて撫でてる……怖いものなしか


「やーめーてー!髪がぐしゃぐしゃになる〜!!」


「あ、ごめんね〜♪

 いや〜、司令官なんて筋肉モリモリマッチョメンの変態しかいないと思ってたから、こんなちっこくてぷにぷにカワイイ〜子だなんて予想外すぎ〜♪

 ヤバ谷園〜♪ムリ茶漬け〜♪」


「夕立、なんとかして!」


「無茶言わないでくださいよ、相手はコロンバンガラの激戦を制している軽巡の名前持ってるんですよ」


「それソロモンの阿修羅に言われるとか光栄〜」


「なにそれ……」


「歴史は説明すると長いのです。

 諦めてそのままよしよしされてください」


 不服そうな顔を向けるも、司令官これで切り替え早いのかすぐベッドの方へ視線を向けます。


「……でその子は?」


「まだ生きている、って感じですね残念ながら」


「まったくだ!

 血が足りない、傷は深い、全身打撲に一部火傷までとなにをしたらこうなる?」


「いやーあーしも建造されて司令官探してたらたまたま草葉の陰で虫の息なの見つけたダケなんですけどぉ。

 この駆逐艦……エルドリッジがどこから来たか分かんないんすよ」


「……神通さん、やっぱりこの子「エルドリッジ」なんですね」


「うん。すげぇっしょ?」


 おかしな話だな……エルドリッジなんて


「……一体なんの話だ?

 一応主治医だ、分かるように話せ」


「うん。どういうこと?」


「……まず、私達艦装少女フリートレスは、私達のいる世界の技術で作られた人工生命体です。

 最大の特徴は、私たちの世界の海をかつて戦った艦艇の力を持つことです」


「艦艇?戦艦とか?」


「え、このファンタジー世界戦艦あるの?」


「ああ。つい先日もこの国の王が威信をかけて新しい戦艦を作った。

 160mもある巨大な海の鋼鉄の城をな」


「ド級クラス……!」


「じゃあここの技術、一次戦辺りって感じかー」


 結構進んでますね……お貴族様どもが偉くお高くまとまっているあたり、そんな時代のようで


「まぁ、あーしら世代的には、その2、3倍のデカい戦艦が活躍してた時代の艦のパワーですけど」


「私の元となった駆逐艦も、111mぐらいでしたし」


「大きい……!」


「あーし、162mなんすけどー。デカい女って嫌われるじゃーん」


「もう神通さんブレないなぁ……

 それで、当然この子もそんな艦の力を持っている艦装少女なんですが…………」


 ふと、死んだように眠るエルドリッジの顔を見る。


「…………この子の属するキャノン級護衛駆逐艦が建造された記憶がないんです」


「……どういうこと?」


「あーしら、建造される時に記憶が脳に直接刷り込まれるんだけど、

 それにこの子のお仲間が建造された記録一切合切ねーの。

 なんだろ……あーしらに刷り込まれた記憶とこの子の存在の乖離かいりっつーの?

 ようは……なんでこの子が存在するか分かんないのよ」


「話を聞く限りでは、お前たちは人造の生き物。

 ホムンクルスやキメラということだな?」


「そこにさらにゴーレムも混ぜてますねー」


「だとすれば、作った側が隠したか、あるいは単純に記録ができなかったのではないか?

 いや、まて。それよりも今、重要なことに俺は気づいた」


 ふと、そんな事をレピオス先生が言う。


「人造の生命体。それがなんの理由で作られたかはともかく、我々の世界の歴史にも存在はする。

 倫理などと言う言葉で今は事実上封殺されているがな。

 重要なのは、人造物とは概ね、作者が同じであればかなりの部分を同じものにすると言う事だ」


「何が言いたんすかせんせー?」


「……お前たちに血液型はあるか?」


 ……あ!


「……そうだ、私達……!」


「血液代わりの『フリートブルー』は……共通じゃん!」


「よぉし、いいぞ!

 ならば、この子の延命はできると言う事だ!!」





 そこからは早かったです。

 とりあえず、急いでまず私達の血───フリートブルーを、少々貧血にならない程度に抜きます。


「お前達の医療も進んでいそうだが、我々の世界も多種族が暮らすだけあり、宗教の邪魔もあったが医療は進んでいる」


「よーするに輸血できる装置があるって事ですね……!」


 すんごい魔力で動いてますよー、的魔法陣浮いてるけど……


「お前らは栄養は同じか?」


「はい。可食物は同じです」


「この保健室という名の私の診療所が良い設備なのを感謝しろ」


 ブドウ糖の点滴、真っ青な輸血パック。

 これで、この謎のエルドリッジちゃんの応急修理は出来そうです。


「……でもさー、この傷じゃ……『入渠にゅうきょ』は必要だよねー?」


「……一度、私と司令官の会った廃墟に向かわないといけませんね……」


「にゅうきょ?」


「ええ……ドッグ入り、とも言いますが、フリートレスは治すための専用設備があります。

 恐らく、昨日初めて私と司令官が出会った場所にある……はずです」


「……記憶が正しければ、あそこ……

 私ね、召喚獣探し中に偶然、転移してきたあの施設を見つけただけだからあやふやだけど……

 すっごいボロボロだった気がする。夕立を作れたのも偶然だし……」


「偶然?てか、あーし達出来たのも?」


「……実は、




 転んだ拍子になんか多面体の発光する奴をすごい数丸いところに入れちゃって」





 ぶーっ!?!



「すごい数!?こ、コアフリートリアをすごい数!?」


「や……ヤバ谷園のムリ茶漬け……!!」


 ちょっと、それはヤバい事態なのでは……?



「もしマジなら私達以外建造されてるんじゃね?

 ヤッベ、昨日暗すぎ人居なさすぎで慌てて散策しちゃったし確認してねーし……!」


「まずいですよ、まずいですよ……!」


「……とりあえず、先生。そこの子をお願いします、後……」


「早退か。確かにこんな異世界の人造生命が闊歩するのは好ましくないな……

 適当に理由を書いておくから解決してこい」


 よし、早速と私たちが部屋を出ようとしたら……


「失礼します。大井です。司令官は……あら」


 と、かなり綺麗な顔のもう一人の軽巡洋艦装少女────球磨くま型軽巡洋艦4番艦、大井おおいさんがやってきた……?


「大井さん!」


「大井っち、どうしたの?」


「はい。緊急事態です。

 新たな艦装少女が見つかりました。校庭の遊具付近まで来ていただいてよろしいでしょうか?」


 なんてタイミング……!

 ちょうどその話をしていた所で……!



          ***


 そんな訳で廊下を早足で、走る私達です。


「艦種は判明しております。

 航空母艦装少女エアクラフトキャリアフリートレス……それも我々大東亜連合製の『正規空母』です」


「正規空母……!」


「あーしらの陣営ってことは赤城さん?加賀さん?」


「いえ。私もシャルンホルストさんや綾波さんに任せてすぐ伝えに来ましたが、既に艦名は特定しております」


 そうしている間に、校庭の遊具付近が見えてきます。


「あ……!」


 そこにあった光景は悲惨な物でした……!!



「か……堪忍して……!やめて……!」


 震える可愛らしい巫女服の少女は……間違いなく艦装少女!

 よく見れば、小さくアップリケのように「ス」の文字が腰の帯に!


瑞鶴ずいかく……!」


「はい。

 翔鶴型正規空母2番艦の瑞鶴さんです」


 大井さんの冷静な声も今じゃ不釣り合いな事態です。


 周りを舞う黒い翼。

 羊を思わせる獰猛な角に、草食ではないであろう凶悪な牙。

 筋骨隆々とした人の身体に毛むくじゃらすぎる体毛と鋭い爪!


 悪魔。


 そうとしか表現できない怪物達に、囲まれている……!


「あれは……!

 あのクソお嬢様共!!中級悪魔なんて物呼び出して嫌がらせを……!」


「本当ですか司令官!?」


 だとしたら……なんてことに!






 ばきぃ、と中級悪魔に叩き込まれる拳。

 ポカポカ、なんて言う仕草に似合わないパワーが叩き出される細腕に、角が折れ血を吐く。





「ヴァアァー!?!怖い!!悪魔とか嫌いなんだよこないでー!!!」





 泣きべそかいてやる行為と思えない暴力的な威力の抵抗でマウントを取る駆逐艦が一人。



「辞めてぇ!綾波ちゃん!!

 その子もう気絶してはるよー!!!」


「嘘だー!ホラー映画でも死んだと思ったら生き帰るのが定番じゃん!!

 殺しておかなきゃ怖いよぉ!!」


「勘弁してくださいぃ!!ソイツ、ソイツはまだ嫁さんが子供産んだばかりなんですぅ!!

 謝ります、もう2度と襲いませんから許し」


「来ないでよ化け物ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「アバーッ!?!」




 どっちがですか?

 どっちが化け物ですか?



「まずいですよ、アレじゃあイジメをけしかけた方が唖然としてますよ」


「あやや、やり過ぎじゃん……」


「あやや……?」


「彼女は綾波。夕立さんと同じ駆逐艦装少女デストロイフリートレス


 特型駆逐艦11番艦にして、特Ⅱ型と称される部類の1番艦にして、」


「別名「鬼神」。アイアンボトムサウンドでブイブイ唸らせていた武闘派」


「そのくせ悪魔とか幽霊とか苦手らしくってさー、昨日から道中に出たモンスター片っ端からああやって殴ってるし」


 司令官、ドン引きの顔ですね。

 まぁそこらへんに素手で虫の息にされた中級悪魔とか言うのが転がってちゃ…………


「助けてー!助けてー!!」


「助けますよー、悪魔の方をー」


 早くしないと、全員殴り殺される……






「うぅ、うぅ……怖かったよぉ、怖かったよぉ……!!」


 泣いてるあなたは、ソロモンとこの遊具の鬼神。

 近くでかばい合う怖い顔の悪魔がむしろ人間らしく見えるんですよね……


「怖いはウチのセリフです!!

 あなたそんな強いのに何泣いてるん!!」


「そんなこと言ったってあいつら顔怖いじゃん!

 絶対臓物とか撒き散らして供物捧げさせるかサバトする顔じゃん!!」


「そのサバトする側素手で悪夢見せたの誰ですか」


「やられる前に殺さなきゃ!!それが一番安全安心だもん!!」


 気持ちは分かるんですけど司令官含めみんなドン引きですよ綾波ちゃん


「……あ、あなたが瑞鶴さんですか?

 私が一応この世界で一番最初に建造された先任の夕立でーす!」


「あ、どもはじめましてー

 ウチが正規空母の瑞鶴言いますー

 爆撃やったらお任せくださいなー♪」


 おー御丁寧に。

 流石は正規空母……それも元はかなりの活躍をしただけはありますねー


「ボク、綾波!

 水雷魂なら誰にも負けないよ!よろしく!」


「でもお化けとか怪物は怖い『アイアンボトムサウンドの鬼神』ですねー?」


「なにさ、『大乱闘ソロモンシスターズ』状態のあんな場所で活躍した『阿修羅あしゅら』はそっちじゃないか!

 というかあんなの怖がらないそっちが異常だよ!」


「大乱闘ソロモンシスターズとか〜!笑

 言いえて妙じゃん〜!笑」


「「『スタイリッシュコロンバンガラアクション』がなに言ってるんですか神通さん」」


「ちょ……w

 あーし、それだと挑発失敗してる……w

 回避間に合ってネーじゃん……w

 やっべ、笑いすぎて、草生える……w

 もうギャルでもなんでもない……w」


「お待ち下さい皆さん。いくら有名タイトルといえど、こんな異世界ではそのゲームネタは通じはしません」


 確かに、司令官も瑞鶴もポカーンですね。

 そしてなぜこんなネタが記憶にインプットされてるんですかね……?


「……ところで、さっきゲルマン……EUGの艦装少女さんいましたよね?

 どこ行ってしまったん?」


 ふと、そんな事を尋ねる瑞鶴さん。


「あ、シャルちゃんそういやどこ?」


「シャル……シャルでEUG所属というと……」





「こんな名前の艦種は、元来我が方には存在しないのだけど、」




 コツコツと規則正しい足音と共に、ぴっちりしたスーツに身を包むスラッとした長い手足の方がこちらに近づきます。


「あえて、分かりやすく言いましょう。

 巡洋戦艦装少女バトルクルーズフリートレス、シャルンホルストと」


 す、とメガネの位置を直し、彼女───シャルンホルストさんが名乗りました。


「シャルちゃん!」


「シャルンホルストさん。どちらへと行かれていたのですか?」


「大井。ここは確かに奇妙な場所ですが、その割に見慣れた顔も多い……おっと、これだとジョークになってしまうか」


「というと?」


「紹介したい相手がいる。

 !」


 えっ!?まさか今の………名前は!?

 と思っている間にガサガサと草むらから……!




「なんだ、見事に大東亜の艦ばかりダナ!」



 やってきたのは、似たようなピッチリした格好の小柄な金髪ツインテールの……!


重巡洋艦装少女ヘヴィクルーズフリートレス……!!」


「アドミラル・ヒッパー級3番艦、プリンツ・オイゲンだ。

 一晩近くこの訳がわからん世界を彷徨って出会った自軍が一機だけというのは、案外寂しいナ?」


「……EUGの艦もジョークを言うんだ……」


「はっはっはっは!

 本音だゾ、駆逐艦装少女デストロイフリートレス


 おっと……つい余計な口を。


「デ?

 シャルンホルスト、どういう状況だ?」


「それはそこの駆逐艦夕立に聞いた方が早いです、オイゲン」


「分かった。

 教えロ、駆逐艦」


 ちょっと偉そうですが……まぁ良いでしょう。



 夕立説明中……と、



「ハァ!?!

 オイ!司令官!!!

 お前、バカか!?!」


 わー!落ち着いて!!胸ぐら掴まないで!!」


「な、なにさ!!私だって事故だもん!!」


「事故なら余計に最悪だゾ!!!!


 後、6隻建造されるゾ!!」



 …………今なんて?



「6隻?」


「言い間違いではない!

 6隻ダ!」


「…………ちょっと、落ち着くために……


 番号!イーチ!」


「あーしがにーっ♪」


「ボクがサンっ!」


です」


「ウチはごー?」


6ゼクス


7ズィーベン、満足カ?」


 はい。


「すでに主力艦隊+2水戦は組める数に大破駆逐艦が1隻。

 さらに6隻はつまり最悪第2艦隊が出来上がる数です……うそーん!?」


「嘘なら良かったナ!!嘘ならナ!!!」


 なんでぇ……なんでそんな事にぃ……!


「司令官!!なんでそんな派手なすっ転び方しちゃったんですか!?!」


「私のせい!?事故だよコレは!!」


「事故ダト!?事故で済めば憲兵も不名誉除隊も無イ!!!」


「なにさその言い方!!

 貴女も私の言わば召喚獣だよ!?!もうちょっと敬ってよ!!」


「お前に砲口向けて無いダケありがたく思え!!」


 グギギギギ、と睨み合う似たような背の二人……

 まぁオイゲンさんの方が大きいけど、一部。


「もういい分かったよ、責任取れば問題ないんでしょ!?

 じゃあ行くよ!!昨日の廃墟まで行ってまずは誰が出てきたか見て私が従えてやれば問題無いんでしょ、あーん!?」


「ヤレるものならやってミロ、田舎娘司令官!?」


「あーいいよやってやるよ、じゃあ今日からプリンちゃんの上司だから敬ってよね、ねぇ〜????」


「やんのかチビ司令?」


「なんだよロ巨ぉ!?」


「はいはい、司令官アドミラルもオイゲンも落ち着いて。

 次の目的が決まったのならすぐに行動するべきでしょう?」


「「フンッ!!」」


 あーあー、こりゃオイゲンさんと司令官は相性悪そうで……


「……じゃ、とりあえず行ってみますか」


 そんな訳で、移動開始。


           ***


「ハァ〜……魔女のチビの癖に使える魔法が少ないとかアホか?」


「戦艦に間違われたとか言われてるけどそんなチビで見間違われるなんて気でも使われたんじゃ無いの??」



 いや道中ずっと口喧嘩してるよこの二人。

 ずっと睨み合ってます。相性最悪とかでは無い……


「夕立、あの司令官……オイゲンと似過ぎでは?」


「シャルンホルストさん、世の中には似たような性格の人はいるんです。

 そのなかでも負けず嫌いはとてもじゃないですが二人一緒に並べたらこうもなります」


「「なんか言った (カ)??」」


 そのくせタイミングが同じでガッデム。


「皆様、見えてまいりました」


 と、先頭の大井さんが指差す先、昨日は暗いし見てなかったけど、恐らく間に場所と思わしき廃墟が見え……ん?


 ブーン……!!


「敵機直上!!ふせて!!!」


 瞬間、つい対空装備を展開させちゃいました。


 いま通り過ぎたのは……艦載機ドローン……!?



「今の見た!?星のマークや!!」


「間違いない……多分ワイルドキャット!」


 ワイルドキャット。


 正式な名前は、F4Fワイルドキャット。






「おめーら止まれ!!

 武装も解除しな!!!」




 そして、聞こえる声。



「ここは、が臨時で管理している土地だ!!!


 武装解除の上で所属のIDを教えな!!」



 間違いない!

 ノースリーブじみたシャツを軍服っぽくした、なんとも言えない格好は……!!



「ボサっとしてると、このアタシことサンディエゴ様と、お前らも見たろ?

 後ろにはステイツフリートレス最強のエンタープライズがいる!!!


 とっとと行動を起こした方が身のためだぜ!?!」




 この仕切りたがりな言動……!


 ステイツだ……!!ステイツのフリートレス……!




「───やめてください、サンディエゴさん。

 これでは脅迫です。ステイツのフリートレスは正義と自由を重んじなければいけません」


 と、軽巡らしいフリートレスの背後から、やってくるは……


「ただし、こちらの要求は言った通りです。

 貴女たちが誰か、どこの所属かをハッキリさせていただきたい」


 切れ長な相貌をキリッとした縁のメガネの奥から覗かせる彼女は、


 ステイツ最高峰の武功艦。

 ラッキーE、グレイゴースト……




「本当にエンタープライズだ……!?!」





「お願いです。

 好き好んで戦いたい訳じゃないのですよね?」




 飛行甲板を盾のようにこちらへ向け、エンタープライズはこっちを臨戦態勢で見据えていました……!


 やだ……まさかこんな艦が出てくるなんて……!




           ***

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