第36話 トトミア草原防衛戦2
やったか?!と思った矢先、、。
カキーーン!と高い音を出して、ソウヤの振り落とした剣はバジリスクの鱗に弾かれた。
次の瞬間には鞭のように飛んできた尻尾にソウヤがはじき飛ばされた。
「しまった!!」
俺は慌てて追撃態勢に入ったバジリスクの前に矢を放つ。
「
ソウヤに飛びかかろうとしたバジリスクの丁度目の前の地面に刺さった矢が激しい光を放って、バジリスクの目をくらました。
そしてナイスなタイミングでソウヤを守るように盾を構えた冒険者達が間に入る。
「
ふっ飛ばされたソウヤの元に、回復役もやってきて回復も間に合ってそうだ。
今はまだなんとか抑えているが、徐々にバジリスクの石化に押されて盾役が機能しなくなってくるだろう。
そうなる前になんとかしねぇと、、、。
バジリスクを倒しきるほどの上位魔法をぶつけるにも、後衛組で魔力を貯めるには時間がかかる。
だが、、今はそれにかけるしかねぇか、、。
「上位魔法を発動させるまでなんとか時間を稼いでくれ!!」
俺がそう叫ぶと、前衛組から信頼の雄叫びが聞こえてくる。
頼んだぞ、お前ら!
俺は近くにいる後衛組を呼んで、上位魔法を発動させるための準備に取り掛かる。
自分を中心に数人の冒険者が魔力を送り込んでくる。
まだまだ半分も魔力は溜まっていないが、前衛の盾役は殆どが限界に近そうだった。
くそっ、、間に合わねぇか!!
踏ん張っていた盾役の1人の盾が石になって崩れた。
「ジュララララァァ!!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
「双剣戦技!乱舞!!」
食われちまう!!と思った瞬間に、バジリスクの前にソウヤが滑り込んできた。
身体を捻って、回転し斬りつける独特の剣技で、盾役を庇いながらその2本の剣でバジリスクの牙を1本切り落とし、弾き飛ばした。
す、すげぇ!!!
その鮮やかな動きに、つい見とれてしまう程だ。
流石、、天才だ。
「……チッ、、まだ自分だけじゃ力不足か。」
ソウヤはそう呟くと双剣を前に突き出し詠唱する。
「我が魂と契約せし風の子よ。今こそ我が力となりて姿を表せ!!エアル!」
多量の魔力が大気を巻き込みながらソウヤの前に集まっていく。
ソウヤの近くにいる仲間達は立っているのがやっとだ。
なんだ、、ありゃぁ!?
巻き込まれた空気がやがて竜巻の様に空に伸びてからゆっくりと消えていく。
そして、その中から透明でキラキラと反射する6枚の羽と、短くふんわりと揺れる青緑色の髪をした20㎝程の妖精が姿を現した。
「ルルルッ!私を呼んでくれたんだねっソウヤ、会いたかったよっ!!」
妖精はすぐソウヤに擦り寄って、周りはあまり気にしていないみたいだ。
ソウヤも逆にそれを気にする風もなく、淡々と妖精に告げる。
「……悪いけど、アイツを斬りたいんだ。それに皆んなも回復させたい。」
それを聞いた妖精は辺りを見回して頬を膨らませる。
「ルルルッ!!もうっ、せっかくソウヤとデートできると思ったのにっ!!それにソウヤ以外を回復とかしたく無いんですけど!!ルル!」
噂に聞いていた通り、精霊族は認めたもの以外に力を貸すことを嫌がる様だ。
「後で、、お礼に飯を奢るよ。」
お前、飯かよ、、ーーと、魔力を貯めながらも心の中で突っ込みを入れたが、妖精はすぐに嬉しそうにはしゃぎ出した。
「ルルッ!!本当!やったァァデートだぁ!」
完全に俺達に蚊帳の外状態。
そんな2人に見とれていると、弾き飛ばされていたバジリスクが起き上がってきた。
「おい、お前ら!来るぞ!」
俺は2人に向かってさげぶ。
「ルルッ!ソウヤとデートするんだから、邪魔しないでよねっ!!」
妖精がそう叫ぶと、バジリスクを中心に風が巻き起こった。
それはまた竜巻になって、巨大なバジリスクの身体を空に舞い上げる。
「……なっ!!」
びっくりしすぎて声も出ない、、。
「行くぞっ!」
「はぁい!」
ソウヤが声をかけると同時に、双剣が淡く緑に光出す。
おそらく風の魔法を纏ったのだろう。
そのまま、空中のバジリスクを追いかける様に、ソウヤが竜巻の中を上がっていく。
「双剣戦技!竜巻乱舞!!!」
竜巻の流れに合わせて、2本の双剣がバジリスクの硬い体を切り刻んでいく。
「ジュラァ゛!」
下から上へと流れる様に舞う戦技によって、地上へ落ちたバジリスクの身体は既に虫の息になっていた。
そこでようやく俺達の魔力も溜まり切った。
「待たせたな!くらいやがれ!!ヘルフレイムアロー!!」
俺の放った特大の炎の矢が最後にバジリスクの頭に命中すると、そのまま炎に体を貫かれて既にボロボロのバジリスクは絶命した。
「か、か、勝った、、。」
「うおおおぉぉぉ!!」
冒険者達から雄叫びが上がる。
まさか犠牲も出さずに勝てるなんて、、。
「お疲れっ!!凄いじゃないか!」
ジャバウォックを相手にしていたギンも、丁度終わったらしい。
助太刀するつもりで駆けつけたのに、既に終わっていてかなりビビってやがる。
どうだ、見たかこの野郎!
「アイツがいてくれて助かったよ、、。」
「こりゃ、本格的に未来の英雄だな!もしかすると、勇者にまでなっちまうかも!」
普段、他人の昇進話は面白くないとやらない派だが、今回は素直に肯ける。
「あぁ。そうだな。」
2体討伐後、ヘロヘロの俺らを横目にエアルという妖精は全員を回復させ、無事元の態勢を整える事もできた。
やっぱり、精霊族は魔力の塊と言われるだけあって俺らの常識とは違うな、、と改めて思わされた。
その後は、もう来てくれるなよ、、という祈りが届いたらしく、夜まで無事何事もなく過ぎていって、俺達の2年に1度のトトミア草原防衛戦は終わった。
トトミア防衛に大きく貢献したソウヤと俺達を労って明日の夜には宴会が開かれることになったが、、。
後は、、アイツが無事に帰ってくる事を祈るばかりだ。
***
今更ですが、話毎につけてる題は自分が見直して直す際にわかりやすいようにつけてるだけなので、深い意味はありません。
すいません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます