第150話 ロピの必殺技 2
「まずは、アイツの回転を止めるぞ!」
「はい!!」
俺とチルは走り出す。だが身体能力の差でチルが前に出てしまう。
「チル、今から速さのサポートを掛ける」
「分かりました!」
今まで、あまりにも使い辛かったので使用するのを控えていたが、ただ突っ込むだけなら使用しても問題無い……だろう……。
俺はチルと小型までの道を先読みして黄色のラインを敷く。
「スピード!!」
黄色のライン上を駆け抜けるチル。その速さは今までの倍以上だ。
「さすがアトス様です。この勢いなら」
チルは盾を構えながら呟く。
「アームズ……」
チルの腕が微かに輝く。そしてチルは小型に向かって思いっきり盾で殴りつけたのだ。
「止まれ!!」
小型と盾がぶつかり合い回転が止まった。
「良くやった、チル!」
「いえ、まだです!」
小型は直ぐに尻尾による攻撃を始める。それを俺は勢いがつく前に他の者同様特攻する。
「オラッ!!」
他の者達みたいに鍛え抜かれていない身体の為、勢いが付いていない攻撃だとしてもとんでもない衝撃が身体を突き抜けた。
「アトス様!」
「だ、大丈夫だ! 三撃目来るぞ!」
小型は尻尾で俺を吹き飛ばしチルに攻撃をする。
「ガード!」
三撃目の攻撃をなんとか耐えたチルだが直ぐに四撃目が襲ってる。
「チル、もう一発くるぞ!」
「はい!」
四撃目の攻撃が俺とチルを襲い、吹き飛ばされた。
「いってぇ……ハハッ……四発分時間を稼いでやったぜ……」
小型の攻撃で意識が朦朧とするが、ロピのカウントを聞いて今の特攻が無駄ではない事を悟る。
「7……」
後三秒か……。
「リガス、後は頼んだぜ……」
最後の砦である防御のスペシャリストに託す。
「ほっほっほ。お任せ下さい」
いつも通り飄々として受け答えるリガスであったが、何故かリガスの盾が輝いていた。
「ふむ。なるほど……」
一人で納得し頷いている。
「どうやら、第二の盾をお見せ出来そうですね」
なんとこの土壇場でリガスは自身の新しい技を身に付けたらしい……。
「それではロピ殿行ってまいります」
「8……」
リガスはカウントを聴くと小型に向かい特攻する。これが本当の最後の特攻になる。
小型は最後の邪魔者を排除しようと走り出す。
「虫風情が散々手間を掛けさせてくれましたな」
リガスは大盾を構える。
「お前のせいでどれ程犠牲が出たか知らんがチル様に攻撃した事だけは許さん」
小型はリガスに向かって頭から突っ込んでいく。リガスは盾を地面に突き刺し唱える。
「カネル!!」
リガスが一撃を抑えている間に更にロピのカウントが一秒経過する。
「9……」
残り一秒だ。だがこの一秒が長い……。
リガスは小型による攻撃を受け切ったが、先程までは二撃目を防ぐ手段が無かった。
その為、小型はロピを巻き込む形で二撃目の攻撃をすれば、今ロピが数えているカウントは止まるだろう……。
そして小型は既に尻尾による二撃目の攻撃に移っている。
「ふむ。ならば第二の盾を見せてやろう」
攻撃が直ぐ目の前に迫ってきているというのにリガスは一切焦った様子が無い。
そして唱える……。
「第二の盾……オーハン!!」
微かに輝いていた大盾の光が一瞬強くなり、小型を遠くに吹き飛ばしたのである……。
はぁ……?
俺が見た光景は異常であった。六度も成長した小型は普通よりも全然大きい体格をしていた。その巨体がリガスの新しいスキルにより吹き飛んだのだ……。
「ほっほっほ。便利なスキルですな」
リガスは吹き飛んだ小型を見ながら笑っている。小型はダメージが無いのか直ぐに起き上がりロピの方に向かって走り出すがもう遅いのである。
「それではロピ殿、後はお任せします」
「10……。うん任せて……」
ロピが持っている小石は目視出来るほどに電気が放電しており、音もバチバチと煩いくらい聞こえる。
そしてロピは唱える……
「──ツェーンショット!!」
ロピの撃った雷弾はとんでもなく大きい音を立てながら小型に向かって飛んでいく。俺は動かない身体に鞭を打ち最後の力を振り絞る。
「アタック……」
雷弾の斜線上に赤ラインを敷く。すると雷弾はより一層大きい音を立て周りの音すら吸収しているかの如くバチバチと音を鳴らしている。
そして小型に当たった……。
信じられない事に、この場の誰もが成長した小型の外皮には傷をつけられなかったのに、ロピの撃った雷弾は小型の身体を貫通し突き抜けたのである。
そして貫通しただけでは無く小型に当たった瞬間小石に帯電していた電気が小型を包み込む様に放電し続けて内部からも外部からも焦がしたのである。
「す、すげ……」
威力もそうだが、驚きべく事は貫通力だろう。
あの外皮を突き破る貫通力って、どんだけだよ……
あまりの威力に若干引いていると、小型は耐え切れなくなったのか勢いよく地面に倒れ動かなくなった……。
それを見ていた他の者達は最初、実感が無かったのか静まり返っていた。しかし徐々に現実に意識を戻していき、一人をキッカケに喜びの声が次々と上がっていく。
「よっしゃーーーー!」
「すげーよ! あの小型を一撃で倒したのか?!」
「あぁ! 俺は見ていたがあの獣人の嬢ちゃんが一撃であの小型を倒したぞ」
「やべぇ……な……」
商人達も冒険者達も倒したと実感が湧く。
そして俺自身は安堵したのか、その場で気絶するのだった……。
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