第817話 フランスでの休日
☆亜美視点☆
ポーランド戦の翌日だよ。 今日はどこのチームも試合予定の無い完全なる空き日。
偵察等したくてもできないというものである。
もちろん試合動画なんかを見たりして研究するのもありなのではあるが、ブラジルチームの動画は既に何度か見ているし試合観戦もした。
次のブラジルとその次のキューバはどちらも小細工無しな超パワー型チームであり、対策と言った対策も立て辛いというのが本当のところ。 こちらもパワー型の編成で挑むのか、はたまたテクニックで翻弄するのかわからないけど、ぶっつけ本番で対応していくしかないだろう。
とか考えるのは明日にしまして! せっかくの休日なので本物のフランスを観光するよ!
昨日の内に奈央ちゃんがバスの手配をしてくれており、希望者のみでフランス観光を行う事になりました。
希望者は何と、監督コーチ陣を含めて日本チーム全員となっています。 皆やっぱり観光したかったんだねぇ。
◆◇◆◇◆◇
「という事ですので、今日は一日バレーボールの事を忘れて羽根を伸ばしましょう!」
「いぇーい!」
たまにはリフレッシュは必要である。 明日は試合に向けた調整やミーティングなんかもあるからね。 今日しかないよ。
「西條様様だなー。 がはは」
「本物のお嬢様って凄いわね……」
奈央ちゃんのやりたい放題に慣れていない人達は、口をあんぐりと開けて観光バスを見つめている。 奈央ちゃんが手配したバスは相変わらず大きくて豪華な物。
車内で寛げるスペースがあるような物だ。 この手の観光バスも私達は慣れてしまっているが、初見の皆さんは口あんぐりだ。 まあ、何故かバスにテーブルが設置されてるんだもんね。
「それではまず、フランスといえばのエトワール凱旋門に参ります」
「おー。 あの凱旋門か」
日本の欧州村観光でも見たあの凱旋門だね。 日本のやつは西條グループが総力を結集して、なるべく忠実に再現した物であったけど、サイズは少し縮小されていた。 やっぱり本場のものを見ないとね。
エトワール凱旋門でバスを降りてシャンゼリゼ通りを歩くそうだよ。 そのあとはまたバスに乗りルーヴル美術館へ向かうらしい。 ルーヴル美術館は欧州村には無かったから楽しみである。
「楽しみである!」
「はぅ、出たよぅ亜美ちゃんの心の声」
「欧州村行った時も興奮しっぱなしだったものね」
「亜美ちゃん可愛いわねー」
「あ、あはは」
興奮すると周り見えなくなる事があるのは私のダメなところである。 皆に笑われてしまうのであった。
「ではバス発車しますわよー」
奈央ちゃんがドライバーさんにバスを出すように指示すると、ゆっくりとバスは走り出した。
ここからパリのエトワール凱旋門へはバスで20分程だそうです。 割りかし近いようだ。
「ですけど、大会中に呑気に観光とかしてて良いんでしょうか?」
と、真面目そうな新田さんが少し気にしたように言う。
すると、監督さんが「構わんー。 今日はオフ日で調整は明日。 リフレッシュも必要だ」と返事。
監督が言うならという事で、新田さんは「はい!」と返事をして楽しむ事にしたようだ。
ちなみに他のチームも皆オフ日となる今日、私達以外にも観光しようというチームはいるらしい。
アメリカさんである。 キャミィさんから弥生ちゃんにそう連絡があったみたいだ。 やはり海外へ来たら観光したいと思うものなのであろう。
「そういえばフランスって他に何があるんだっけー?」
と、ここで宏ちゃんみたいな事を言い出す人が約1名。
宮下さんである。 学校の成績もてんでダメだったらしいし、各国の名物建築物なんかも詳しくないかもしれないね。
隣に座る新田さんがやれやれと言った感じで教えているが、それでも「聞いた事はあるような気がする」みたいな反応が返って来るだけであった。
バスはやがてエトワール凱旋門近くに停車。 私達はバスを降りて移動を開始する。
やがて目の前には大きな建造物、凱旋門が姿を現した。
「おー、これが本物の凱旋門! 写真写真! パシャパシャ」
「あ、始まったわよテンションマックス亜美」
「あはは! スカイツリー見た時もこんなんだったっけ?」
「うん。 あの時の清水先輩もこんなだった」
皆で並んで記念撮影した後は、ぐるりと一周しながら凱旋門を見物。 堪能した後は、約3kmあるというシャンゼリゼ通りを散策する事になりました。
バスは一旦何処かに停車して休憩中らしい。
まあ3kmもあるし時間どれだけかかるかわからないからね。 色々な店とか見て回るだろうしね。
ちなみに看板から標識から全部フランス語である。 ベテラン組にはフランス語が読める人もちらほらいるようで、私と奈央ちゃんの負担はかなり軽減されている。
「しかしだだっ広い上に長い道路やなぁ」
「シャンゼリゼ通りだよ。 歌でも有名だよ」
「あー、おーシャンゼリゼー言うやつやな」
「そそ。 エトワール凱旋門からコンコルド広場を繋ぐ大通りで、フランスの観光名所だね。 色んなブランドショップがあるよ」
「清水さん、すんごい知識ねー」
と、感心したように頷きながら宮下さん。 基本的な事しか言ってないと思うんだけど。
「コンコルド広場の方でバスがいますので、そこまで歩かないといけませんわよー。 そこからバスに乗ってルーヴル美術館館へ行きます」
「それも名所?」
「美智香姉……もうちょっと勉強頑張って」
「嫌よ?! せっかく高校卒業して勉強しなくて良くなったのに!」
よっぽど勉強が嫌いみたいである。 勉強楽しいと思うんだけどなぁ。
ブランドショップ等を梯子しながらシャンゼリゼ通りを歩いて行く私達日本代表一行。 中には高級ブランド品を買っている先輩達もいる。 結構お金持ちなようである。
「私達にはちょっと高いわね」
「きゃはは、買えないわー」
「無理やなぁ」
と、私達大学生や高校生組には手が出せない高級品なのであった。
「しかし、こうやって見ると欧州村の再現度って凄かったのね?」
「だよなー。 さすが西條グループだぜ」
「何だー? あのテーマパークも西條グループが関わってんのかー?」
「はい、まあ」
「俺も以前家族連れで行ったが凄かったなー。 まだ全部周り切れとらんぞー」
どうやら小林監督さんもあそこに行ったことがあるらしい。 でもやっぱり全部は回り切れないよねぇ。
「ふふふ、またいらしてくださいませ」
「うむ」
他の人も何人か欧州村を観光したという人がいるようです。 観光スポットとしてはかなり楽しめる場所だもんねぇ。
そんな談笑をしながらシャンゼリゼ通りを進んでいくと、ようやくコンコルド広場へと到着した。 シャンゼリゼ通りの終点である。
この辺りにバスが停車しているはずという事だけど。
「お、あれじゃない?」
「ですわね。 皆さんバスに乗り込んで次はルーヴル美術館へ行きますわよー」
「おー」
私達は全員バスに乗り込み次なる目的地であるルーヴル美術館へと移動。 ワールドカップ中ではあるけどフランス観光をガッツリと楽しんでいこうと思います。
何せ中々来れないからねぇ。
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