第9話 帰ってきたダンプ野郎

近藤龍一郎は何が何だか分からなかった...

死んでるのか生きてるのかが疑問で仕方がない...

扉の外には聞いた事が無い女の声...

やがて その扉が開かれた...


...そこに居たのは巫女服らしき物を着た小柄な女にメイド服らしき物を着たツインテールを結んだ女がいた...

龍一郎は 2人の目が合った...

2人の女はどうしたらいいか分からなかったかと思うと すぐさま駆け出し彼女らの主を呼びに行ったのだろうか...


...その一方大森は トラステにトレーラーを止め 召集をかけた

龍一郎の仲間を集めたのだ...

「近々 皆で龍一郎に逢いに行くぞ...」

大森バンパーに腰掛けてタバコをふかして言った

「龍ちゃん?あいつ あの事故で...亡くなったんじゃねぇのか?」

江頭がドアに寄りかかって驚いて言った

「大森さんよ 幻はよしてくださいよ 龍さんはもう交通事故で亡くなったんですよ」

熊崎が缶コーヒーを握ったまま立ち上がって言った

「へへへ...幻さ...とんでもねぇ幻さ...ありゃ人間業じゃねぇぜ...ワシが見たのは確かに幻や...」

大森はそう皆に言った

「どうだ?龍一郎に逢いにいこうじゃねぇかよ...ワシらの大事な仲間や これからのトラック野郎の時代を築くもんじゃ...」

「いこう!!龍さんに逢いに行くぞ!!」

「俺達のダンプ仲間や!!」

...そんな声がトラステに響き渡る...

「ならば...明日 トラステ集合や...旧道へ走るぞ...覚悟はどうだい?」

大森はにやにやしながら言った...

「龍さんに逢えるならば!!」

「龍ちゃん待っとけ!!俺達が見舞いに来るぞ!!」

凍る風が吹き渡るトラステが トラック野郎の情熱で暖まる...


...その頃...


「なるほど...」

龍一郎は分かったようで分からなかったようで 事のあらすじを聞いた

...事故発生後 火災が鎮火された...

龍一郎のダンプはレッカー移動すら出来ない程の状態だった...

サーリンはそこで休憩していた上村を発見し 牽引する様求めたが 上村は牽引より自車に載せる方が安全と判断し サーリンとレミーナも同意する

ウインチで車両を巻き上げ サーリンは旧道へ走る様に求めた

急カーブすぎた直後 洋館にて降ろさせた

上村に十数万円渡すと 龍一郎の遺体を引っ張り出し サーリンの下僕二人が治療を試みたが

失敗した為生き返らせるために強制転生させられたのだ

大破し炎上したテラヴィはサーリンとレミーナが魔力で修復を試みた...


「...って訳なのよ...無事に目が覚めて良かったわ...」

サーリンは目元を赤くしながら言った

「す...すみません...でも 俺は何に転生したんだ?」

すると脇にいた巫女服らしき物を着た小柄な女は幼そうな声で申し訳なさそうに言った

「...えっ...と 近藤龍一郎さん...だよね...ごめんなさい...治療が失敗しました...仕方なく 悪魔に転生してもらう形になりました...ごめんなさい」

「え???ちょっと待てどうなっているんだ?」

龍一郎はさらに訳が分からなくなった


...長い時間が過ぎ去った...


サーリンが噛み砕いて説明し ようやく龍一郎が全てを理解した

「ほぅ...つまり俺は人間をやめたトラック野郎だな~~」

龍一郎は苦笑いしながら言った

「そうだ 紹介してなかったわね こっちがマナリス 私の下僕で召使いもさせてもらってるわ」

「ど...どうぞ!!よ...宜しくお願いします!!」

マナリスは赤くなって言った

「おう!!宜しく頼むぞ!!」

「そしてこっちが九重ね!! こう見えて彼女は狐さんなのよ~」

「は~い!! これから宜しくね!!」

「おう!!こっちこそ宜しく頼む!!」

...龍一郎はふと仕事のことを思い出した...

恐る恐る一緒に走った有田へ電話を入れた...


...トラステでは まだ皆集まって 思い出話に花を咲かせていた...


有田も 自慢の大型ダンプの前で レモン炭酸水を飲みながら話していたその時 1本の電話が入る...

「もしもし?有田です」

「有田さん?龍一郎ですよ 河川敷の残土運搬の仕事まだありますか?」

「龍一郎?本当に龍一郎なのか?」

有田は驚きそして感動した...

その場の皆が 歓声をあげる

大森は有田から電話を変わると

「龍一郎...大森だ 今から逢いに行っていいか?あの旧道のとこだろ?」

「皆来るんですか?ありがとうございます!!是非お願いします!!」

「よぅし!!今からみんなで行くぜ!!待ってな すぐに到着するぜ!!」

大森はそういうと皆にトラックに乗るように指示した

荒んだ旧道へトラックの車列が走りゆく

龍一郎は なんとか外へ出た 4人も付き添いで外へ出る

やがて ラッパと迫力ある排気音が聞こえる...

派手に飾られた大型トレーラーや当時物パーツで飾れたレトロな大型冷凍車 黒塗りにバナナバンパー バイザーレスの大型ダンプ...

洋館の前にトラック20台程が並んだ...

...仲間と悲願の再会をした人間をやめたトラック野郎...

彼の真の生き様はここからだ...


トラック野郎達は いつまでもいつまでも その場にいたかった 龍一郎と再会したからには少しでも多く一緒にいたいからだ...

最後に有田が龍一郎に言った

「明日はいつもの河川敷 5時半集合ね!!多分6か7セット 俺と江頭 金村も一緒や!!頑張ろうな!!」

「頑張ります!!」

...飾られたトラックは洋館から出てゆく...

休憩に向かうものや立ち便 帰り便へ走る車もいた...

...さあ 明日は悪魔転生後の初ダンプ業だぞ...


次の日 龍一郎はテラヴィのエンジンキーを回す...

V8エンジンが目を覚ました...

その時...マナリスが駆け寄ってくる...

「あ...あの...今日...よ...横に...載せてください...」

「ようし!!載ってけ!! あまり乗り心地は良くねぇがな...」

九重も駆け寄って

「ねぇ~龍一郎さん あたしも乗せてよ」

「しょうがないな~載ってけ載ってけ!!」

龍一郎はテラヴィを発進させた...

12月初の車内は凍りつくほど寒い...

龍一郎は2人が寒そうにしてるのを見てヒーターのダイヤルを回しながら

「大丈夫!!今からヒーターつけるから 暖かくなるぞ~~」

ヒーターのダイヤルは根元からポキッと折れた

車内に気まずい空気が流れる...

九重が急に龍一郎に抱きついてきた...

「おい!!な...何をする?!」

「えへッ こうしたら暖かくなるかな?と思ってね...ほぉらマナリスもおいでよ!!」

「あ...あたしは...遠慮...しとくよ...」

なんて言いながらも龍一郎のもとへいった...


...やがて集合場所へ入る...

龍一郎は街宣マイクを手に取る...

「おはようございます!!近藤龍一郎!!帰ってきました!!」


...今日も ダンプ稼業...

...いつもの様に 無線で雑談し カンカンやネズミ捕りに気をつけ 現場から離れりゃダンプ同士でラッパチャージもした...


再び 進みだす...


続く...

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