第63話 オークとゴブリンの村
「うーん。朝か……」
「お兄さーん、おはよー」
「アトス様おはようございます……」
ロピとチルは眠そうに朝の挨拶をする。
「二人ともおはよう、とうとう今日だな」
「「!?」」
二人は嬉しそうにお互いの顔を確認している。
「私は絶対武器強化!!」
「チルちゃんは武器強化がいいんだもんねー」
二人は、これから始まる儀式に夢を膨らませている。すると部屋をノックする音が聞こえた。
「朝ごはんのご用意が出来ました」
「今行きます」
村長宅で住み込みで働いている使用人らしい。
三人で食堂に向かうとディングは既に席に座っていた。
「アトス、おはよう。昨日は寝られたか?」
「あぁ、快適に寝かせてもらった」
「それは何より!」
ディングは基本声が大きい為朝の寝起きにはキツイ……。
そして、ロピとチルは一切言葉を発さない。どうやら、ディングとは話す気が無いらしい。
ディングとの朝ごはんタイムは、一方的に話されて終わった。
「さて、そろそろ儀式の場所に向かうか」
ディングの言葉にロピとチルの表情が明らかに変わる。
そんな時、扉を強く叩く音が聞こえた。
「──ッディング様!! 緊急です!」
「どうした!」
扉を叩き、慌てた様子でゴブリンのグダが入ってきた。
「ディング様、小型でございます!」
「またか……。グダ討伐しに行く、案内しろ!」
「承知致しました」
「アトス、悪いが儀式は今度でいいか」
「あ、あぁ、もちろん」
「では、行ってくる」
「お気をつけて」
そう言い残して、ディングとグダは走っていった。
「お兄さん、またモンスター出たんだね?」
「昨日も出ましたし、ここら辺にモンスター達が集まってきているのでしょうか?」
「ありえるな。この村に五十人で暮らしているなら、モンスターが察知してもおかしくは無い」
だが、小型一体であれば余裕なのかディングは悲観した感じでは無かった。
「まぁ、俺達には関係無いし今日はこの村の散策でもするか」
「あーあ、チルちゃん残念だったね」
「うん……。スキル儀式楽しみだったのに。姉さんも残念だったね」
モンスターの件で、スキル儀式どころでは無いだろう。
俺達三人は、村を歩き回った。
モンスターの討伐でオークが出払っている為、今はゴブリンしか居ない。ディングの話を聴くと、ゴブリンは主に生活面全般の仕事をしているらしい。
そして、オークは戦闘面と狩を担当している。この村ではオークの方が発言力などがあるらしく、ゴブリンはオークの言う事を聞いている体制だ。
「あんまり、活気が無いねー」
「姉さん、もっと静かに話して!」
「えー、なんでー?」
「ゴブリン達に失礼でしょ!」
「でも、なんだかみんな元気無さそうだよー?」
確かにロピの言う通り、ゴブリン達の表情は、皆んな沈んでいる様に見える。
「姉さんの言う通り、みんな下向いているし確かに元気無さそうだね」
「きっと、皆んなお腹空いているんだよ!」
「姉さんと一緒にしないで!」
「ッ──なんで!? チルちゃんお姉ちゃんの事そんな風に見ているの?!」
「だって、姉さんお腹減っている時だけ静かだもん」
「……」
チルに正論を言われたせいで、何も言い返せないらしいロピ。
その後も村を見て回ったが、ゴブリン達は必死に黙々と働いていた。
村を歩いていたら、村の外れにポツンと建つ立派な建物があった。
「なんか、他の建物よりしっかりした作りだねー」
「そうだな。いってみるか」
近くまで来ると、オークが一人だけ見張りをしていた。
「お! 何しに来たんだい?」
門番がフランクに話しかけてきた。どうやら、昨日オーク達と遭遇した時に俺達を見張っていたオークらしい。
「この建物が立派だったから、何だろうと思い来たんだよ」
「あぁ、この建物か。確かにこの村ではディング様の家の次に大きいからな」
「なんなんだ?」
「ここは、牢屋だ。何か罪を犯した者をここに閉じ込めておくんだ」
なるほど。この世界でも、やはり何をしても許される訳ではなく、ルールが有り、破ったら牢屋に閉じ込めるって事か。
「今は誰か捕まっていたりするの?」
「あぁ。今は凶悪犯が一人いる」
門番の言葉に俺達三人は見える筈も無い牢屋を建物の外から見ていた。
「暇だし、ここ見学しても?」
「凶悪犯を逃がさないならいいぞ」
冗談なんだろう。見張りのオークは笑いながら、建物の扉を開けてくれた。入る許可を貰った俺達はゾロゾロと牢屋に捕らえている人物を見る事に。
見張りも、あまりやる気が無いのか俺達を中に入れた後は、俺達を放置状態だ。
これで、何か問題があったらどうするつもりなんだ……?
「なんか、あんまりやる気の無いオークだったね」
「確かに。私達が凶悪犯の仲間だったら、どうするつもりなんでしょうか?」
「チルの言う通りだな」
俺達は、牢屋の見学を許可して貰ったのにもかかわらず、見張りの事を言いたい放題言う。
「アトス様、先程の見張りが言うには一番奥の牢屋にいるらしいです」
「という事は、そこの牢屋にいるのか」
「凶悪犯ってどんな顔しているんだろー?」
俺達は牢屋に鍵が掛かっているのを知っている筈なのに、牢屋に近づくにつれて歩くスピードが遅くなる。
興味本位でここまで来たが、少し後悔しつつ、牢屋の中の人物を見ると。
「……え? 魔族……?」
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