1‐4‐10 明ける夜を告げた鳥よ

 『マギアス魔法王国』。

 七大種族を制した平地人プレーンのマギアス王家とグリモア議会の均衡によって成り立つ魔術統治国家。

 その地図上での中心地は『迷宮都市グログロア』であるが、その権力機構の中心はやや北部、聖銀で縁取られた魔と権威の都『王都ハルヴァラ』にある。


 中心に聳えるマギアス王城が見下ろす城下市には各種族の特産品が立ち並び、様々な知識、宝物が街のあちらこちらに秘められている。


 豪華絢爛。

 大陸一と謳われた魔都は健在だが、その現状は些か剣呑な雰囲気を帯びていた。


「これより大罪人『ケルド』の公開処刑を始める!」


 王城前広場にて、ドラゴニュートの大男が枷を嵌められて処刑台に押さえ込まれていた。

 その鱗は夜の闇を灯したように青く黒ずみ、その眼は人ではなく爬虫類を思わせる黄金色であった。



 法務官は朗々と罪状を述べる。


「この者、西の大砂海にて砂賊団を率いて跋扈し、大陸秩序に反逆を企てた大罪人。よってこの場で斬首滅却した後に骸を七日七晩晒し、その罪を知らしめるものである!」


 法務官の宣言に従い、仮面を被った二人の処刑人が台の上に立った。

 その片方、背が高く痩せた男が巨大な首狩り鎌を鞘から抜いた。


 三日月の如く湾曲した刀身に浮かぶ錆は、かつて首を落とされた罪人たちの怨念の名残であり、幾ら研いでも消えないのだと噂される。

 代々王家に仕える『死神』一族の当主が相続する魔道具である。


「おお……」

 どこからともなくため息が漏れる。


 さらに、もう一人の背の低い処刑人が右手に杖を、左手に魔導書を構えた。

 仮面の下で、女の声が囁く。


「ランク7、魔術『七淵業火滅却炎エンチャント・セプトアビス』」


 詠唱に応じて杖から飛び出したのは、虹の七色で構成された炎。


 それらは死後に待つとされる七つの世界を象徴しているとされる。

 この炎を纏った武器で処刑された者は魂を燃やし尽くされ、死後にいずれの世界に迎え入れられることなく、無になるのだと信仰されている。


 魂の滅却。

 それは、罪人に対する最も重い罰の一つであった。


 七色の炎が鎌に注がれ、魂を滅する処刑装置が完成すると、処刑台の上にはケルドと『死神』だけが残った。

 虹をも思わせる鮮やかさに人々が息を呑む中、大罪人ケルドはほくそ笑む。


「そんなチンケな鎌で俺様の首を刎ねるってか? そんなヌルい炎を纏った、そんな薄っぺらい刃で、か?」


 不適な問いに、仮面の処刑人『死神』が答える。


「その通り、君の頸は固そうだから、気を楽にしてもらえると助かる。言っておきたいことがあるならば、早めにね」


『死神』は、線の細い声で言った。

 その言葉にケルドはつまらなそうに、しかし悪意の籠った目で叫んだ。


「ハッ、期待外れだ!」


 瞬間、異様な魔力が彼の全身から噴出する。


「兄さん!」


 処刑人補佐役の女が叫んだ瞬間、魔力と混合した空気が火を噴き、処刑台が爆炎に包まれる。

 黒煙が巻き上がるその中心には、枷を力ずくで破壊したケルドが邪悪な笑みを湛えている。


「カハハハ! この程度の手枷足枷で『黒竜のケルド』様が止められる訳ねぇだろうが!」 


 恐れ戦く見物人たちを睥睨し、ケルドは笑みを強める。


 彼は黒いドラゴニュート。

 俗に『黒竜』と呼ばれる突然変異的存在である。


 故にだろうか。

 彼は、ドラゴンの術を扱う事が出来た。


「今のは、『ドラゴンストーム』……ッ!」


 補佐役の女は身を退きながら炎の全体を見渡し、息を呑む。

 それは災厄と恐れられたドラゴンのみが扱えるとされている切り札。

 強大な魔力と、それを自らの周りで爆裂させても被害を受けない強靭な鱗が在って初めて成立する奥義だ。


 炎が止んだ後、台の上に『死神』の姿は無かった。


「カッ、吹き飛んだか。名だたる悪党どもを恐れさせた『死神』ってのを一目見てやろうと捕まってやったが、肩透かしもいいとこだ」


 恐れ戦く見物人たちを睥睨し、処刑台の上でケルドが嘯く。


「お前たちは俺たち『黒竜』を虐げてきた! バードマンなら『黒羽』を、エルフなら『ダークエルフ』を! それは俺たちの『力』を恐れているからだ! いいか、畏れろよ愚民ども! 俺たちは劣等種ではない! 俺たちがテメェらを支配する時代が今に来るぞ! まずは手始めに、俺がこの王都を……」


 焼いてやる!


 そう言おうとしたケルドだったが、


(ん……?)


 口が痺れて、言葉を吐き出さなかった。


(何だ……?)


 まさか、大衆を前にして緊張したなどと言う事は有り得ない。

 そんな小さな胆は持ち合わせていないのだ。


 だから、『何かをされた』に違いない。

 ケルドが額に汗を浮かべたところに、涼やかな声がした。


「『力』は恐ろしいね。君のような真っ直ぐな男を、愚行に走らせるのだから」


 ぞぞぞ。


 ケルドの背に、悪寒が走った。

 その背後には、ドラゴンストームで吹き飛ばしたはずの『死神』がいた。


「テメェ、いつの間に……」

「ずっとここにいたよ。君の炎は僕には『遠すぎて届かなかった』」

「何……を……」


 口が痺れて言葉が上手く吐き出せなかった。


「力というのは恐ろしい。でも、でもね。僕はもっと恐ろしいものを知っている」


 『死神』の手には変わらず炎を纏った首狩り鎌が握られている。


「ッ!?」


 その刃に、血が滴っている。

 刃に浮いた錆がそれを吸い、新たに死者の仲間が加わった事を喜ぶかのように鈍く光っている。


「ッ……!」


 ケルドは、その時になって、初めてこの優男に恐怖を抱いた。


 なぜ、ドラゴニュートである自分に対して簡易の拘束しかなされなかったのか。

 その理由に気が付いてしまったのだ。


 この男の前では、全てが無駄……


「『死』……それはもう、君のすぐそこに来ている」

「く、来るな!」


 ケルドは後ずさりながら自らの頸を押さえた。

 だが、既にそれは『斬られていた』。

 だから、刃に血が付いている。


「嫌だ、待て、来るな! 死にたくない!」


 ケルドは、いつ斬られたかも理解できぬまま、死に怯えた。

『鱗』も『炎』も『膂力』も関係ないかのように、彼の頸から血が溢れ出す。


 死神は歩み寄り、ケルドを処刑台の淵まで追い詰めた。


「し、『死神』……」


 意識が遠のき体勢を崩すと、ケルドの胴から頸がゴロリと離れ、処刑台から落下した。

 ズシンと、人の身とは思えない重々しい音と共にケルドの亡骸が広場に打ち付けられた。


「その通り。『死』こそが真理だ。君は、身を以て『死』の恐ろしさを示すのだ」


 『死神』は外套を翻すと、そのまま歩いて処刑台を降り、群衆の見えない奥の方へと引っ込んでいく。


「ちょっと兄さん! 勝手に帰るな!」


 もう一人の処刑人から逃げるように『死神』は消えた。



「こ、これで公開処刑は終わるものとする!」


 法務官の宣言により、公開処刑は呆気なく幕を閉じた。

 だが、『死神』という存在の異様さが、怯えて死んでいったケルドの亡骸と共に恐怖を確かに民衆へと刻んでいた。


 その証拠にこの日の晩、王都では犯罪どころか喧嘩の一つすら起きなかったとされている。



 †×†×†×†×†×†×†



 見物人たちがどこか不完全燃焼気味の嗜虐心を抱えて広場から散った後も、マギアス王城のバルコニーから広場を見下ろす者があった。


 車椅子に座した老人。

 マギアス魔法王国の現王、マギアス一三世である。


「『死』……か。ギルシアンよ、なぜ死んだ……」


 マギアス王は、亡くした王太子の名を呼び、老いに濁った陰鬱な目に僅かに涙を浮かべた。


「あまり風に当たられるとお身体に障りますぞ、父上」


 傍らに控えていた大男、第一王子ブラドール=マギアスは病を患う父王を気遣うが、それでもマギアス王は広場を、これから七日七晩に渡って曝し続けられる大罪人ケルドの死体を見下ろしていた。


「ブラドールよ、余は老いた。ギルシアンが死んだという事も……何か、夢の中の事のように感じられてならぬ」

 

 ブラドールは少し間を置いた後、答えた。


「後のことは、このブラドールにお任せください。必ずや、我が弟を殺した首謀者を見つけてごらんに入れましょう」

「ああ。もはやお前だけが頼りだ……」


 老マギアス王は咳き込み、僅かに血の混じった痰を吐き出した。



 ポツリ。


 雨粒がブラドールの頬を打った。

 

 見上げれば、今にも降り出しそうな雲行きであった。


「誰か、早く父上を部屋にお連れしろ!」


 ブラドールの剣幕に王室執事がいち早く駆けつけ、王の車椅子を押して城内に戻っていく。


「……」



 父王の背を見送り一人たたずむブラドールの影は、室内からの灯りによってバルコニーに伸びている。

 それが突如揺らめき、三つに増えた。


 一つはブラドールの本来の影。

 残りの二つは、別の何かである。


「流石に、弱られておいでですな」

 影が蠢き、口を利いた。


「『必殺』か。姫巫女の行方が掴めたのか」


 ブラドールが平然と訊ねると、影の一つは独りでに動きだして低い声で答える。


「どうやら姫巫女は『翼の里フェザーン』にて『継承』を成功させたようです」


 影の言葉に、ブラドールは眉一つ動かさなかったが、その身体から僅かに怒りの混じった魔力が滲み出す。


「しくじったか。小娘ども如きにいいようにされおって」

「返す言葉もございませぬ。ですが、面白い情報もございます」

「言ってみろ」

「我が部下『銃殺』が、彼の地にてイヴィルカイン=フォーグラー卿に接触しました」


 ブラドールは僅かに眉をしかめた。


「フォーグラーだと。あの老人が動いたというのか。誰の差し金だ?」


 彼にとって、それはある意味で姫巫女の動向よりも重要な情報であった。

 盤上で踊る駒たちの中で、その名はかなり重い。


「分かりませぬ。卿は大僧正ボリ=ウムに呪殺されてしまったとのことです」

「ほう、あの男がそう易々と死ぬとも思えんがな……」


 しかし、相手が相手、か。


 ブラドールは僅かに物思いに耽る様子で、顎に手を当てた。


「……まあよい。下がれ」

「御意」


 『必殺』の影は恭しく礼をすると、バルコニーから忽ち消え失せた。

 残った一つの影が訊ねる。


「儂は手筈通りに進めるが、よろしいかのう?」

「『ヴォルフ』、貴様は好きにせよ」

「ぐふふ、では失礼する……」


 ヴォルフと呼ばれた影もまた、消え失せた。


「……」


 ブラドールはバルコニーから曇り空に圧し包まれた陰鬱な王都を見下ろす。

 その目には、何かを憎悪するような黒い炎が灯っていた。


「指をくわえて見ているがいい、ギルシアン。俺は全てを手に入れてみせるぞ」


 ブラドールの言葉を聞いた者はいない。やがて降り出した雨が全てを覆い隠してしまう。


 その下では、罪人ケルドの亡骸が既に熱を失っていた。



 †×†×†×†×†×†×†



 所変わって、翼の里フェザーンにて。


「なぁジークマリア。俺っていつまでこの大陸にいられるんだろうか?」

「ん……?」


 月明かりの下、ふと閉人がジークマリアに訊ねる。

 二人は月と星々の照らす『翼の寺院』の縁側にて良い雰囲気に……なっているはずもなく、『騎士将棋』の盤を挟んで睨み合っていた。

 『騎士将棋』はジークマリアの趣味であるが、盤面は閉人が優勢。

 これは、日課としての対局が始まって以来、どうにも変わらない事であった。


「むぅ……」


 ジークマリアは戦況を打破するべく思考している。

 閉人は、ボリ=ウムが生前に溜めこんでいたという火酒(クシテツからもらった)をちびちび呑んでいたが、ジークマリアの長考があまりに長いため、対局時計の導入を検討し始めていた。


「おい、聞いてんのかよ」

「ん。聞いている」


 ジークマリアはようやく思案定まり『将軍』の駒を押し進めた。

 閉人は間髪入れずに駒を動かし、『将軍』をけん制する。

 ジークマリアは眉をしかめた。

 再び思考に沈みながら、話半分に答える。


「貴様の『守護者ガーディアン』としての『契約』のことだろう。無論、姫様の旅が終わるまでだ」

「それは分かってる。だけど、その旅がもうすぐ終わっちまうじゃないか……」


 閉人は声を落とした。

 アラザールとの戦い後に目覚めてからというもの、閉人はその事が心配でたまらなかった。

 朝目が覚めたら日本に戻っていた、なんてこともあるだろうか。

 イヴィルカインに見せられた悪夢が頭をよぎる。


「? 何故そうなる?」


 ジークマリアは訊ね返した。

 一瞬盤上の話かと思ったが、ジークマリアはいつの間にか閉人を怪訝そうに見つめていた。


「だってよぉ、姫さんは立派に魔導書を受け継いだんだろ。旅はもう終わっちまうんじゃないのか」

「ああ、そういうことか」


 ジークマリアは、合点がいった様子で口元に冷笑を浮かべた。

 怪訝そうにしている閉人に自らの両手を示し、指を立てた。


 右手の人差し指、中指、薬指、小指。

 左手の人差し指、中指、薬指。


 合計で、


「七つだ」

「……何が?」

「分からないのか?」

「……」


 実のところ、閉人は、何やらとても良い予感に思い至り、滝のような冷や汗を流し始めていた。


 小学生の頃、閉人はテレビゲームをしていて似たような経験をしたことがある。

 もうすぐクリアしそうだと思っていたゲームが実はまだ全然序盤で、新たなステージや隠された要素、衝撃の展開が用意されていた事を悟った時の驚き。

 ああ、自分はまだこの物語に浸っていられるのだという、心の奥底からの安堵。


 恐る恐る訊ねる。


「『継承』は、全部で七回……?」

「その通り」


 コツン。


 ジークマリアは駒を進めた。


「……そっか」


 閉人は、肩の力が抜けた様子で、その場で呆けた。


「ってことは……あと六回……」


 火酒を注ぎ直そうとして、その手から杯が落ちた。

 ゴトリと音がする。


「あと六回もッ!?」


 閉人はあまりのことに時間差で声を挙げてしまうが、その口をジークマリアが押さえこんだ。


「馬鹿、声を抑えろ。夜中だぞ」

「む、むぐ、ごめん……」


 閉人は口を押えられたまま頷いた。


 その後は、しばらく無言で将棋を指し続けた。

 思い出したかのように、ジークマリアが告げる。


「この旅はそもそも姫様のマグナ=グリモア継承の承認を得るべく、七大種族それぞれの本拠地を巡る旅。『しるし』が待つ目的地も七つあるのが自然だ」

「そうか……」


 閉人は頷く。

 今になって思えば、『旅が終わる』などというのは全くの思い込みであった。

 イヴィルカインの見せた悪夢は、知ってか知らずか、その思い込みに付け込んでいたのだ。


(はは、やっぱり馬鹿だな、俺って。勝手に勘違いしてたのか)


 自嘲しながら、火酒をあおる。


(そっか。まだ、旅を続けられるのか)


 と、思うと同時に、


「姫さん、大変なんだな……」


 心の底から、エリリアに課せられた使命の重さを想う。


「……」


 ジークマリアもまた、火酒をあおった。


「何と言っていいか、私にはよく分からない。姫様にとってこれからも苦難の旅が続くのを良いことだとは思わない。だが……」


 ジークマリアは、盤上から僅かに視線を上げた。

 その目が、夜光を受けて宝石のように閉人には見えた。


「よかったな……閉人。これからも、よろしく頼む」


 ジークマリアは言うと、プイとまた目を盤上に戻した。

 気恥ずかしいらしい。


「ああ。よろしくな、ジークマリア」


 その後は、二人共本当に黙って将棋を指し続けた。


 もっと強くなろうと、閉人は思った。

 今回の旅で会得した新しい力の使い方を徹底的に学ぼう。

 閉人は心の中で、そう誓うのであった。


 いつの間にか、夜が白み始めていた。



 †×†×†×†×†×†×†



 そして、出発の朝が来た。


 クシテツ、アラザール戦を共に戦った僧兵たち、里の子供たちに大人たち。

 要はけが人以外の里の者たち総出で姫巫女一行の見送りに来てくれていた。


「なるほど、ではお三方は『迷宮都市グログロア』に?」


 『贖罪の縦穴』に設えられたゴンドラの前で、クシテツが訊ねる。


「ええ。次の目的地のお告げが来るまではそちらに」


 エリリアが答えると、クシテツは申し訳なさそうに目を伏せた。


「せめて皆さんがグログロアに戻るまででもお供したかったのですが……」

「ありがとう、クシテツさん。でも、大丈夫。姫さんには俺たちが付いてる」


 閉人が答える。


 バードマンたちにとって、これからが大事な時である。

 ボリ=ウムという大黒柱を亡くした巨大な家族を立て直さなければならない。


 それは里の『中』だけの事ではなく『外』、彼女が渡り合っていた七大種族の代表者会議『グリモア議会』についても新たな対策が必要だと意味している。


「かたじけない。せめてグリモア議会に掛け合い、これからの皆さんの旅の助けになれるよう手を尽くしましょう」


 クシテツは一通の紹介状をジークマリアに手渡した。


「拙僧の従兄弟に商人をしている者がおります。里に寄りつかない変わり者ではありますが、色々と顔の利く奴です。皆さんの助けになってくれることでしょう」


 綱が巻き上げられ、ゴンドラの籠に一行は乗り込む。


「さようなら、皆さん!」

「さらばだ」

「さよなら、また来るよ、絶対!」


 三人は手を振り、ゴンドラと共に降下していく。


「どうか、皆さんの旅に翼の加護がありますよう……」


 クシテツたちは、翼を合せて祈った。

 その祈りが風に乗って、爽やかで暖かな風となって、一行を包み込む。



 三人は、徐々に降っていく。



「閉人、貴様『また来る』と言っていたが……」


 ふと、ジークマリアが訊ねるように呟いた。


「あれ、確かに。来ることってもう無いな……」


 閉人は一人ごちつつ、既に遠くなったフェザーンを仰ぐ。

 思い返してみれば、地球にいた頃は誰かと二度と会えないなんてことは有り得なかった。


 ボリ=ウムとの別れもそうだが、閉人は死というものに心を引かれておきながら、別れというものに対して心構えが出来ていなかったのかもしれない。


 今になって、少し寂しくなり、涙がちょっと出た。


 そんな横で、エリリアが微笑んだ。


「また来ましょう。今度はゆっくりお空を眺めましょう。三人で」


 主の言葉に、二人の従者は頷いた。

 それは良い。とてもいい。

 二人は、心の底からそう思った。


 だが、閉人だけは妙な胸騒ぎに囚われていた。



 閉人は、確かに再びフェザーンを訪れることとなる。

 だが、それは予想外の理由により、予想外の形で、予想外の結果に至ることになる。


 なんにせよ、三人の冒険の第一章がこれで幕を閉じたのである。



 『断章のグリモア』


 その35:第一章終了時の閉人たちについて


【名前】黒城閉人

【年齢】22

【冒険者名】コクジョウ=ヘイト

【体力】元卓球部級

【知力】ほぼ大卒

【魔力】今は普通

【装備】魔銃カンダタ、使い慣れた鉈

【魔術】『瀉弾血銃』、『瀉血地獄沼』『無限骨肉戦争』

【特性】不死、睡眠障害、『守護者』

【備考】骨を操る魔術を手に入れたためか、最近無性に『NARUTO』のサスケ奪還編を読み返したくなっている(異世界なので無理)



【名前】エリリア=エンシェンハイム

【年齢】16

【冒険者名】エリザベス=フォン=ハウ=ローゼン=パーク四世

【体力】学院における体育の成績は五段階中『2』

【知力】成績優秀

【魔力】姫巫女級

【装備】フィガロの笛、学院の杖、白の魔導書、『空の断章』

【魔術】白魔術一般、『呼霊』、『街角超会話』、『神芝居』、『怨神刃螺羅之万華鏡』『天■■承■■■魔……器……、『■■■■■■■■■■』

【特性】マグナ=グリモアの姫巫女、休学中

【備考】たまたま風邪をひいて保健体育の授業を休んでしまったせいで、赤ちゃんはキャベツ畑で採れるものだと信じている



【名前】ジークマリア=ギナイツ

【年齢】17

【冒険者名】ジーク=ナイツ

【体力】ゴリラ

【知力】戦闘においては頭が切れるが、ゲームは大の苦手

【魔力】普通

【装備】魔槍アンブラル、聖鎧シャイニング、投げナイフ

【魔術】『闇部侍臣』『魔装』『解装』

【特性】グリモアの騎士、休学中

【備考】好きな色はピンクだが、自分に似合う色は寒色系だと理解しているため趣味をあまり表に出さない。しかし……


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