第181話 シャレの再参加

 トラクと会ってから、あっという間に6日間が経過した。


「ん……?」


 朝日を顔に浴びて私は目を覚ます。昨日はトラクが私の武器を作るのにギリギリまで作業をしていたが、どうやら私は寝てしまったらしい。


「シャレちゃん、おはよう」


 トラクは徹夜で作業を続けていたのだろう目をギラギラさせていた。


「ずっと作業していたのか?」

「そうだよ。でも武器が完成したよ」


 そう言って、トラクが持って来たのは私の為に作ってくれた大鎌だった。

 大きさや形は以前と同じだが、一つ違う点があった。


「赤い……」

「そうなの。これは私がいつかシャレちゃんの為にと思っていた素材で作ったの」


 その大鎌は持ち手は黒いのだが刃の部分が真っ赤に染まっていて不気味な存在感を醸し出している……。


「凄い色だな……」

「だね。私も加工するまで、どんな色が付くか分からなかったよ」

「それにしても、これは異様な雰囲気を出しているな……」

「ハクが付いていいね」


 トラクは屈託の無い笑顔で言ってきた。


「それとね、今回の材料で作った結果、その武器に付いた効果は切れ味だったよ」

「切れ味?」


 どうやら、トラクの話によると珍しい素材を使用した武器には付随効果が付くらしく、その効果は武器が出来上がるまで分からないらしい。


「今回付随した切れ味は良くある効果だけど汎用性抜群だよ」


 私は早朝の為人通りの無い道まで歩き、大鎌を振り、一通りしてみる。


「おー、カッコいい」

「うん、流石トラクだ。前よりしっくりくる」


 私が自作した大鎌とは大違いだ。


「これで前より戦えそう?」

「あぁ。バッチリだ」


 それから、旅の準備を終えた私達は前回同様、集合場所である村の入り口に着く。

 そこには驚く事に前と同じく百人くらいの参加者が集まっていた。


「凄い人数だね……」


 前回は観に来なかったトラクは参加人数の多さに驚いているらしい。私は私で、あんなに犠牲者が出たと言うのに、こんなに人数が集まった事に驚いているが、どうせリンクスが又宝箱で釣ったのは容易に想像が出来る。


「シャレ様、よろしいでしょうか?」


 私の側近が声を掛けてくる。


「なんだ?」


 要件は大体予想が出来る……。


「やはり、シャレ様一人で参加するのは納得出来ません、私達も付いていきます」


 やはりか……。


「この前も言ったが、これは決定事項だ。今回は私一人で参加する」

「し、しかし」


 私の唐突な提案に最初、側近達は猛反対したが、私の独断と立場を使い黙らせた。だが、当日になって再度抗議しに来た訳か……。


「シャレ様がお強いのは分かりますが、それでも心配でなりません」


 私の身を案じているのが分かるだけに申し訳ない気持ちになるが私自身、これ以上同族から犠牲者を出したく無い為側近達には悪いが今回はワガママを言わせて貰おう。


 私の意思が変わらないと知り、せめてコレだけは持って行ってくれと色々詰められた鞄を持たされた。


「あはは、シャレちゃん大事にされているね」

「有り難い事だが、少し過保護過ぎる」


 出発直前に最期の挨拶をトラクと済ませていると、トラクも私に渡す物があると言う。


「これは?」

「これを渡して欲しい人がいるの」

「誰にだ?」

「雷弾に……」


 そう言うとトラクは経緯を話してくれる。どうやら雷弾がトラクに武器の作製をお願いしたらしく、前の遠征では間に合わなかったが、その後に完成したものらしい。


「だが、雷弾達は前回の遠征時に……」

「うん、それも噂で知っているけど、私はどうもあの人達が死ぬとは思えないんだ」


 トラクは何を思い出したのか可笑しそうに笑う。


「ムッ」

「あはは、シャレちゃん嫉妬しない嫉妬しない」


 トラクがあまりにも良い笑顔で笑う為私は悔しかったのか、どうやら表情に出ていたらしい。


「もし、雷弾が死んでいたら、その武器は捨てていいから……」

「分かった。もし、生きていたら絶対に渡そう」


 私はトラクからメモとヘンテコな形をした武器を受け取りカバンの中に入れた。


「シャレちゃん無事に帰ってきてね?」

「あぁ……」


 二人はしばらくの間抱き合い離れる。


 すると、前回同様副官が大きな声で参加者に呼び掛けてくる。


「勇敢なる戦士達よ! 今回の遠征にコレだけの人数が集まった事に感謝する」


 参加者達を見回すと、今回も様々な種族が参加していた。


「前回の遠征は惜しくも後少しの所で撤退する羽目になった……」


 ウソつけ……


「大きな損害が出たが、その分情報という武器を我々は手に入れた!」


 物は言い様だな……


「そして、今回は前回よりも更に強者が集まってくれたので、必ず遠征は成功するだろう!」


 副官の演説に参加者達の士気が上がる。


「それでは、出発する!」


 このまま三~四日間を掛けて目的地に向かう。


 副官が言っていた参加者達の事だが、確かに強者も沢山参加してはいるが、前回みたいに突出した強者は今回参加していない。


 せめて、鉄壁、剛腕、雷弾が居れば違ったんだがな……。

 トラクには悪いが雷弾達は既に死んでいるだろう。


「後は如何にして生き残るかが問題だな……」

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