第144話 反撃開始 2

 イケメンの方にガルルとググガ達が向かう。


「兄貴、アトスが言っていたが人間族ではアイツみたいなのがカッコいいのか?」

「俺には分からん……」


 十人程でイケメンの所に到着した。


「ふふ、なーにこの醜い人達は?」

「ッケ、これだから人間族は嫌だぜ」

「ググガ、俺達はあの男の方に行くぞ」


 他の商人達には後衛で攻撃する様に言い、ガルル達はイケメンの方に走り寄る。そして後衛では……。


「あなた達が助っ人?」

「そうだ」


 イケメンパーティの一番歳上である女性が商人達に確認をする。


「私らの邪魔はすんなよ?」

「あん!?」


 そして口調の悪い女性が言った言葉で商人達の表情が険しくなる。


「アナタ達、喧嘩腰は止めて下さい」

「みんな仲良くしよ」


 やはり人間族と獣人族で多少いざこざがあるのか纏りが見られない。だが戦闘には慣れているのか弓を構える者、サポートに回りポーションの用意をする者など自分のやるべき事が分かっているのか、テキパキと動いている。


 そしてガルル達もイケメンと合流する。


「おいイケメン助けに来たぜ」

「ぼ、僕はそんな名前じゃない!」

「お前の名前なんてどうでもいい」

「な、なんだと……?」

「はは、流石兄貴だぜ!」


 三人の事を小型が攻撃する。イケメンは難なく避け、獣人の兄弟は危なげに避ける。


 それを見たイケメンは……。


「君達、はっきり言って助けにならないよ」


 ガルルとググガの二人が前衛に合流した事により、イケメンは若干やりづらそうである。


 しかしイケメンは引き続き小型を惹きつける。そして後衛である者達の攻撃が開始される。弓を構えている者は十人以上だ。


「アタック!」


 次々小型に弓が突き刺さる。弓が身体に刺さる度に小型は動きが鈍くなる。


「ふふ、もう一度行くわよ」

「ババァが指図してんじゃねぇーよ」

「懲りないですね……」

「ケンカする程仲が良い」


 再度小型に十以上の矢が降り注ぎ、更に小型の動きが鈍くなる。順調そうに見えるが、問題が一つあるのを本人以外誰も分からないでいた……。


「はぁはぁ、流石に成長した小型だね……」


 そうイケメンの体力が限界に近い事だ。いつもの小型と違い、今回は二人を捕食し成長している為今までとは比較にならない程のプレッシャーがイケメンに降りかかっている。


 周りからは難なく避けている様に見えるが当の本人は避ける度に精神をすり減らしている。そして疲労が溜まりイケメンの舞が崩れているのがここからなら、よく分かる。


「イケメンの奴ヤバそうだな……」


 イケメンはひたすらに避け続ける。


「僕が倒れて小型を通したらレディー達に魔の手が……。それだけは許せない」


 だが、やはり長くは保たなかった。小型はまず突進を仕掛ける。案の定イケメンは避けるが、更に連続で尻尾の攻撃をされる。これも何とか避けたが、小型はもう一度攻撃し、イケメンを捉えるのであった……。


「──ヴッ!?」


 なんとかガードのサポートを入れたが、元々耐久力は無いのか立ち上がれないでいる様だ。


「た、立たないと……レディー達が」


 そして小型はイケメンの方では無く後衛で固まっている人間達に標的を変えた。


「ま、まずいわね……」

「アイツが狙われないのは良いが、こっちに向かって来ているぞ?」

「ど、どうします?」

「攻撃あるのみ……」


 後衛は一斉に弓を撃ち続けるが小型の行進は止まらない。弓攻撃自体のダメージは有り最初に比べて動きは鈍くなっているし、矢が刺さり過ぎていてハリネズミみたいになっているが、まだ倒れる気配は無さそうだ。


「普通これだけ矢が刺さっていたら倒れる筈だろ?!」

「全然止まらねぇーぞ!?」


 商人達の焦りの声が鳴り響き、波紋を打つ様に回りの者達に不安が広げる。


 そこに二人の獣人が小型に攻撃を放つ。


「俺達を忘れるなよな!」

「虫に言っても分からんだろ……」


 一度後衛達に向かって走り始めた小型だったが、二人の攻撃のお陰で今は、ガルル達の方に惹きつけられ、攻撃を開始した。


 そして俺は先程のガルル達の攻撃にサポートの手が回らなかった事に焦りを覚えている。


 や、やべぇ。ロピ達の所とガルル達の所を同時にサポートするの難し過ぎるだろ!? 

 現状、ロピ達の所は芳しく無い。リガスが工夫しながら、なんとか小型の攻撃を防いでいるが攻撃の方が通らないでいる。出来る事ならガルル達の方を早く倒して全員で挑みたいと思っているが、二パーティ同時にサポートするのがここまで難しいとは思わなかった。


「集中しろ……。もっと視野を広げろ」


 自分に言い聞かす様に呟き、俺は視野を広げて戦場に集中する。


「兄貴、いくら俺らでもコイツの一撃を貰ったら動けなくなるぜ?」

「そしたら、もう一方がフォローするしかあるまい」


 ガルル達は小型を惹きつけているが、やはり本職では無い為どこかぎこちなく、危ない。だがそれをお互いカバーしているので、なんとかなってはいる。


 その間に後衛に居た商人がイケメンの所まで行きポーションで回復をしていた。


「ポーションを使うのは初めてだけど、凄い……」

「へへ、これは金持ちと俺ら商人の特権だな」

「助けて頂きありがとうございます」

「そんな事よりガルル達を助けてやってくれ」

「はい!」


 イケメンは走り出しガルル達に合流する。


「君たち、済まない」

「お前役に立たないから寝てていいぞ」

「むっ。さ、さっきの仕返しのつもりかい?」


 ググガの言葉にムカついたのか、イケメンはモンスターに対して攻撃を行い、自身に注意を再度惹きつけた。


「君達はムカつくが僕を助けてくれた。礼を言う、ありがとう」

「お前の為じゃない俺らの大切な人の為だ勘違いするな」

「兄貴の言う通りだな」

「き、君達はとことんイラつかせるな! だが今は言い争っている場合では無いし先程の攻撃を見せて貰ったが、トドメはどうやら君達が刺さないと、あの小型は止まらない様だ……」


 イケメンが獣人二人に言う。


「どういう意味だ?」

「矢の攻撃は確かに効いているが、どうやら決定打にはなっていない」

「あんだけ、刺さっているのにな!」

「だが、かなり弱っているのも確かだ。なので君達二人が威力の高い攻撃を小型にするんだ。注意は僕が惹きつけるから任せろ!」


 そう言い残しイケメンは舞を始めて小型を惹きつけるのであった。


 

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