第143話 反撃開始!

 三体の中で一番強い小型が動き出す。向かう先は商人達が居るパーティの方だ。だがコイツはロピ達に任せている。


「ほっほっほ。さてお二人共準備は宜しいですか?」

「大丈夫だよー」

「もちろん」


 まずリガスが前に出た。それに合わせて小型も動き出すが驚愕する出来事が起きる……。


「早い!?」

「ガード!」


 今まで聞いた事の無いリガスの慌てた声が聞こえ吹っ飛ばされるのが見えた。俺は咄嗟にリガスの下に青いラインを敷いた。


 何故そこまで慌てたかと言うと小型の移動スピードだった。とにかく初動が早かった。俺達が今まで対峙した小型は最初の動き出しは遅く徐々にスピードを上げていくものだったかコイツは違った。最初から限界の速さで移動して来たのだ。


「魔族さん!?」

「リガス!?」


 小型による突進を直撃したリガスは吹っ飛ばされたが直ぐに立ち上がった。


「ふぅ……。アトス殿助かりました」

「リガス大丈夫?」

「えぇ。少し油断しましたな」

「五人も捕食するとあそこまで強くなるのー?!」

「どうやら更に気を引き締めないと我々も全滅しますぞ……」


 三人は直ぐにいつもの立ち位置に戻り構える。


「あの小型ヤバイすぎるだろ……」


 今までに無い程の強さを持った小型に冷や汗を垂らす。だが俺自身が注意しないといけないのはココだけでは無い。次にイケメンパーティの方に視線を向けるとこちらも苦戦している様だ。


「さ、さすがに成長した小型は強いな……」


 イケメンが弱音を吐くが小型の猛攻は止まらない。そしてロピ達が相手している小型程では無いが、やはり成長した分とんでもない強さである。イケメンは一旦小型から距離を置き深く息を吸う。


「もう少しテンポ上げて舞うか」


 そう言うとイケメンは走り出し小型に攻撃をする。先程よりも早く、鋭く、優雅に動いている。


「イケメンの戦闘スタイルに俺のサポートは合わないな……」


 基本避けてモンスターの注意を惹きつける為防御を上げても意味が無いし、攻撃に関しても倒す目的では無い為効果が薄そうだし。スピードに関しては使い難い為、未だ戦闘にどう生かせばいいか分からないでいる。俺は後衛に居る女性達のサポートに専念する。


「ふふ。やっぱり凄いわー、成長した小型ですら魅了されるのね」

「そうだな。アイツカッコいいな」

「アナタ達! 見惚れている場合じゃないですよ!」

「行き遅れは良く手が止まる……」

「「「あん?」」」

「ご、ごめんなさい」


 後衛達は弓を構えて、それぞれが矢先に武器強化で能力を付与する。


「でも、私らの攻撃効くのか?」

「ふふ。やってみないと分からないわよ?」

「そうですよ? いくら成長しているからってノーダメージでは無いと思います」

「挑戦あるのみ」


 そして矢を撃つ四人に俺はそれぞれに赤ラインを敷く。


「アタック!」


 すると、小型に飛んでいく矢のスピードが上がった。そして小型に当たりそれぞれの矢が深々と突き刺さった。


「ん? 何かしら?」

「いきなり矢のスピードが上がったぞ!?」

「それに威力も大分上がっています。前まではあそこまで突き刺さった事無かったですし、もしかして……?」

「能力上昇?」


 後衛四人は一斉に俺の方を見る。


 ふふふ、美人に注目されるのは悪くないな。


「ふふ、まさか。あんな猿顔に何が出来るって言うのよ」

「だよなー。アイツに比べたら天と地ほど容姿に差があるよなー」

「アナタ達失礼ですよ! いくら顔が悪くても言ってはダメな事があります」

「ブサイク……」


 な、なんて酷い奴らなんだ!? お、俺がブサイクの筈ない! 

 だ、だってシクは毎日俺の事を可愛いと言ってくれてたし、チルも毎日カッコイイと言ってくれる! そんな俺がブサイクの訳無い!


 そして後衛は直ぐに俺から視線を逸らし小型に向き直す。イケメンも慣れてきたのか小型の注意を十分惹きつけている。そして俺は三体目を相手している商人達の方を見る。


「兄貴、速攻で倒してチル達助けに行くぞ!」

「もちろんだ! ロピさんの手助けをする」


 ガルル達は問題無く戦えているようだ。俺に反論していた獣人達は盾を持ち小型の攻撃を受け止めようとしているので、直ぐさまサポートをする。


「ガード!」


 小型の突進を複数の獣人が受け止めた。


「な、なんだ!?」

「さっきまで飛ばされてたのに抑えきれているぞ?!」

「へへ、アトスに決まっているだろ!」

「あの人間族が……?」

「アトスさんのスキルのお陰だ」

「スキルって能力上昇だろ……?」


 そして小型は連続攻撃を開始したが、タンク役が多いのと、俺のスキルにより全て耐え切れている様だ。


「す、すげぇ……」

「これが能力上昇なのか?!」


 戦闘中だと言うのに一瞬だけ俺に視線が集まるのを感じる。


「よし、この攻撃で押し切るぜ!」


 ググガを始めガルル達が一斉に攻撃を始める。流石に小型もこの人数で、更に俺のサポートで上昇した攻撃には耐え切れなかったのか動きを止めて地面に倒れる。


「よっしゃー! 倒したぜ!」

「ググガ気を抜くな! まだ二体残っているぞ!」

「お、おう!」


 他の商人達も喜んでいたがガルルの掛け声により気を引き締め直した。


「アトスさん、我々は次どうすれば?」

「二手に別れてもらいたい。ガルル達はイケメンの方に行ってくれ。もう半分はロピ達の方を手助けしてくれ」


 俺は商人達に半分になり各パーティの手助けを頼むと皆が素直に指示に従ってくれた。それは先程反論した獣人も含めて全員。


「ッチ、チルの所に行きたかったぜ!」

「こんな状況だ。しょうがない」

「兄貴、速攻倒して手伝いに行くぞ!」

「おう!」


 そしてガルル、ググガ率いるパーティはイケメン達に。ピタ率いるパーティはロピ達の方に向かった。


「ふぅ……、あと二体か」


 だが後の二体は成長して強くなっているので殊更集中しないとな……。


 

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