第343話

「アタック!」


 俺は次々とサポート掛けていく。


 ドワーフの案で、燃えている木々を切り倒す事にした俺達。


 人数が多い為、一方の方向だけでは無く、四方に広がる様に木々を倒していく。


「こりゃすげぇ……」


 炎弾の攻撃にて木々がかなり燃え、サポート有りとは言え、一振りで木が倒れていく様は圧感だ。

 視界はみるみる広がっていく。


 そして、次々と戦闘中の仲間達が見える様になり、俺はその度にスキルを発動してサポートをする。


 俺のサポートがあれば敵との戦いで優位に進める事が出来る為、次々と木々を切り倒す要員が増えていく。


 そして、とうとう見知った顔の仲間達までもが視界に収まる様になった。


「シャレ! トラク! 二ネット!」


 三人は、一人の人間族の男に手も足も出ずに攻撃されていた。


「ガード!」


 俺は、慌ててサポートをする。


 そして、更にもう一方では……


「キル!?」


 ゴブリン達の集団に囲まれて、正に絶体絶命の危機に陥っている所であった。


「ガード!」


 そして、心配していたチルとリガス達も視認する事が出来た……


 リガスは何体かのオークを相手にしているが、問題は無さそうである。


 しかし、チルは一際大きいオーガ相手に一方的に攻撃されていた。


「ガード!」


 最後に、ロピと炎弾の戦いまでもが木々を倒した事により目視出来る様になった……


「おいおい、どんな戦いだよ一体……」


 そこは、想像を超えていた。


 ロピの攻撃と炎弾の攻撃が激突する度に大爆発が起きていた。


 周りに飛び散った炎弾の残骸が木々に火を付けていた。


「なるほど、ロピはこうやってたのか……」


 なんと、ロピは炎弾相手に一歩も引けを取っていない。


「ロピの方は、まだ大丈夫そうだな」


 ロピと炎弾の戦いからは、一度視線を外し、最もピンチそうである、シャレやギル、チル達に集中する……


 しかし、次々と問題が起きる。


 視野が広がり、今までよりもサポートする対象が増えて、状況は少しずつ改善して行くのが分かる。


 だが、結局の所、焼け石に水であり人数が多過ぎる為、サポートし切れないでいる。


「あまりにも多過ぎてサポートが間に合わねぇ!」


 やはり、俺一人では、十人、百人、千人とバラバラな場所で戦闘している仲間をサポートし切れない。


 それに、向こうはまだ、炎弾の後ろに控えている兵士達までいる。


「これじゃ、時間稼ぎにしかならねぇ……」


 相手の主要人物には、それぞれ強い者が相手をしているが、それもいつまで保つか分からない……


「な、何か他に良い手が無いのか……?」


 俺は頭を捻るが、やはり直ぐには打開策など思い浮かぶ訳も無く……


「やっぱり、成功させるしかねぇーのか?」


 先程、ベルグングサークルを発動させて、重ねる様にして発動させたが、失敗した。


 円の中に線を入れるだけじゃ、ダメなのか……?


 サポートをしながらも、何が足りないのか考えていると、ふとある物が目に映った。


 それは、仲間達が倒した木々である。


「──ッ!?」


 その木々は偶然だろうが、円を描く様に倒れていた。


「これだ……」


 更に、円の中に木が三角形を描く様に倒れていた……


「線と円の組み合わせ……」


 俺は、偶然得たヒントを元に、もう一度だけ、試してみようと決意する。


「これで、失敗したら、もう打つ手ねぇーぞ」


 俺は一度、周りを確認する。


「──ッみんな!」


 そして、精一杯の大声で叫ぶ。


「暫くの間、サポートが出来なくなる──だから耐えてくれ!」


 いきなり、大声を出した事に、敵側の注目を浴びてしまう。


 しかし、俺の言っている意味は良く分からない様だ。

 逆に仲間達は俺の言った意味をシッカリと把握した様子だ。


「──分かった! 何やるか知らねぇーが、こっちは任せろ!」


 ドワーフは返事と共に、周りに居る仲間達にも状況を伝える様に叫ぶ。


「隻腕のサポートが暫く切れる! お前ら集中しろ!!」


 ドワーフの言葉を聞き、また他の者達が遠くの仲間達に伝え、まるで伝言ゲームの様に広がった。


「へへ、おい、何か知らねぇーが、あの同族は他種族側に付いているから敵だよな?」

「あぁ、殺すぞ」


 注目を浴びた事により敵が集まって来てしまう。


 しかし……


「我々は隻腕を守るぞ!」

「「「「「「はい!!」」」」」」


 俺の事を毛嫌いしているエルフ達が俺を守る様にグルリと一周する様に囲む。


「……隻腕よ……」

「な、なんだ?」

「この状況を打破出来るのか……?」


 エルフが俺に問いかける。


「分からねぇ……だけど、絶対なんとかしてやる……」


 その言葉はエルフに向けたものなのか、自分自身に向けたものなのか、俺も分からない……


「……フッ、全く……人間族を守る日が来るなんてな……」


 エルフは周りから集まって来た敵達を迎撃する為に武器を構える。


「ここは、私達に任せて、お前は、やろうとしている事に集中しろ!」

「あぁ……頼む」


 俺は、仲間達を信じて集中力を高める。


 集中……集中……集中……


 頭の中で円を描く、そして描いたものを具現化する様なイメージで唱える。


「ベルグングサークル……」


 すると、白く光る円が地面に現れる。


 その白い円は波紋が広がる様に、どんどんと広がっていき、遂には仲間達全員を包み込むと、広がりが止まる。


 ここからだな……頼むぞ……


 俺は白く光る円を見て口を開く。


「一角!」


 すると、白く広がる線が円の中に描かれた。


「二角!」


 一本目の線から伸びる様にして白い線が円に中に再び描かれる。


「三角!」


 二本目の線から更に一本の白く光る線が伸びた……


 円の中には綺麗な三角形が描かれる。


「皆を厄災から守護せよ……」


 その言葉を唱えた瞬間に、白い光は青い光に変化した……

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