第467話
「リガスッ!」
「ほっほっほ、お任せよ。カネル!」
私達を追って来ている数体のモンスター達を倒す為に、私と姉さん、リガスは行動する。
「アームズ……」
私は腕を強化し、小型に向かって拳を叩き込む。
「私が弱いからッ、アトス様は!」
これまでに無い程の感情を込めた拳は小型にめり込む。しかし、いくら感情を込めた所で、私だけの力では小型を倒す事は出来ず、足止め程度にしかならないだろう。
しかし、今はそれでいい!
「姉さん!」
「フィンフショットッ!」
姉さんの雷弾が小型に直撃し、貫通する。雷弾を受けた小型は暫くの間、痺れる様に巨体を痙攣させながら、倒れるのであった。
「さすが、姉さん」
「またまだ私は強くなるよッ! ならなきゃだよ!」
私もそうだが、姉さんもアトス様の一件で何やら思う事がある様だ。
「ほっほっほ。まぁまぁ、取り敢えず今は禁止区域から出る事だけに集中致しましょう」
「「うん!」」
それから、私達の事を追って来たモンスター達を少しずつ減らしていきながら、禁止区域を目指した。
私達が弱かったから、アトス様はあんな行動を取った……あの状況でアトス様が生き残る確率がどれくらいあるかなんて、子供でも判断出来るくらいの低さだろう……
「私は絶対強くなるッ」
その気持ちは、恐らく私だけでは無く、姉さん、リガスも同じだと思う。
「でも、今は目の前に集中!」
モンスターに追い掛けられながらも、着々と倒して行き、数を減らして行く。
そんな私達三人の鬼気迫る迫力にリザードマン達は驚いている様子である。
「す、すげぇ……」
「なんだよアレ……三人であんなにモンスターを倒せるものなのか?」
そんな、仲間の言葉に先生は応える。
「アトス様が、私達の為──いや、あの三人の為に囮になってくれたのだ……あの三人は絶対生き延びようと決意しているんだろう」
流石、先生だ……
「俺達も、踏ん張るぞッ。何としてでもこれ以上犠牲者を出さないで村に戻るぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
それから私、姉さん、リガスを中心に先生達も協力して禁止区域の入り口まで来た。
「あ、あそこ入り口じゃない?!」
姉さんの言葉に全員が前を向く。
「ふむ。どうやらそうらしいですな」
入り口が見えた際に、リザードマン達の表情が晴れるのを感じた。
だが、ある一人だけ全員が緩み切ったこの瞬間を狙っていた男が居たのだった。
「ヘヘッ、グイン悪いなッ!」
「──ッ!?」
なんと、先生が肩を貸していたトッポが先生を攻撃し、逃げ出したのだった。
トッポは先生の首に思いっきり手刀を打ち込んだ為、先生はバランスを崩して、転んでしまう。
「リガスッ!」
「お任せください」
私の指示にリガスは直ぐに先生を拾い上げる。
その間にもトッポは私達からどんどん離れていく。
「あははは、お前らは本当に頭がヨェーな!」
トッポの声に怒りを露わにするリザードマン達。
「俺はこのまま、逃げさせて貰うぜッ! このまま帰っても殺されるだけだからな、もう会う事も無いと思うが、またな、バカ共! あははは」
そう言って、トッポは更に移動速度を、上げようとするが一度だけ私達を見て呟く。
「アトスさんの事は残念だったな……」
それだけ言うと、禁止区域の入り口付近で私達とは違う方向に逃げていった。
その姿は、とても足を怪我した者とは思えない速さであった……
私達は私達で移動速度を緩めないまま、とうとう禁止区域を抜ける事に成功する。
「やったー! やっと抜けたよ……」
「ふむ。どうやら、推測通りこれ以上は追って来ない様ですぞ?」
リガスの言う通り、モンスター達はそれ以上追って来る様な事は無く、こちらの様子を暫く見た後に、禁止区域の奥に消えていった……
「チルちゃん、怪我は無い?」
「うん、大丈夫だよ。姉さんは?」
「私も、大丈夫」
「二人共、怪我が無い様で何よりですな」
リガスが怪我したか気になったが、そんな心配は杞憂だった。リガスは擦り傷一つ無い様に見える。
私は、二人が無事な事を確認してから、直ぐに先生達の様子も確認する。
「先生、お怪我はありませんか?」
「あぁ。私は大丈夫だ──少し、良いのを貰ったが今は問題ない。リガスさんありがとうございます、降ろして下さい」
ゆっくりとリガスが先生を下ろす。先生は直ぐに仲間達の様子を確認する。
「チル、他の者達も怪我はしたけど、命に別状は無い様だ」
「良かったです」
「全てはお前達のお陰だ……ありがとう」
「いえ、アトス様のお陰です……」
先生が、表情を曇らせ、言葉も詰まっている様だ。
「先生、トッポは?」
「あぁ……、まんまと騙されたよ……もうアイツには追い付けそうに無いな」
先生は何処かホッとした様な、そして悲しそうな表情を浮かべていた。
「もし……次に会った時は容赦し無い……」
そして、何かを心に決めた様に呟いた。
「先生……今は、村に帰る事だけ考えましょう」
「あぁ……そうだな……」
私達は、少しだけその場で息を整えた後に村に向かって歩き始める。
禁止区域を抜けた事に安心したのか、逃げている時は感じなかった疲れが帰還中にドッと体を襲った。
だが、今の精神状態を考えれば、この倦怠感漂う感覚は深く何かを考えないで済む為、私に取っては有り難いくらいだ。
それから、日が沈む前に村に戻る事が出来た、私達。
村に戻りトッポを逃してしまった事を伝えるが、そんな事より先生達が無事に戻った事が嬉しかった村人達は涙しながら先生達の帰還を喜んだのであった……
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