第320話
「みんなー早く登って来なよー!」
矢倉に手を掛けて登ろうとすると、既に上に登り切ったロピが手を振りながらこちらに声を掛けて来た。
け、結構高いな……
最初はスイスイと登っていたが、最後まで登りきると、かなりの高さがあり少しビビってしまう。
「高いよねー」
「あ、あぁ……落ちたら死ぬな……」
矢倉から今登り切った木の梯子を見て、身体がブルリと一度震えた。
それから、俺に続く様にチルとリガスが矢倉に登り切った。
「とても、高いです」
「ふむ。ドワーフ族は、やはり凄い技能を持っておりますな」
俺達は、矢倉からの風景を見る。
矢倉より高い建物は無い──だが、ジャングルに生えている木は矢倉よりも高い木がそこら辺にある為、結構、死角になっている部分がある。
「お兄さんアレ見て、凄い人数だよ」
ロピはジャングルに向かって指を指す。
そこには、人影がズラリといた。
恐らく木で見えないが他にも、沢山の人間族が居るだろう。
視界が悪過ぎるな……
木があちこちに生えている為、視界が、かなり悪い。
「スキル使い辛そうだな……」
「ふむ、確かに。この人数でこそアトス殿のスキル効果が生きるのは確かですが、あまりにも視界が悪いですな」
俺のスキルは仲間の動きを先読みして、発動させるものである。
だが、この矢倉から見える範囲は確かに地上に居る時より全体を見渡せるが、高い位置にいる為、木で人が見えない状態でもある。
「あはは、お兄さんなら大丈夫だよ!」
「簡単に言ってくれるぜ……」
今までの戦闘ではサポートする為の仲間の人数が少なかった。
一番多い時でさえ、変異型との共闘した時の戦いだな──その時はまだなんとかなったが、今回はその比じゃ無いくらいの人数が仲間側に居る。
少し開けた場所なども有るが、この人数では余り意味をなさないだろう。
俺が、どの様にして皆んなをサポートするか考えていると……
「ふむ。そろそろですかな」
リガスが人間族の方を見ながら呟く。
「分かるのか?」
「ほっほっほ。伊達に長く生きてませんからな──向こうの雰囲気が少し変わったのを感じませんかな?」
リガスの言葉に俺達は相手に意識を集中する。
……全然分からないだが?
ロピも同じなのか、唸りながら相手を見ている。
「むむむ……ダメだー! 全然分からないよー」
「ほっほっほ。いずれロピ殿もわかりますよ」
リガスが笑っていると、隣に居たチルが呟く。
「リガス、私は分かる」
「ふむ。流石私のご主人様ですな」
リガスの言葉に少し誇らしげに頷くチル。
「一緒の環境で生きてきたのに、なんでこうも妹と違うのかな?」
ロピがチルを見ながら俺にだけ聞こえる様に質問する。
「うーん、どうなんだろうな」
「前は、あんなに弱々しかったのに、今では逞しくて私は嬉しいやら寂しいやら……」
何故かココに来ていきなり感傷的になるロピ。
「まぁ、ロピの妹は成長したのさ」
「うん、そうだね!」
そして、こちらの仲間達が全員配置に付いたくらいに、チルとリガスが何かを感じ取った。
「「──ッ!?」」
いきなり凄い形相になった二人。
「アトス様──来ます!!」
チルの言葉に何が? と聞き返そうと口を開くが、その前に視界の端から何かが飛んで来るのが見え、そちらに意識を向け、俺は驚愕する。
「──ッなんだ、アレ!?」
なんと、こちらに木が一本丸ごとコチラに向かって飛んで来ているのである──それも燃えながら。
「あわわわわわ──ど、どうするの?!」
ロピはオロオロしながら、コチラに飛んで来る木を見る。
そして、その木は防壁に当たり爆散した……
とても大きい音が鳴ったと思ったら、辺りに火が飛び散った。
凄い火力だったのか、木が直撃した防壁は当たった部分だけ焦げていたのだ、
「な、なんだ?! 何が起きた!」
俺は、いきなりの出来事に動揺している。
「あの木、なんなんだよ!?」
「も、燃えてたよね……?」
「凄いスピードでコチラに向かってきました」
「ふむ。威力も相当ですな──直撃した防壁部分が凹んでおりますぞ?」
全員がそれぞれ素直な感想を溢すが、何故燃えている木がコチラに飛んで来たのか分かる者が居なかった。
しかし、矢倉の下ではある言葉が何度も何度も呟かれていた。
その言葉を聞いて何故この様な事が起きているか俺達は納得する。
そして、俺も無意識にその言葉を呟く。
「これが炎弾の実力……
」
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