番外

ある日の風景



●ある日の風景



「フィー、一緒に食事をしよう」


「今研究がいいところなんだ。また今度にしてくれ」


「そう言って3食は抜いた顔だ」


「……2食だ。まだ」


「じゃあ今度抜いたら3食だね。その前にご飯を食べよう」


「外に出るのが面倒なんだ」


「大丈夫、持ち帰りのものを買ってきた」


「……。用意がいいなお前は……」




●ある日の風景・2



「フィー。人間は食べないと死ぬんだよ」


「魔法でどうにかしてる」


「でも健康に悪いよ。ちゃんと食事を摂ろう」


「今研究が大詰めなんだ。余計なことはしたくない」


「人間の三大欲求を『余計なこと』扱いするフィーがとても心配だけど、それはそれとして、――気絶させて抱えて無理やり連れだしてもいいんだよ?」


「その前に魔法で昏倒させてやろうか」


「物騒だなぁ」


「物騒なのはどっちだ。か弱い魔法士に肉弾戦を仕掛けようとするな」


「肉弾戦なんてしかけないよ。ただちょっと首をトンってするだけで」


「……ああ、もう。このまま居座られるのも食事を摂るのも同じか。だったら後者を選ぶ。買ってきてあるんだろうな?」


「ちゃんと胃にやさしい食べやすいものをね。さあ、食事にしよう」



●ある日の風景・3



「フィー、フィー。お願いがあるんだ」


「改まってなんだ」


「居てくれるだけでいいんだ。騎士団の執務室に来てほしい」


「またか」


「フィーがいないとやる気が出ないんだ……」


「哀れっぽく言っても、それはダメ人間の発言だぞ」


「フィーがいないとダメな人間にならなってもいい……」


「本当に何言ってるんだお前は。……何だかやつれてるし、忙しかったのか」


「現在進行形で忙しい」


「そうか、それはお疲れ様だな。……まあ、行くくらいならいい。今は研究も一段落したところだしな」


「ありがとう……!」


「それだけでそんなに感極まられると居心地が悪いというか、お前の精神状態が心配になるんだが」




●ある日の風景・4



「フィー、フィー。うちの執務室に来てほしい」


「またか。何故」


「俺の癒しのため」


「……付き合ってられない」


「そう言わずに。実は差し入れで有名店の数量限定のケーキをもらったんだ」


「…………」


「ちょっと休憩する時間くらいはあるだろう? 食べていきなよ。フィーのためにとってあるんだ」


「でもそれは、騎士団への差し入れだろう」


「うちの団員も『クローチェ魔法士分は残しておかないと』って言ってたから、気兼ねしないでいいよ」


「お前の団はなんでそんなに私を気にかけてるんだ……?」


「俺がフィーを好きだからじゃないかなぁ」


「それだけで、だとしたら、お前はずいぶん慕われているんだな」


「フィーだって好かれてるよ。ジードとかにさ」


「ガレッディ副団長は誰にでもああいう感じじゃないか?」


「まあともかく、ちょっとした息抜きついでに来てくれると嬉しい。特に俺が」


「……わかった。少しだけだぞ」


「やった。ゆっくり食べていって」


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