第103話 チルの成長
「今日もよろしくお願いします」
「……いつでもこい」
ロピとの訓練は俺が思い描く物が出来るまでは一先ず休憩だ。だがロピ自身は訓練としてチルと走り込んだり組手などをしているらしい。
「チルちゃん、頑張れー!」
「チル様、ファイトですぞ!」
「チル頑張れー!」
そして今はチルの事をみんなで応援している。チルは俺達の方をチラッと見て少しだけ頷く。グインとの訓練では何か教えて貰うと言うよりかは見て覚えろと言う感じの訓練方法だな。
「ふぅ……」
チルは息を吐き終えた瞬間動き出す。
そして攻撃を放つ! グインはその攻撃にカウンターを合わせてチルの首元に手刀を放った。
いつもなら、この一撃を食らって気絶させられるチルだが、今回は少し違った。
「……」
チルは片膝をついて地面に座り込むが気絶はしていない。
「一撃耐えられた」
「……見事。どうする?」
「まだやります」
「……こい」
再びチルは自身の拳を最速で届く様に突き出すがグインには当たらずカウンターを食らう。だが今回も地面に座り込むだけで気絶はしていない。
「ほっほっほ。さすがチル様ですな」
「え? 私全然分からない!」
「俺も全然分からないぞ?」
「チル様は今まで急所に攻撃を受けて気絶しておりました」
「今も攻撃受けてたよな?」
「ふむ。ですが急所では無いのです」
「急所では無い?」
「はい。グインは今まで通り急所を打ち抜いたつもりでしょうが、チル様は微妙に攻撃のポイントをズラしたんです」
お!? なら前にチルが言っていたポイントをズラすのが成功したのか。
「チルちゃん凄い! 前に言ってた事を実践したんだね」
「ですな」
チルはフラつきながらも再度立ち上がり構えを取る。そして今回は一時間以上も組手を続ける事が出来た。いきなり時間がアップしたな!
「チルちゃん凄い!」
「えぇ。なぜいきなりポイントをズラせる様になったんです?」
「いきなりじゃない。毎日少しずつ攻撃を受ける時にズラすポイントを探ってた」
どうやら闇雲に攻撃をしたり受けていた訳ではなく毎日少しずつ試していたのか。ロピと言いチルと言い強くなるのに貪欲だな。俺の前にいた世界では考えられ無いがこの世界では普通の考え方なのも理解出来る。
「次は攻撃を当てたい」
「その調子ならすぐだよ」
「ありがとう姉さん」
「よーし、次は私と組手だよ!」
「望むところ」
チルは立ち上がりロピと組手を始めた。アイツら元気だな……。
「それではアトス殿私は材料を探して見ます」
「あぁ、頼む」
そしてリガスはジャングルの奥に俺が頼んだ材料を探しに行った。俺は暇だし村の様子でも見て回るか。
「おーい、ちょっと村を散策してくるなー」
「「はーい!」」
村を歩いているとリザードマン達が土を耕していたり、狩に出ている者が居たりする。
「お? アトスさんどうした?」
村を歩き回っているとトッポが話しかけてきた。
「いや、暇が出来たので村を見て回っているんだ」
「そうか。何もねぇー村だから見ても面白くないだろ」
トッポはカラカラと笑いながら俺の隣まで来て一緒に歩き出す。
「それにしても獣人のお嬢ちゃんスゲーな」
「チルの事か?」
「そうそう。グインの攻撃をあんなに耐えた奴なんてこの村に居ねーよ!」
「俺も驚いたよ」
「グインの奴も褒めてたぜ?」
組手の相手に褒められたのならチルも嬉しいだろう。今日までは全部一発で気絶させられてたもんな。
「アトスさんのパーティメンバーは魔族とグインの相手をしていた獣人お嬢ちゃんも居て安泰だな!」
俺とロピの事を入れてないな、コイツ。まぁ、俺達は速攻で捕まったからな……。そんな事を話しているとリザードマンの一人がトッポに向かって走って来た。
「おい、トッポ! 奴らが来たぞ!」
「なんだと!?」
「どうしたんだ?」
「説明している暇はねぇ! すまねぇーがアトスさんは戻っててくれ」
そう言うとトッポともう一人のリザードマンは村の入り口に向かって走っていく。
「俺はこのまま村の入り口に行くから、お前はグインを呼んでこい!」
「分かった!」
そして二人の姿は見えなくなったので俺は気になりトッポ達の後を追うように村の入り口に向かった。一応トッポからは戻るように言われたので隠れるように顔だけ覗かせて村の入口付近を見渡す。
「ん? リザードマンが集まっているな」
入口を見るとリザードマン達が集まっていた。だがこの村にいるリザードマン以上に人数が多い。
どこか別の場所に住んでいるリザードマン達なのか?
「よう、トッポ! 元気良さそうだな」
「あぁ。それが取り柄だからな!」
「お前がこっちに居た時はそんなに元気だった事無かっただろ?」
「そ、そうだったか? それより何しに来たんだよ」
「あぁ。今日はなここを出て行ってもらおうかと」
「あ!? 何ふざけた事言ってやがる!」
トッポ達リザードマンが声を合わせて文句を言う。そして段々と言い争いが激しくなり、罵詈雑言が聞こえてくる。しばらく言い争っていると、グインが登場する。すると相手側のリザードマンの一人がグインに近づき呟く。
「よう、グイン。奥さん最高だな」
「!?」
ニタニタ笑いながらグインに近づく男だったがグインは一瞬にして相手との距離を詰めた。そして顎先に掌底を食らわせて気絶させてしまった。
「お、おいグインテメぇ!」
相手側のリザードマン達は一瞬の出来事に驚いて居たが我を取り戻す。
だが、グイン相手に勝てると思って居ないのか誰も近付かない。
そして相手側のリザードマン達は気絶した者を引き摺る様に運び逃げ出した。
「いいぞ! さすがグインだぜ!」
「あぁ。アイツの気絶した時の顔は最高でしたよー」
各々がグインの行動を褒め称えていた。
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