9話 ホラー番組の副産物

 私と萌恵ちゃんは、二人そろってホラーが大の苦手だ。

 にもかかわらず、夏の風物詩ということでホラー番組を見てしまった。きっちり最後まで。

 たとえ百万円貰えるとしても、夜のトンネルには行かない。普段でも行こうとはしないけど、いまはことさら行きたくない。


「番組としては面白かったけど、すごく怖かったね」


「思い出しただけで鳥肌立ちそうだよ~。真菜がいてくれて、ほんとによかった!」


 お風呂上りに、脱衣所で体を拭きながら話す。

 不幸中の幸いだったのは、入浴前に視聴したということ。自然な流れで着替えることができるので、恐怖のあまり少し漏らしてしまったことを気取られずに済んだ。


「もしお化けが出ても、私が萌恵ちゃんを守るよ」


「じゃあ、あたしが真菜を守る!」


 お互いに相手を守ると宣言。

 そこはかとない安心感を覚え、胸中に残っていた怖さが和らいだ。

 特に変わった出来事もなく、就寝の準備を整え電気を消して布団に寝転ぶ。

 先ほどと比べれば幾分かマシだけど、やっぱり部屋が暗くなると不安が強まる。

 私たちは、すがるように体を寄せ合った。体を横にして至近距離で向き合う。

 カーテン越しの月明かりに照らされ、萌恵ちゃんの顔がハッキリと見える。相変わらずのかわいさに、胸がキュンとする。

 寝苦しい熱帯夜。私たちは汗ばむ体を密着させ、優しく、それでいて力強く抱き合う。

 息がかかるほどの距離で、お互いに「大好き」と愛を囁く。二人の声がわずかな誤差もなく重なり、思わず笑いがこぼれた。

 どんな恐怖を感じても、萌恵ちゃんと一緒なら幸せなやり取りにつなげられる。

 ホラー番組は本当に怖かったけど、これからも機会があれば見ることにしよう。

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