第345話
「あ? なんだ、この光は……」
バンゴは先程のシャレ達に攻撃が効かない事や、目の前で広がっている光に理解が追いついていない様だ。
「──うぉ!? 光が白から青になったぞ?」
シャレ達やバンゴの足元にある光が青色に変わる。
「メンドクセェ! なんだか知らねぇーが、後で考える!」
考える事を放棄したバンゴは直ぐ様、スキルを発動して再び、剣を振り回す。
しかし、バンゴは思い知る……既に、地面を照らす光が青色になっている時点で勝てる見込みが無くなった事に……
「オメェら、もうメンドクセェから死ねや!」
今までとは、比べ物にならない程、強力な一撃をシャレ達に連続でかました。
自身の動きを知り尽くした移動方法で一瞬にして三人に対してそれぞれ、強烈な斬撃を喰らわす。
「はは……アトスの奴……一体何したんだ……?」
強烈な一撃を食らった筈なのに、シャレ達はダメージを負って、いなかった。
「これも、アトス様の力なのですか……?」
多少の痛みや衝撃があるもの、バンゴの一撃で倒れる様な事は無い様だ。
「あの方は、こんなに凄い方だったんですね……」
トラクはバンゴに斬り付けられ所を確認するが、肌が少し赤くなっている程度であった。
そして、なんと言っても、一番驚いているのは、攻撃をしたバンゴである。
「な、なんなんだよ……?」
ここに来て、初めてバンゴの表情に変化が見えた。
先程までは火傷した顔で、常に二ヘラと笑いながら、飄々としている様子であったが、今は理解の範疇を、超えている出来事が目の前で起きているせいか、余裕が剥がれ落ちた様だ。
「い、意味わからねぇ……よ。なんでコイツらが斬れねえんだよ……?」
ブツブツと悩みを口にしながらも、バンゴは足を止めず、シャレ達を次々と攻撃し続けていた。
「──ッ腕! ……ダメか」
バンゴはシャレの腕を斬り落とす気持ちで攻撃するが、効かない様子だ。
「──ッ足! ……コレもダメか」
シャレの隣にいるトラクの足を斬り裂く様にして剣を振るったが、出来ない。
「──ッ首! ッチ、どうなってやがる!?」
その後も、人間の急所を狙い続けるが、三人にダメージが入る事は無かった。
自分達がバンゴの攻撃を喰らわない事に気が付いた三人は防御を捨てて、ひたすらバンゴに向かって攻撃する。
「ンなもん、当たるかよッ!」
トラクとニネットの攻撃だけでは無く。
相当な実力を持つシャレの攻撃でさえ、バンゴを捉える事は出来ない。
「化け物め……」
「何言ってやがる、俺の攻撃が一切効かない、お前達の方がよっぽど化け物だろ」
何故、この様な事が起きているかは分からないが、この現象を起こした人間に心当たりがある三人は不敵に笑う。
「はは、我々の様な天使を化け物とは失礼するな」
「はい。この者は愚か者です──シャレ様は化け物では無く女神様です」
「あはは、ニネットさんって面白いね」
ダメージが喰らわない為、余裕が生まれたのか、三人の表情は柔らかい。
「──ソラッ!」
大鎌を素早く振るい先程の仕返しだと言わんばかりに連続してバンゴに攻撃する。
「サポートはお任せよ」
「まかせてシャレちゃん!」
二人はシャレを常にサポートする形を保ち、バンゴが逃げようとする前に、逃げられ無いように先回りして塞がったり、攻撃したりする。
攻撃自体はバンゴに当たる事は無いが、先程と違うのは、攻撃を全て避けるのでは無く、攻撃を受け止めて来る様になった。
三人は防御を一切捨てて、攻撃を当てる事に専念している。
防御する必要が無い分、無駄な動きが削られ、バンゴがシャレ達の攻撃を避けられ無くなってきている様だ。
「バンゴとか言ったか? 随分と静かになった様だが、どうかしたか?」
「ッチ……」
シャレの挑発と取れる言葉に、舌打ちをして、苦々しい表情を作るバンゴ。
そして、この現象はシャレ達だけでは無く、色々な箇所で巻き起こっており、人間族達は次々と倒されていく。
「──クソ……ここまでだな……」
バンゴは周囲の様子を確認し、一度シャレ達から距離を取る。
「お前らッ! 退却するぞ」
周りにいる仲間達に大声で退却指示を出すバンゴ。
いきなり、自分達の攻撃が効かなくなった事に動揺している人間族は直ぐ様頷き、我先にと侵入して来た門から一斉に退却するのであった。
「──ッ逃げる気か!?」
シャレの問いに、バンゴが振り向く。
「あぁ、なんか知らねぇーが、このままじゃ勝てねぇーしな」
「逃すと思っているのか?」
「──ッハン! よく言うぜ、そんな身体で追って来られるなら来てみろ」
シャレも、今の身体では追えない事が分かっている為、苦虫を噛む様な表情で、ただ見送るしか無かった……
「エルフ達よ、この仮は絶対返すぜ?」
「それは、こっちのセリフだ……」
「はは、そりゃ楽しみだ──あばよ」
ニヤリと笑みをこぼしたバンゴは一瞬にして門まで移動し、見えなくなる……
「シャレちゃん大丈夫?」
「シャレ様、早く手当てを……」
二人の心配そうかなおでん見ているが、シャレは首を振る。
「まだ、休み分けに行かない──皆んなを助けに行くぞ。休むのはそれからだ」
こうして、シャレ達は仲間を助けるた為に、その場を移動するのであった。
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