第12話

 中間試験も終わり、気温も日に日に上がってきていた。


 そろそろ夏だな、と僕は思った。


 夏といえばそう、プールのシーズンだ。


 毎年このシーズンになると僕は心が踊り出す。


 え、なぜかって?そりゃ可愛い女の子たちのスク水姿が見られるからだ。


 しかし今年はどうにも気分が乗らない。


 それはそうだ。スク水を見る側ではなく着る側になってしまったのだから。


 自分のスク水姿を他の男子生徒たちに見られることを想像すると恥ずかしくて仕方ない。


 一応女子用のスク水の方が男子用より露出度が低いことは間違いないのだが、つい最近まで男子だった人間が女子用スク水を着るというのは難しいにもほどがある。


 そして僕の恐れていた日はやってきた。プールの授業の日だ。


 プールの授業の前の休み時間に僕は更衣室へと向かう。


 更衣室では既に女子生徒が着替えていた。


 目の前で女子生徒が着ている服を全て脱ぎスク水へと着替える。


 僕は興奮のあまり鼻血が出そうになる勢いだ。


 そこに千歳もやってきて


「もう優希、鼻の下デレデレと伸ばしちゃって。変態だね」


 笑われた。


 仕方ないじゃないか。女の子の裸なんて見たことなかったんだから。


 僕も初女子用スク水へと着替えを済ませる。それにしても男子用に比べて着替えにくい。


 着替えが終わりプールサイドへ行くと


「うぉー!」


 男子たちは一斉に僕に注目し歓声を上げる。


 自分でこういうのもなんだが、スタイルは結構いい方だ。胸もでかい。男子に注目されるのも無理はないだろう。


 しかし恥ずかしくなった僕は自然と手で胸を隠すポーズになる。別に胸を露出しているわけでもないのに隠したい衝動に駆られるから不思議だ。


 そして男子たちの注目は千歳へと移る。また、女子たちの注目は亮介へと集まる。


 どちらも学校トップクラスの美男美女。みんながみんな気になるのだろう。


 僕も少し亮介のことが気になってしまう。亮介の引き締まった体に目を奪われる。今までそんなこと気にしたことなかったのに。


 また、千歳のスク水姿にも関心を引かれる。男子の時は遠くからしか見ることができなかったスク水姿の千歳が今目の前にいる。こんな間近で堂々と千歳のスク水姿を見ることができるということに少し他の男子への優越感を感じる。


 しばらくして先生がやってきて授業が始まる。


 授業が始まってしばらく特に僕の身に問題が起こることはなかったが、しばらくして事件が起こる。


 そう、トイレに行きたくなってしまった。


 僕は先生に断りを入れトイレへと向かう。


 そしてトイレに着いた時に疑問に思う。


 あれ?女子ってトイレの時水着全部脱ぐの?ズラすの?


 しばらく僕は悩んだが、結局全部脱ぐことにした。


 しかし後で千歳に聞いたら千歳はいつもズラしてトイレをしているらしい。


 女子としての生活をある程度シミュレーションしておかないといけないなと思わされたプールの授業だった。

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