過酷な場所で生き抜く為に

第453話

「グインさん、モンスターがトッポ達を襲い始めたぞ？！」

　小さいモンスター達が解き放たれた様にして、各々人間達を襲い始める。

　人間十人に対して、モンスター達は倍以上居る。

「な、なにをやっているんだ……？」

　モンスター達に捕まえられ無い様にと人間達は逃げ惑う。しかし、小型達が円を描く様に取り囲んでいる為、逃げる場所は限られている。

「グインさん、トッポの奴、足を怪我しているから……」

「あぁ……恐らく最初に捕まるな」

　村を逃げ出す際に、仲間の何人かでトッポの足を負傷させた。その怪我が未だ治って無いのだろう、トッポは片足を引き摺りながら懸命にモンスター達から逃げている。

　トッポ自身も自身が一番不利な事を察しているのか、逃げるというよりかは隠れる様にして移動している。

　小さいモンスター達は、そこまで知能が無いのか、とにかく動く人間を追い回しており、ゆっくりと移動するトッポには興味が無い様だ。

「アッ……獣人族が……」

　仲間の一人から、漏れる声で気が付く。一人目の人間がモンスターに捕まった事を。

「や、やめてぐれー！」

　小さいモンスター達に一斉に取り囲まれながら叫ぶが、その悲鳴に反応する者は居ない。全員が、我が身を一番に考え逃げ惑っている為、当たり前か……

「あぁ……いて……よ……」

　捕まった獣人族はあっという間にモンスター達に食され、身体のあちこちが千切れている状況である。

　悲惨な姿に表情が歪むのを感じるが、他の場所ではゴブリン族がモンスターに捕まり、小さいモンスターに手足を千切られて食べられていた。

　そんな、残酷な様子を見ながら無意識に呟く。

「狩の練習か……」

「え？　グインさんどういう事だ？」

「恐らく、あぁやってモンスター達に狩のやり方を教えているんだろう」

　小型達が囲っている為、人間という獲物が逃げる事も無く、尚且つ小さいモンスター達に餌の狩り方も教える事が出来る。

「そ、そんな……ならアイツらが全員食われたら次は俺達が狩られるのか？！」

「恐らく……そうだろう。次は別の列の奴らに……」

　視線を動かすと待機しているモンスター達はまだまだ多い。

「い、嫌だ……モンスターなんかに食われたくねぇ……よ……」

　村では屈指の戦士が身体を震わせる。

　そんな時、タイミング悪く、トッポ達のグループに居る誰かの片腕が近くまで飛んで来て、地面に落ちる。

　その様子を見て、より一層身体を震わせる仲間達。

　本当に……不味い状況だ……。なんとしてでも、ここから抜け出したいが、逃げる場所が無い。

　そんな事を考えながら、トッポ達の様子を見ていると、また一人の人間が小さいモンスター達に追われていた。

「だれがーだずげてぐれ！！」

　肩で息をしながら、必死に助けを求める人間に、手を貸す者は居ない。

「はぁはぁ……やだヤダやだ、死にたくねぇ……はぁはぁ……」

　小型達の囲みはかなり広めに作っている為、逃げるスペースは十分にあるが、それでも体力の方が持たないのか、見る見る逃げるスピードが落ちているのが分かる。

　そして、とうとうモンスターに捕まり、また一人モンスター達に弄ばれる様にして食べられてしまう。

　そして、モンスター達が人間の一部を食べる度に、食べたモンスター達の気配が協力になるのを感じる。

「グ、グインさん……俺達はどうすればいい……」

　何かしらの言葉を掛けて安心させてやりたいが、一体何を言ってやればいい？

　すると、とうとうモンスター達の狩の対象は残り一人となる──トッポだ……

「はぁはぁ、ちきしょう！　誰か助けてくれー！！」

　片足を引き摺りながらも、全力で逃げるトッポを追いかけ回すモンスター達。

　小さいモンスター達からしたら、狩の練習というよりかは、食事と遊びの一環だと言う認識が強いのかもしれない。

　トッポに追い付いたモンスター達はいつまで経っても、トッポを食べようとはせずにもて遊ぶ。

　そんなトッポが偶然、俺達の方に向いた。

「グ、グイン！？」

　まさか、俺達がこの場に居るとは思わなかったのだろう……トッポは驚いた表情を浮かべる──そして、直ぐに大声でこちらに呼びかけて来た。

「グ、グイン！　助けてくれ！！」

　トッポは恥も外聞も無く助けを求めて来るが、仲間達は、それを許さない。

「ふさげんな！　お前のせいで一体何人の同胞が死んだと思っている！」

「そうだ！　お前なんて食われちまえ！」

「そ、そんな事、言わないでくれ！」

　叫びながらも必死に足を動かし続ける。

「グ、グイン……俺達親友だろ？！」

「ハッ！　グインさんとお前が親友だったのは昔の話だろ、図々しい奴め！」

　トッポが必死に逃げ惑っている。逃げると言っても、既に捕まっている様なものだろう。

　しかし、トッポは必死に生きようと抗っている……

　そして、俺は何故か分からないが無意識に足が動いていたのであった……