第五十一話 聖戦舞祭:苦戦する赤い少女。そして....

「な.........ななーなにやってんのよーー有栖川さんーー!」


いきなりそう声を上げた梨奈が、真っ赤になりながら横たわってる有栖川さんに向かってものすごい眼差しで睨みかけている。


「有栖川姫子選手、自らの意志で横になったにせよ、学園の<バトルエンタメー規定>に則って、勝敗判定のカウントダウンを始めざるを得ないぞー! 1-!」


そう知らせてきた会長はカウントダウンをはじめる。

「~~もう!いつまでそうやってふざけてるのー!?あんたがこないならこっちからかかっていくわー!やああーーー!」


と、有栖川さんの奇行に対して痺れを切らした梨奈は猛烈な勢いで跳躍し、上から現神戦武装<キリスカ>を振り上げ、有栖川の無防備となっている身体めがげて、猛獣のごとく先端を伸ばし切りつけようとした、がー


「--!?」

いきなり、その鞭の先端が紅色のオーラによって阻まれ、はじかれたーー!


ター!

「なんだったの、今はー?」


「--2!」


着地した梨奈は当然、その予想だにしなかった結果に疑問に思うが、まるで考える時間が与えられないとばかりに、今度はー


「---え!?」

そう。次はなんと、梨奈の全身を取り囲んでいるみたいに、紅色の粒状なオーラがどこからともなく浮上してきて、梨奈から半径0.5メートルで囲い込んでいる様子だ。なんだあれはー!?


「このーー!」

ぶんぶんと両腕を振り回して振り払ったり分散させようとしたけど、それも無駄らしくて執拗にいくらでも梨奈の近くに戻ってくる、それも一定の0・5メートルの距離までのままに。


「--3!」

背景に会長のカウントダウンは続いたままだ。


「まあ、なんて不思議な能力ですわね、ルーイズ隊長?その紅色の粒の群れに囲まれている森川さんなんですけれど、手で触れていてもなんの効果が出てこないままみたいなんですが、あれは大丈夫ですのー?」

「.......わ、わからないな、エレン。俺はこの2週間で2度だけあいつと手合わせやったことあるけど、神使力量の面なら心配ないと思うよー? 戦闘における攻勢時の体力と持続力で考えれば梨奈は相手を攻撃する際に長持ちできないタイップなんだけど、耐久力と防御力の面ならよっぽどのことが起きない限り、この世界に一緒に来たばかりで同程度の神使力量を持っているはずの有栖川さんの攻撃からはそうそうダメージを受けることはないと思うよ。」


「それもそうですわね。なにより、会長の<リンガ>が発動中でしたから切りつけられても傷口や血飛沫が出なかったとはいえ、それでもさっきは百回以上もの斬撃を森川さんが被ることになりましたから、今こうしてなんの深刻な疲労や疲弊を示さない森川さんの状態を見れば、確かに頑丈ですわよね?神使力量がある程度、高くないとさっきので精神的なダメージが耐えられない程までになって倒れていましたわ。」


「にしし~~。そうだね、エレン様ー!だから、森川さんなら心配無用ってことでいいよね~~早山たいちょ~」

「~~?」


うおー!またもネフイールにお尻を撫でられたよ。くすぐったいやら気持ちいいやら、まじでやめてほしいんだけどー!?


「さあ、それはどうかな、ルー! これからの展開に注目するんだな、なあ、ローザー?」

「その通りで御座いますね、春介隊長。そちらの早計は如何にも愚かであるか、しっかりと次に起こるであろう光景に刮目するが良いのでございます。ああ、もちろん、エレンだけはその<愚か>って言葉は向けられてないから怒らないでほしいねー?」


「まあ、それは嬉しいですわ~。ローザちゃん。ですが、わたくしはもうこちら側の隊員になりましたわよ?王国におけるお互いの公式場での官僚も大勢いるような正式な業務を除いて、こうしてプライベートな場面では気兼ねなく昔みたいに言葉選びせずに自然に友達として接してくださいな」


「きゃあああーーーーーー!」

「「「---!??」」」


まるでローザの告げたことを証明するように、いきなり梨奈から甲高い悲鳴が聞こえてきた。


「---7!」


「なによ、これーー!?」


そう。今の梨奈の状態はまるで、激しい痙攣にあるかのように、全身がびくびくぶるぶると痺れだして、自由に身体を動かせなくなるまでになっているのだ。


「ひいいーーーー!ひゃああーーーん!」

まるでちょっぴりくすぐられたらみたいに変な声を上げる梨奈だったが、


「では、休憩も済みましたし、参りますね、森川さん!」


急にそう宣言してきた有栖川さんの声は聞こえた!咄嗟にあちらへ目を向けると、彼女は未だに横たわっているままで、起き上がろうとしないけれど声だけ出したようだ。


「-----8!」


ドーーーーーーット!

「「「「----!????」」」」


俺たち第4学女鬼殺隊4人は誰しもが有栖川さんの動きに驚いた。


なぜなら、彼女はなんと、「紅色のオーラが全身に纏われていて仰向けに転がったままで、バネ仕掛けみたいに爆発的で且つ瞬発力のある跳び方でいきなり、はじかれたように跳躍してきた」のである。それも、梨奈に向かってくるがために、だ。


やばい、梨奈ーーー!

身体が自由に動かせなくて避けられぬ状態のままで相手に襲いかかれるぞーーー!


「受けるが良いですよー!」

<紅蓮禍刀(グレンカトウ)>の鋭い先端を梨奈に突きつけたまま、上から落下してこようとする有栖川さん。


梨奈はなすすべもなくーーー


「はぎやあああああーーーーーーー!!!!!!」

その剣先を胸のところに直撃されざるを得ず、凄まじい断末魔に近い感じの絶叫を観客席にまで戦慄させるほどに舞台全体に響き渡らせたのだ。


どうやら、あれは<紅滅の形、弐>の動作一連の最後の段階みたいだ。壱の段階では相手を連続で何度も斬撃し、それでもまだ倒せなかった場合、<弐の形>に進行して、<壱の形>にて叩き込まれた斬撃の波動と波長が相手側の身体に残ったままなのを利用して、それであの<紅粒>みたいなのを浮上させ相手に付き纏って、それによって痙攣状態に持っていったって訳だ。


で、最後はあのばね仕掛けな襲来で敵を完全に屠るって結末の出る神使力と融合された剣術なんだな。


めっちゃ回りくどい技で、如何にも有栖川さんって感じだなー!


梨奈.............俺は信じるけどな。お前がその程度で負けるほど柔な女の子じゃないってことを。


だから頼むよ!有栖川さんにお前の全力がどんなものか、見せてやれ!

隊長命令だからなー!


この<聖戦舞祭>が始まってから何ども仲間のピンチを目にしたら声に出してて慌てているように見えるだけの心配性だったので、今回は幼馴染の心配ながらもかろうじて俺のこの思いは内心に留まらせて、心の中でそう梨奈に檄を飛ばす俺がいるのだった。


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