幸あれかし

 雲一つない空の下。

 涼やかな夜風が吹く。

 公園の茂みには鳩の死骸が転がっていた。

 足を縛られ、首は切られている。

「ひどい」

「死」は目に涙を溜めた。

 腕が抱えるのは、中年男の生首。

 公衆便所の壁に寄りかかるのは「僕」。

 手は赤い。

 まっかっか。

 脅しについては慣れているので首尾よく進んだ。

 しかし、処理は体力を使う。

 ヘトヘトであった。

「あぁそうだ」

「死」は名案が浮かんだらしい。

 鳩の首を噛み千切ると、切り落とした頭部を中年男の切断面に押し込んだ。

「僕」は笑った。

「死」は頷いた。

 望みが叶ったらしい。

「…………」

 パトカー共のサイレンがうるさい。

 苛立たしい聴衆が一連の作業を盗み見、通報したのだろう。

「ところでね」

 真っ赤な鳩人間を「僕」の隣に寝転がせる。

「私のお腹に赤ちゃんがいるの」

「そう」

「だからね」

「うん」

 彼女はブレザーとワイシャツ、下着を脱いだ。

「おっぱいが張ってるでしょ」


「僕」は微笑んだ。


「飲む」


「死」は笑った。


「飲め」


     〇


 それからすぐ、「死」は忘れ物のシャベルで「僕」を処理した。

 首は鳩人間の隣。

 中年男の首の真上に段々と重なる。

 身体の行方は定かではない。

 え、「どうして?」?

 だって「鬼」が産まれるもの。


 カワイイ。可愛い。かわいい。


「僕」と「死」の「鬼」が。


 幸あれかし。


 あぁ。


「僕」は幸せである。


     〇


「死」はどこかにいる。

 

     〇


 いるよ♡


 

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