第805話 代表集結

 ☆亜美視点☆


 東京へと到着した私達は、小林監督に到着の報告だけして外へ出てきています。 昼食の為である。


「ここからなら……」

「うむ。 やはりあそこしかないわね」


 新田さんと宮下さんが頷き合っている。 そういえばこの辺りは……。


「白華屋!」


 あぁ、やっぱりね。 本当に好きだねぇあそこのカレーうどん。 まあ凄く美味しいんだけども。


「ええやん。 ウチも行きたいで」


 東京に来てからは弥生ちゃんも白華マイスターになってたんだっけ?


「おー! そんなこともあろうかと、マイエプロン持って来ましたわよ」


 うわわっ!? ここにも新たな白華マイスターが誕生してしまったよ!


「奈央、あんたいつの間に……」

「ふふふー、あのお店のカレーうどんは確かに絶品ですもの。 ぜひまた食べたかったんですのよ、おほほほ」

「白華屋恐るべしだよ……」

「とにかく行きましょー」

「なぁ。 その白華屋ってのはそんな美味いん?」

「美味いわよ? カレーうどんが」

「ほぉ」


 黛姉妹は白華屋ビギナーなんだね。



 ◆◇◆◇◆◇



 こちら白華屋。 人数も人数なので二手に分かれて座る。 私の座る席には希望ちゃん、奈々ちゃん、麻美ちゃん、奈央ちゃん、紗希ちゃんの6名。 残りは別の席に着いている。

 注文は皆カレーうどん一択。


「ん-、この匂い。 やっぱりいいねぇ」

「本当良い匂いよねぇ」


 私は3回目だけど、他の皆は大体2回目。 それでも皆、この白華屋のカレーうどんの虜になっているようだ。 運ばれてきたカレーうどんに舌鼓を打ちながら雑談。 ワールドカップについての話題が主な内容であった。 何処の国が強いだろうかとかそういった感じの会話である。

 今大会の優勝候補はアメリカ、フランス、イタリア、キューバ、そして我々日本となっている。

 私達日本が優勝候補に挙がっているのは、私達日本ユースの活躍によるところが大きい。 アメリカもイタリア辺りもそうだね。 元々キューバは強豪国だねぇ。 他にクロアチアやオーストリアなど、強いチームは多い。


「警戒すべきはキューバとアメリカかしらね?」

「ですわね。 特にキューバはどの選手も高身長の超パワーって感じみたい。 親善試合ではオーストリアにストレートで勝ってるって話よ」

「うへー、化け物ねー」

「んぐんぐ。 海外の選手はそういう選手が多いんじゃない?

「かもね。 小手先の技術で勝負するのなんて、私達ぐらいかも」

「きゃはは、奈々美はどっちかって言うとパワー押しゴリラじゃん?」

「ゴリラじゃないわよ」

「いやいや、奈々ちゃんはゴリラさんだよ」

「ぐぬぬ……」

「お姉ちゃんはゴリラー」

「違うって……」


 奈々ちゃんはどうも自分がゴリラであることに気付いていないようです。 まったくもう。


「でも、奈々美ちゃんなら世界の選手のパワーにも勝てるよね」

「それに関しては自信あるわよ。 そこ重点手的に鍛えてきたし」


 そうそう、奈々ちゃんはここ数週間の間ずっとスパイクの威力を磨くこと尽力してきていた。 きっと凄いパワーアップしているに違いないよ。

 他の皆もそれぞれ自分の業、力に磨きをかけてきた。


「ズルズル……麻美はどうなの? あれから高さ測った?」

「うんにゃ? 測ってないけど確実に高くなってると思うー」

「そだねぇ。 最後に一緒に練習した時も結構高さあるように感じたよ」


 麻美ちゃんも間違いなく成長してるし、本当に本番が楽しみである。



 ◆◇◆◇◆◇



 お昼ご飯も食べ終えた私達は、ホテルに戻ってきて各自部屋でゆっくりしています。

 夕飯は18時過ぎ。 この間収録した番組は20時から放送。 ミーティング等は今日は無し。

 明日の渡仏に向けてゆっくり過ごすことになりそうです。


「ん-……14時かぁ。 退屈である……退屈である!」


 と、叫んでみたところで退屈なのは変わらない。 出掛けても良いんだけど、特に見るような所も無いしねぇ。


「ふうむ。 本屋さんにでも行って本買ってこようかなぁ」


 余り荷物を増やしたくはないから本を持って来なかったんだけど、これは失敗だったかもしれないねぇ。 こんなに退屈になるとは。


「よし、行って来よう」


 そうと決めたら早速準備して本屋さんに直行だよ。 この辺りに本屋さんがあるのは私も知っているのですぐ行って帰って来れるね。

 10冊ぐらい仕入れておこうかな。


「ふんふんーだよー」

「あ、亜美姉だー。 どこか行くのー?」

「うん。 暇だから本屋さんに」

「おお、私も暇だからついてくー」

「私もいいかしら」


 麻美ちゃんの後ろに立っていた奈々美ちゃんも一緒についてくることに。 ちなみに希望ちゃんはお昼寝中のようです。 というわけで3人で本屋さんに向かうのであった。


「にしても、ホテルでボーっとするだけってのも退屈よねー」

「あはは、そうだね」

「ヒマヒマだー」


 ホテルを出て道を歩きながら雑談を交わす。 麻美ちゃんも奈々ちゃんも部屋で相当暇していたらしい。 この分だと他の皆も同じように暇してどっかへ出かけてるかもね。


「本屋さんはどこだー」

「あはは、もうちょっと歩いた所にあるよー」


 3人で5分ほど歩いた先にある本屋へと入ってきました。 私と麻美ちゃんはまず小説コーナーへ。

 オススメ作品や好きな作家の作品を物色していく。 麻美ちゃんの作品もいくつかオススメに上がっているけど、全作品持ってるからねぇ。


「これと、これと」

「亜美姉いっぱい買うねー」

「あっちでもよむだろうからねぇ」


 フランスで読む分も勝っていこうという魂胆です。 荷物が増えちゃうのはこの際仕方がない。

 10冊は最低でも買っていきたいね。


「私も一杯買うぞー」

「じゃあ、お互い別々の作品買って読み終わったら交換しよう」

「おおー、ナイスアイデアだよー」


 という作戦に決定。 私と麻美ちゃんで大量の小説を仕入れるのでした。

 

 かご一杯に本を入れながら奈々ちゃんと合流。 奈々ちゃんは奈々ちゃんでファッション誌や芸能誌を色々と買っていた。


「あんた達凄い数買うのね」

「うん。 奈々ちゃんはそれだけ?」

「もうちょっと買おうかしら。 漫画とか」

「うんうん」


 奈々ちゃんも結局少女漫画をシリーズ全館買っていたよ。


 本屋で本を大量購入した私達はホテルへと戻ってきた。 買ってきた本をちょっとだけ読みながら夕飯の時間を待つ。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕飯も外食で済ませて、私達は部屋でテレビを視ています。 以前に収録した私達女子日本代表のコーナーがあるスポーツバラエティである。


「始まったよ」


 もちろん、私達バレーボールだけではなく色んなスポーツのコーナーがある中、いよいよ私達のコーナーがやって来た。


「いよいよ明日フランスへと発つ女子バレー日本代表ですが、今大会はなんと優勝候補にも名前が挙がっています。 注目の代表選手達に、姫百合凛さんが突撃取材をしてきてくれました」


 という流れで、私達の練習風景やインタビューシーン。 他の体育館で練習していた皆のシーンなどが順番に流れていく。 かなり時間の枠を取っていることからも、私達が期待されている事が窺える。


「姫百合さんは応援団長としてフランスへ行かれるのですよね?」

「はい! 力一杯応援してきたいと思います! 日本頑張れ!」


 ここまで期待されちゃあ簡単には負けられないよね。


「頑張ろう!」

「おー!」



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