7-7
草加市内のARフィールドで戦う黒のシュヴァリエとあいね・シルフィード、それは偶然にも遭遇戦になっていた。
シュヴァリエも別のSNS炎上勢力等を撃破していたのだが、その過程であいねがゲームに乱入と言う経緯である。
シュヴァリエはあいねとの遭遇経歴はない。しかし、SNS上であいねの話題が浮上していた事は知っていた。
そう言う経緯もあって、全く知らないと言う訳ではないのだが――リアルで遭遇するとは予想外なのかもしれない。
(まさか、向こうのテリトリーにでも入ったと言うのか?)
シュヴァリエは周囲を警戒しつつ、被っているメットのARバイザーに表示されたあいねの位置へと向かう。
数十メートル近辺まであいねが接近しているようだが、何か武器を構えているような様子はない。
(しかし、チャンスはある。ここで――!)
シュヴァリエがあいねのいる場所へと接近する。足音に関してはホバーを使ったりしていないので、多少なりともするだろう。
しかし、あいねが足音で反応するようなことはなく、これはチャンスと思ったに違いない。
「どうして――!」
シュヴァリエが完全には囲碁を取ったと思った矢先、目の前に見えたのはあいねだった。
しかも、攻撃の構えを見せているのだが――その構えはどう考えても近接格闘のモーションであり、遠距離攻撃ではない。
蹴り技では大きな隙も出るだろうが、彼女の衣装的な意味でも蹴りはないだろう。殴り系統の技かもしれないが――彼は明らかな勇み足をしていた。
目の前にあいねが見えた段階で攻撃の準備は完了しており、格闘ゲームで言う『待ち』状態だったのかもしれない。
(モーションキャンセルで必殺技を――?)
シュヴァリエはあり得ないというような表情であいねの攻撃をガードしようとするのだが、それも間に合わないだろう。
ガードモーションをしたとしても、削りダメージ等でライフが減るのは避けられないからだ。
「馬鹿な、ゲージが瞬時に削られるのか――」
そのゲージ減少スピードは尋常ではない。シュヴァリエの方も把握できず、あいねの方も認識していないだろう。
ゲームシステムに干渉したと言う訳でもなく、これはチートではなく正常な挙動の範囲内らしい。
「あれだけ減るのか?」
「まさか、ガード無効技か?」
「信じられない」
「あの挙動ならば、今まで対戦相手が負け続けていたのも納得できるな」
「あれでは、いくらなんでも勝てない。勝てる気なんて起きないだろう」
「だからと言って、あれをチートの一言で片づけられるのか?」
「そこが問題だ。あの魔法少女アバター自体はゲームで実装された物だろう」
「あまりにも強すぎたのであれば、運営が直接修正をするはず。その反応もないという事は――」
周囲のフィールド外で見ているギャラリーもあいねの必殺技には、想像以上と言う事で驚いている様子だった。
その火力は明らかに一撃必殺技と言っても過言ではないレベルであり、ガードして八割以上減る光景には――。
加えて、その威力はもしかするとゲーム中最強火力――反応は様々だったようである。
この致命的な一撃も影響し、バトルの結果としてはあいねの勝利で終わった。
一撃を受けた後の展開は別の意味でもワンサイドゲームと言ってもいい。さすがにハメ技まがいの物は使っていないが。
「負けたと言うのか? この俺が――」
シュヴァリエは自分が負けた事を自覚していない。むしろ、どうして負けたのかが分からなかった。
そして、それと同時に何かが光出したようにも見える。先ほどまでゲーム上で負傷していたダメージは瞬時に回復した一方で――。
(鍵の力が消えたのか?)
これは別の意味でもシュヴァリエの方が想定外だった。七つの鍵の力を自分で感じる事が出来ず、消滅したのを確認する。
これに関してはあいねも認識しているようだが、その反応は天と地の差と言ってもいい。
「どういう事なの――? 七つの鍵が消えるなんて」
あいねの両手は震えている。鍵が消えた事でシュヴァリエが消えてしまうのではないか、と言う事に。
七つの鍵の所有者が消えると言う事は、他の所有者にも自分が敵対勢力と認識される事を意味しているかもしれない。
それを踏まえると、今のあいねには自分がやってしまったミスの方が重大だったのだろう。
七つの鍵の消滅、それは他の関係者や蒼流の騎士の耳にも届いた。
速攻でトレンド入りした等ではなく、鍵の反応が消えた事による物だが――。
「さて、どのような動きをするのか――蒼流の騎士は」
あいねのバトルをスマホ経由で視聴していたのは、コンビニ前で何かの様子を見ていたビスマルクである。
冥府度服のままだが、このエリアではコスプレが許可されているので自宅までこの格好で帰ったとしても警察が動く事はない。
しかし、犯罪行為に類する痴漢行為やストーカー等であれば通報されるだろう。
ビスマルクとしてはSNS上でのあいねがトレンド入りしている現状に対し、何か作為的な物を感じているのかもしれない。
彼女自身も蒼流の騎士に関してはSNS上で名前を聞く程度だけでなく、様々な個所も調査をしていた。
その上で、彼の動きは自分のメインフィールドであるリズムゲームに及ぶ事を懸念している。
「鍵が失われた事で、全てがシナリオ通りに進むのか――」
もう一つの懸念、それはシナリオ通りに話が進まなくなった事に対してだった。
本来のマルスを呼びだした段階でのシナリオとは、現在のシナリオが大きく変化しているのは事実である。
それに加えて、様々な人物に『ヴァーチャルレインボーファンタジー』の存在やシステムも知られる流れとなった。
もはや、知る人が知るようなマイナー作品ではなく、書籍化されたWEB小説のような状態にあるのかもしれない。
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