25話 過ごしやすい季節

 夏休みが明けてしばらくは猛暑が続いたものの、最近は徐々に気候が穏やかになってきた。

 今日は朝からずっと曇っていて、ブレザーを着るべきだったと後悔する程度には気温が低い。

 過ごしやすい季節になったとはいえ、つい油断してしまった。


「今日は少し肌寒かったね」


 脱いだ靴をそろえつつそう言うと、萌恵ちゃんが「いいこと思い付いた!」と声を弾ませた。


「あたしが温めてあげる~っ」


 立ち上がると同時に、ぎゅ~っと熱烈な抱擁を受ける。

 私も萌恵ちゃんの背中に手を回し、背伸びをして身長差を埋め、そのまま当然の流れであるかのように唇を奪った。


「んっ、ちゅっ」


 重なった唇の間から、小さな水音と熱い吐息が漏れる。

 帰宅直後のスキンシップにしてはいささか過激だけど、この家にいるのは私と萌恵ちゃんだけ。遠慮する必要はない。

 あっという間に身も心も芯から温まり、いまなら真冬の海に飛び込んでも平気とすら思えてくる。

 少し長めのキスをして唇を離すと、絡み合った唾液が糸を引いた。


「んふふっ、ごちそうさま~」


 萌恵ちゃんが私の唇をペロッと舐め、無邪気な笑みを浮かべる。

 とてつもなくエッチだと感じてしまうのは、私だけだろうか。

 キスやハグによって体温が上がったのを実感しながら、私たちは洗面所へと向かう。


「萌恵ちゃん。キスの後に唇を舐めるの、けっこうエッチだと思うよ」


「そっ、そうなの!?」


 先ほどの行為について個人的な見解を述べると、萌恵ちゃんは目を丸くして驚いた。

 萌恵ちゃんは以前の自分と比べてエッチになっていることを自覚しているけど、根が純情なところは変わっていない。

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