第785話 久々のデート

 ☆希望視点☆


 今日は夕也くんとデートです。 亜美ちゃんと夕也くんが付き合いだしてからも、亜美ちゃんに許してもらって時々デートはしていたけど、最近はあんまり出来ていなかったので久々のデートです。

 のんびりしている間に夕也くんが亜美ちゃんへのプロポーズを考えるまでになっていた事で、私も焦り始めているのです。

 正直言って勝ち目の無い戦いだなぁとはわかっているんだけど、簡単には諦められないのが悩ましいところ。


「で、どこへ行くんだ?」

「んー、まずは映画館かな? 観たい映画があるんだよぅ」

「映画か。 希望と映画は久しぶりだな」

「だね」


 劇場版ボケねこを観に行って以来じゃないかな?

 そして! 今回の映画は劇場版ボケねこ第二弾です! 先に言ってしまうと夕也くんは嫌がるからギリギリまで秘密だよぅ。


「ちなみにその映画ってあのボケねこのやつじゃないだろうな? この前CMで公開してるって言ってたんだが?」

「はぅっ?!」

「その反応は……そうなんだな?」


 バレてしまっては仕方ないよぅ。 私は小さく頷く。


「本当に好きだなぁ……あの馬鹿面の何が可愛いんだ?」

「あの人をバカにしたような顔が良いんだよぅっ!」


 夕也くんには……いや、紗希ちゃん以外の皆には何故かボケねこの良さがわかってもらえない。 ちなみに大学ではそれなりに理解ある友人も出来たよ。 やったね!


「まあ、良いさ。 希望が観たいなら付き合うまでだ」

「ありがとう」


 夕也くんも諦めて私の我儘に付き合ってくれるそうだ。

 感謝です。


「でもプロポーズかぁ……いつ決めたの?」

「7月に入ったぐらいだな」

「結構最近……」

「だな。 最初に紗希ちゃんに協力を頼んだんだがこれが中々正解でな。 オリジナルデザインにしようってなって色々力になってくれたんだ」

「オリジナルデザインなんだねっ! でも私にも相談してほしかったなぁ」


 ちょっとショックです。 私には相談せずに紗希ちゃんや奈央ちゃん、奈々美ちゃんにだけだなんて。 ふんすっ!


「希望は……ほら、まだ俺の事諦めてないだろ? そんな子に、他の女性に渡す指輪の相談なんてし辛いじゃないか」

「それはたしかに……」


 なるほど。 夕也くんは夕也くんで私に気を使ってくれたという事みたいです。 やっぱり優しいなぁ。


「俺だってそこまでバカじゃないさ」

「あはは。 そうだね」


 でもそんな優しい夕也くんだけど、本当は今の私の事をどう思ってるんだろう? もう結婚まで考えている女性がいるのに、間に入って邪魔している私の事を、本当は鬱陶しいとか思ったりしてないんだろうか? 怖くて自分からは聞けないよぅ。


「なぁ」

「はぅ?」

「プロポーズ成功すると思うか?」

「それは亜美ちゃんが受けるかどうかって事?」

「あぁ」

「んんー……」


 そういえば亜美ちゃんと以前話した時、亜美ちゃんは今のところ夕也くんとの結婚は考えていないと言っていた。

 プロポーズされたら嫌でも考える事になるんだろうけど、結婚なんかしなくても今充分に幸せだとも語っていた。

 もしかしたら亜美ちゃんは、夕也くんのプロポーズを受けない可能性が高いかもしれない。


「やっぱり怪しいよなぁ」

「ぅん。 私だったら即OKなんだけどなぁ。 ちらちら」


 ここにも良い女の子いるよアピールを忘れない。

 夕也くんは「ははは」と笑い「ダメだったら考えてやるよ」と冗談ぽく言った。

 嘘でも嬉しいものだよぅ。


「せっかくのデートなんだ、亜美の話はこれくらいにしとこうか。 もうすぐ映画館にも着くしな」

「ぅん」


 夕也くんは本当に優しいなぁ。 鬱陶しがられてるかもなんていう心配は杞憂に終わる。



 ◆◇◆◇◆◇



 さて! デートを楽しむというわけで、まず映画館にやって参りました!

 上映している数々の作品の中で私が観たいのはこれ!


「劇場版ボケねこ 大騒動! 誕生日大作戦!!」

「……なあ、こっちの洋画にしないか?」

「ふんすっ! ダメだよぅ!」

「ですよねー」


 ここに来てボケねこ以外の映画を提案してくる夕也くんだけど、私はそんな夕也くんの提案を即刻却下。 そのまま夕也くんの手を引いて中に入り、有無を言わさずにチケットを購入した。


「楽しみだねっ!」

「そうですね……」


 いまいちノリの悪い夕也くんだけど、私はお構い無しに劇場まで引っ張っていく。


「非力なくせにボケねこが絡むと別人みたいに力出るな……」

「ボケーねこのー♪」


 そんなこんなで劇場に入り座席に着いた私達。 私は入り口で買ったパンフと、劇場版限定ボケねこぬいぐるみとキーホルダーを手に持っています。


「またそいつのぬいぐるみが増えるのか……」

「これは『皆の家』に飾ろうかなぁって思ってるよ」

「なるほどな」


 駅前に出来た私達の新拠点「皆の家」にはそれぞれの自室があり、そこで生活することさえ可能なのです。 そちらの自室もしっかり自分色に染めていくよぅ。


「始まるみたいだな。 寝てて良いか?」

「ダメだよぅ?! 瞬きすらせずに最初から最後まで見なきゃ?!」

「いや、瞬きはしろよ……」


 さて始まりました劇場版ボケねこ第二弾。 今回は前作のような冒険活劇ではなく、至って日常のボケねこワールドが繰り広げられる作品となっています。

 今回は前作ではヒールに回ったクロねこ軍団もボケねこ達と協力する関係に。 ボケねこワールドらしいほのぼのした展開です。


「あのクロい奴らって悪者じゃないのか?」


 周りのお客さんに配慮して、耳元で囁くように訊いてくる夕也くん。 何だかんだ言って興味津々だ。


「基本的に根は良い子達だよぅ。 ちょっとイタズラが過ぎちゃう事もあるんだけど」

「ふぅん。 バ○キ○マンみたいなもんか」

「あはは……」


 さてストーリーはというと、皆のマドンナ的存在であるヒメねこの誕生日が近づいて来たある日、イケねこの提案で誕生日会を開こうという話になった。

 ヒメねこに知られないように、ねこワールドの住人達は右へ左へ走り回り準備を進めていく。

 そんな事になっているとは知らないヒメねこは、誕生日にはお城のパーティーに参加する事に決めてしまう。


「はぅ」

「城とかあるんだな」

「ヒメねこは本物のお姫様ねこなんだよぅ。 住まいはお城なの」

「前回簡単に攫われてたが、城の警備はどうなってんだよ」


 それは話の都合だから仕方ない。

 

 さてヒメねこの誕生日当日。 広場はヒメねこ誕生日パーティーの準備が滞りなく済んだが、肝心のヒメねこ本人が参加出来ないという事が発覚。 ボケねこ達は落胆する。

 もちろん落胆しても表情はいつも通りだ。


「落ち込んでるように見えないのが問題だな」


 そういうキャラだから仕方ない。

 しかしそんな時、クロねこ軍団達が大活躍! イタズラ用に用意していたロケット花火を空に打ち上げて、ヒメねこに誕生日パーティーの存在を知らせる。

 すると、その存在に気付いたヒメねこは、お城のパーティーを抜け出して広場のパーティーへと向かい走り出す。

 途中、ねこワールドの住人達から祝福されながら会場へ辿り着いたヒメねこは、皆と楽しい1日を過ごすのでした。


「クロい奴らMVPだな」

「うん。 感動だよぅ」


 普段イタズラばかりはクロねこ軍団だけど、今回は大活躍でした。 やっぱりボケねこは最高だよ。

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