第5話 友情と恋のはざま

 京急に乗って三浦半島のそれぞれの住処に帰る途中、俺たちは無言だった。あいつは俺の横に座って何かを考えているようだった。


 俺もあんな風に林太郎に言えるだろうか。


 確かに今の俺は友情と愛情を取り違えているのかも知れない。男に告白されるなんて、林太郎が最も嫌うことだろう。幼いときから女の子のように言われ、そう見られて来たあいつにはそれは酷だ。


 男同士でも友情を通り越し『愛』を感じるときがある。自由な友としてでなく『独占』したくなるときがある。だが通常、それは一過性だ。お互いの本来の『男』の特性が、互いに従属することは許さないのだ。友情という精神的な繋がりだからこそ、人生の終わりまで続くのだ。

 女性的な容姿、肉体を持っているからと言ってセックスを求めるのは、本当の愛とは言えない。問題は、年月を重ねてもお互いの気持ちが保てるのかだ。・・・それは俺にも分からない。


 俺は林太郎といつまでも友達でいたい。俺の本当の心は絶対に知られたくない。林太郎の写真を見ながら毎夜、自慰に耽っているなど知られたら自殺ものだ。


 長沢駅が近づいてきた。あいつが俺を見た。その目は切なかった。

「今日は・・・有難う。楽しかった」

 嗚呼・・・それは女性の恋人が使う台詞ではないか。


「・・・大介の小説読んで考えちゃったけど・・・実際にもあんな恋があるんだね」

 俺はどぎまぎしながら言った。


「あ・・・ああ。きれいな恋だよな」


 林太郎が俺をまぶしそうに見ながらつぶやくように言った。


「大介を見直したよ。そういう恋愛に理解があるなんて」


 あいつが降りた後、俺は隣のあいつが座っていた席に手を当ててその温もりを確かめていた。


 りんりんりん・・・りんりんりん・・・

 俺はクリスマスソングを口ずさんでいた。




 作品中の『衆道剣風録』は下のURLから読めます。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1634041

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あいつシリーズ クリスマス 泊瀬光延(はつせ こうえん) @hatsusekouen

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