第三十六話 聖戦舞祭:ライバル同士
「さ....さっきのはただの言葉のあやにすぎないっすよ!僕達は最初から知ってたんだよね、あれで終わらないんだってー!なあ、有栖川ー?」
「....そ、そうですねーー。あははは~~っ。まったくその通りですよ。ですから、早山君に森川さん、ネフイールさんとどんな特訓を重ねてきたか知りませんけれど、あまりチームメイトの実力に過信すぎないように、ですね~?」
そう言い返しきてきた遼二と有栖川さんだが、
「有栖川さん、それはこっちの台詞なのよー?確かに、そっちのエリーゼ先輩は6位で、一ランク上なのだけれど、そのランキングは去年から持ち込んできた書類上の記録にすぎないってこと知ってるのよね?そっちのローザさんもいるし、きっと知ってると思うのよね?だから、現在の二人の実力じゃもう過去の記録に参照して計っても無駄だわ。」
「いいえ、森川さん。もう何度も言ってきましたけど、いくら猛特訓を続けてきたからってこんな2週間という明らかな短い期間内で、ランキングも一位上のエリーゼ先輩より強くなるはずがありません!大体ー」
「ありえないです~~~!! エリーの<紅玉灼熱融解(エンゲラーム)>を至近距離で食らってなおも立ち上がれるはずがないですよ~~~~。くっ!ならー!」
有栖川さんが言い終わる前に、舞台上からエリーゼ先輩の声が聞こえてきたので、梨奈や有栖川さんの会話からそっちへ意識を向ける。
何か攻撃を仕掛けようとしたらしくて、ロッドの先端を正面にいるネフイールに向けているようだが、
「もうさせないんだよーー!!はああああーーー!!!」
辛そうに両脚の膝を震わせていても懸命に目の前の強敵の追撃を封じるべく、掛け声を上げながらジェシー・クレファスの右手の方の刃をエリーゼ先輩めがけて投擲したー!
「くっー!<切刻尖鋭恐氷凍刃(ノガローソッス)ーーー!!!」
カアアアアアーーーーーーーングウーー!!!
けたたましく響いてきたのは金属同士がぶつかった音ー!
エリーゼ先輩のロッドの先端に集中して見てみると、そこから伸びたのは長いながらもぶっとい青い色の氷でできた刃みたいなもので、それを使って、襲い掛かってきたジェシー・クレファス片方の凶刃を難なく受け流した!
「やあああーーー!!!はああああーーー!!!せいいやああああああーーー!!!」
カアアアアアーーーーンンン!!!カチーーーーーーング!! カチャアアーーーーーン!!!
前に先輩の張った障壁の時のように、連続して両方の短刀を交互で投擲してエリーゼ先輩の氷の刃による防御を崩そうとするようだが.....
「へええーーーい!!!へえーーーーいいいーー!!!!はああああーーー!!」
カチャアアーーーーーン!!! キシーーーーーーン!!
ロッドを振り乱して向かってきたジェシー・クレファスの軌道すべてを読みきったかのように、あるいはただの偶然で振り乱したロッドで迎撃に成功したか、ネフイールからの攻撃を全部はじき返せたーー!!
でも.........心なしか、エリーゼ先輩の顔には少しだけの焦り....というか、不安が滲んできた。それもそのはず、さっきはあんな強力な第5階梯の炎系の現神術を浴びせられても、膝や両腕をがたがた震わせながらも執拗に反撃を繰り返してきたネフイールが迫っているから!
______________
エリーゼの視点:
(なんでーー!?)
「やあああああーーーーー!!!!」「せいやああああーーーーー!!!」
カチイイーーーーンン!! カチャアアアーーーーン!!
(一体なんなんなのよーー!それーー!)
「へええーーーーいいい!!! せいいーーーーー!!」
カチャアアーーーーーン!!!カチイーーーーーング!!
(もうー! あたくしの<切刻尖鋭恐氷凍刃(ノガローソッス)にてネフイーのジェシー・クレファスの猛攻を凌いでいる最中なのだけれど、なんで元気いっぱいで反撃してきてるのよーー!!さっきは<紅玉灼熱融解(エンゲラーム)>で気絶させて、10まで数えられそうで長い間、地面に倒れてたのにーー!)
「ええいいやあああーーーーーー!!!」
ガチャアアアーーーーーーン!!!
「--くっ!」
(なのに.........どうしてー!?どうして今はそんなに元気な状態で歯向かってきてるのよーーー!! )
(もうー!)
「せいやああああーーーー!!」
カチーーーーーン!!!
「くっー!」
(ネフイール、こんな2週間で、何やってたのよーー!?エンゲラームをその身で浴びていても平気で立ち上がれてピンピン状態で反撃してくるだなんてーー!よっぽどの神使力量がないと到底できるようなものじゃないわーー!)
「はいやああーーーーーー!!」
カシャアアーーーーーン!!!
「うぐっー!」
(ああ......やばい!あたくしのグラエンズから伸びてる<切刻尖鋭恐氷凍刃(ノガローソッス).....アイスのあっちこっちがひび割れてきてー!くっー!ネフイール......ネフイール...........あんた!)
「ネフイー!!!調子に乗らないでよーー!!はあああーーー!!」
チャアアーーーーーン!!!
「きゃああああーーーーー!!!」
神使力をグラエンズの先端に集積してまたもひび割れていたノガローソッスを全治させたので、ありったけの神使力を集中してロッドを激しい勢いで振って、それで発生させた凄まじい風圧でネフイールを吹き飛ばしてやった!
トーー!
「やっとー!やっと取り繕いの口調じゃなくて、昔からよく知ってたその普段の喋り方に戻ったんだよねー!嬉しいよ、エリー!にしし~~。」
屈託のない声と表情で微笑みながら、着地しながらあたくしを見据えてるようだけれど、なにその余裕ー!?気にいらないんだけどー!だって~~あたくしが!
「この2年間で家の者からどれほどしつこく現神術学や戦闘訓練ばかりじゃなくて、学績も頑張れよって言われてきたか、どれほどストレスが溜まってきたのか~~~!!あんたが知らないわけないでしょうがーーー!!!なのに~~~。」
鬱憤をすべて晴らすように、
「氷結系第6階梯、<轟々巨々大撲潰屠剛氷山(ネゾネザジャフイードス)!!!」
グラエンズの先端にありったけの神使力量を集中し、青白く周囲を眩しい光が発せられた!
「これにて、試合を終わらせてやるわーーー!」
「にしし、果たしてそれでわたしを討てるのかな、かな~~~?」
(そう。ネフイールは昔から、いつもそうやって余裕ぶってた.....たとえ状況が芳しくなくなっても........そう、あの時みたいに.....)
5年前の頃、エクシア小等学院にて:
6年、C組の教室で:
「ね、ね、貴女(あなた)。エリーゼっていうんだよねー?先日から両親に教えてもらったけど、貴女は将来、わたしと同じチームメイトになる子だよねー?ほら、エレン姫殿下様の王族直下部隊に.....」
「えー?」
そう。今は放課後で、チャイムが鳴ったすぐ後のことで、席についてるあたくしなんだけど、後ろから声をかけられたから、振り向いてみたら、緑色の髪をしてる同級生と目があった。あの時、はじめてネフイールという子と会話を交わせたのは今からでもはっきりと覚えてる。この小等学院にて、あたくし達はどっちも6年生なのだけれど、あたくしが飛び級で6年生に進級してきたので、実質上、彼女より一年より年上なの。なぜそうなったのか、この小等学院に編入する時に、家の事情を理由に周りの子と違ってあたくしだけが遅れて入ったの。
6歳になった頃に一年生として入学するはずだったのだけれど、2年間は家でたくさん勉強したので、8歳になった頃には2年生として初年度を過ごさせてもらった。 なので、6年生になった今でも、彼女が11歳で、あたくしの方は12歳なの。 で、同じクラスだから、何度か話したこともあったが、こうして面と向かって名前を呼ばれたのははじめてのことだわ。
「将来、エレン姫様の部隊の下で共に活動することになる隊員同士なんだから、まずは挨拶しておこうかと思って声をかけてみたんだけれど、.......駄目ー?にしし...」
茶目っ気で、暢気な笑顔のままの彼女がそう言ってくれた。何それー!?人懐こい笑みで話しかけてきちゃってもう~~!なにこの憎めない小動物みたいな娘は~~。
「えっと......セーラッス嬢なのよねー?あのセーラッス伯爵家の次女で....」
「ぴんぽん~~!大正解だよー!にしし~~。じゃ、改めて自己紹介するね~~。ネフィール・フォン・セーラッスといって、セーラッス家の2番目の娘だ。よろしく~。」
「あの....あたくし....エリーゼ・フォン・オスハイートというの。よ...よろしくお願いするわ...ね。」
「うん!にしっー!」
そう。はじめて会話を交わした時に、歯を見せて微笑んだ彼女から受ける第一印象は、人と触れ合うの得意な子で、当時の引っ込み思案なあたくしとは大違いだったの。どちらかというと、彼女は大勢の前で元気に踊っている太陽のような存在で、周りを照らしてくれるような不思議な雰囲気を纏うけれど、それに対して、あたくしはただ隅の影に隠れているような陰気なキャラみたいで、貴族の出にも関わらず、同年代の子と社交的な振る舞いが苦手だったのよね。
だって、あたくしはいつまでも両親に成績、成績だとかいっぱいプレッシャーをかけられてきたから、それでその反動なのか、たとえ座学の勉強を頑張っていても、どうしても心の底から勉強するのが楽しいとは思えないの。だから......ストレスを解消するために.......ある日、その対処方法を見つけたの。
「あああ.......ああぁぁ......なにこれぇ~~。気持ちいいよ......」
それは中等学院の1年生の後半の時のことだった。
ネフィールと共にその頃に既にエレン姫との最初で、直接の拝顔(顔見せ)を済ませて、来年には姫様の部隊で二人揃って入る手はずになったのだけれど、王女様の部隊の隊員になれる名誉もあってその時は周りから、特に両親から寄せられた期待があまりにも大きくて、プレッシャーが一倍、2倍にまでも感じるの。だから......
「ひいい.......ああううぅぅぅ~~~~。いくー!いっちゃうの~~。」
こうして、おまたのとこに指を這わせてみたら、なんか電流が走り抜けるみたいな強烈な甘い感覚を感じて、それでとっても~~~気持ちよくなれたのを発見したわ。
「あああああ.........これで、ストレス軽減、できるよー!」
その頃からは適度なストレス解消を重ねつつ、勉強を頑張っていったけれど、どんどんヴァルキューロアとして成長していったネフィールを見ると、なんかあたくしも競争心が刺激されて、それで一つの結論に至ったの。
その結論とは.....現神術学やヴァルキューロアとして訓練するだけに一生懸命に取り組んで、他の勉強に対して、疎かにしちゃうっていう両親への反発意識をって思うの。
だから、それから、ネフィールとはライバル同士で、何度も試合とか勝負を繰り返して挑んだり挑まれたりしたけれど、3年生に進級しようかという頃に、いくら怠惰な心を保つつもりでいても、腐っても鯛らしくて、中等学院2年生の年末試験にていい
成績を収めたので、そのまま、15歳になったばかりの頃この高等学習施設である聖メレディーツ女学園へ一年生として編入することができたの。
その頃から、学び舎そのものが別々になったので、あれからは勝負をする機会もどんどん減ってきてるんだけれど、一年生として聖メレディーツ女学園の生徒になった間もない間に、神滅鬼がまたも表舞台に姿を現したから、エレン姫率いる王族直下部隊の一員として、最初の神滅鬼の討伐任務、<サハニア渓谷戦>に参加したのだけれど、あの時はエレン姫、本当に危うい状況だったのよね.......
1匹の<アングラン>級と戦ったエレン姫、爆発が巻き起こったので、どうなったのかとひやひやして血の気が引いた思いだったけれど、<レギナ>とかなんとかの部隊のニシェさんにより助けられたから本当にほっとするのよね........。
で、その討伐任務が終わった間もない頃に、中等学院3年生のネフィールから、本日の試合が始めるまでに最後の勝負を申し込まれた!もちろん、その時はリンガも立会人であるネネサ女王陛下に発動してもらったこともあり、物理ダメージは一切入らなかったわ。
.................
.......
「はあああーーーーー!!!!<大凍烈滅千本氷柱(ニラ・フォルーナレア)>!!」
「きゃああああーーーーーーー!!!」
.................
「あははは.......さすがだね、エリー。わたし、何度かになったか数え切れないけれどまたも負けちゃったね~~。氷結系の現神術は未だに得意のままで、なんか安心するね。」
「え?何が安心するのかしらー?」
「だって~~。その実力はまだ衰えずに健在だから、今の世に大脅威な神滅鬼から人類を守れるすんごいヴァルキューロアが求められるんだよ。だから、エリーのように強い人なら、安心してエレン様やローザと共に一部隊として、あの化け物どもと戦えるじゃない?」
その時から、明らかになったことがひとつあるのを今でも覚えてるわ。彼女は誰よりも仲間思いの娘で、それでいて、競争心もあって、何度も何度もあたくしに勝負を挑みにきたの。
「やああああーーーーー!!!!<大雷矢群豪雨(ネサリシア)>!!」
「甘いわー!!はあああーーー!!<切刻尖鋭恐氷凍刃(ノガローソッス)!!!」
そう。昔からも、何回か勝負を繰り返してきた、あたくしの最大にして、とっても懐かしくて、親しい間柄の好敵手(ライバル)である、ネフィールという素敵な仲間にして、絶対に失ってはいけない、大切な友なのー!
確かに、この2年の間に一年生としてこの学園に進級してきて以来、意図的に授業をサボったり、試験を適当に受けてきて、真面目に2年へ進もうとしないけれど、それも両親への反発として続けてきた、あたくしの意地みたいなもの。だけど、ネフィールにだけは負けたくないの!それも、戦闘面でだけなの。だから、彼女があたくしより2年に進級したのは別にどうでもいいことだと思ってるのよね。
でも、あたくしの方が強いってことにだけずっと拘ってきたの。
彼女にだけはいつまでもより強くあり続けていきたい。
_______________________
だから、今でも、絶対に、あんたを負かしてやるわーーー!!!
「はああああーーーーーー!!!!!」
全力を出したあたくしは、すべての神使力を消費して、この第6階梯、<轟々巨々大撲潰屠剛氷山(ネゾネザジャフイードス)を発動したー!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ.................................
ロッドの先端から次々と溢れ出る真っ白い迸りにより、徐徐に山のようなとてつもない大きさを誇り巨大な塊が一秒もたたない間にできあがり、彼女からの短刀をすべて阻みきった!
天まで聳え立つような高さで、この舞台を3分の一を覆い尽くしたこの巨大な氷の山があたくしとネフィールとの間を隔てて、接触を妨げるかのように彼女を睥睨するかのように、すごい存在感を誇りながら佇んだ。
「ネフィー!!覚悟はできるのかしらーー!!?これはまだあんたに見せることない第6階梯の氷結系の現神術で、いまのあたくしの最強にして、切り札ともなる極力の最終必殺技なのよーー!!」
「わああああ............すごい..........」
この窓際から観察すると、感嘆の表情や声を漏らしたネフィールが見えたけど、どうやらエリーゼ先輩のあれを見せられて、そのあまりの存在感に絶句してるようだ。
「じゃああーー!!! この2週間の特訓の成果、見せてもらおうわーー!!!はあああああーーーーーーー!!!!」
その巨大な氷山を操って、ネフィールに落下させようと、覆い潰そうとするエリーゼ先輩が咆哮を上げた!!女の子らしくない、闘争心の溢れる叫び声で、なんか凛々しい印象も醸し出されるな、あれー!
「「「ネフィールーーー!!! 」」」
揃って、叫んだ俺、梨奈やエレンである。
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