第777話 最速は誰だ
☆亜美視点☆
ビーチフラッグ大会も次は私達の出番。
女子の部である。 私も参加するからには上位目指して頑張るつもりではある。
「おりょ。 早速私の出番じゃーん」
「うわ、いきなり神崎先輩とぶつかってもうた」
どうやら第一組では早速紗希ちゃんと渚ちゃんが対決する事になるようだ。 自信ありげだった紗希ちゃんの走りに注目である。
☆紗希視点☆
てなわけでいきなり出番が回ってきてしまったわね。 相手には渚と他の観光客さん2人。 旗は2本あるから2人が勝ち抜け。 他の観光客さん2人はそこまで警戒しなくて良さそうだし、あえて渚と奪い合う必要は無いか。
スタート地点にやって来た私達は簡単に説明を受ける。
指示を受けてうつ伏せになり、両手の甲を重ねるように地面に置いて顎をその上に乗せる。 この状態がスタートの体勢ね。
ざわざわ……
客席の方が何だか騒がしいわね。
「あの子体ヤバくねぇ?」
「すげぇなおい……後で声掛けようかな」
ありゃりゃ。 どうやら私のエロすぎる体が注目の的になってしまっているみたいね! いた仕方あるまい。 全ての男を虜にしてしまうこのボディが悪いのよ。
「それでは用意は良いですね?」
スターターがピストルを構えるのが見えたのでこちらも集中する。
パァンッ!
スタートの合図と共に勢いよく立ち上がり振り返る。 ビーチフラッグにおいて無駄の無いスタートというのはとても重要な事よ。 このスタート次第では普段敵わないような人にだって勝ち得ることがある。
スタートを切ると同時に他の選手の動向を確認。 どうやらスタートは私が速かったようね。 続いて私の左隣にいた人、渚、もう1人の観光客さんの順。
ビーチフラッグで旗が複数の場合。 あえて一番ライバルになりそうな人を潰す為に、その人と旗を奪い合う作戦があるけど、今回はそれはしない方向でいくわ。 真っ直ぐに近い方の旗を取りに行く。
「速いっ?!」
「きゃははは」
もう一つ。 ビーチフラッグと普通のトラックでの短距離の違いがあるわけだけど、それはまあ言わなくてもわかるわねー。
「よっと!」
私はそのまま飛び込むまでもなくスタンディングで旗を手に取る。
反対側の旗は辛くも渚が手にしたようだ。
「せ、先輩速過ぎますて……」
「余裕よー」
まずは1位通過ってとこかしら。 渚は先程今井君や佐々木君も見せていたように少し気になるといった感じで首を傾げながら地面を見つめていた。
ふふふ、走りにくいと感じてるんでしょうね。 硬いトラックの上とは違う、この柔らかいビーチの砂の上を。
☆奈々美視点☆
「あ、今度は私ね」
「あら、じゃあいきなり私とですわねー」
げっ、いきなり奈央が相手? こりゃ奈央が狙う旗は諦めた方が良さそうね。 奈央を先に行かせて逆の旗を狙うわよ。
スタートの準備に入る。 最悪なことに隣に奈央がいるわ。 仕方ないから遠くの方の旗を狙うしかないわね。
「用意はいいですか?」
さてスタートね。
パァンッ!
「っしょ!」
隣の奈央とほぼ同時に立ち上がり、私はすぐに斜めに進路を取り奈央の狙う近い方の旗を捨てる。
「あら、勝負しないのねー」
「ったりまえでしょ!」
よし、他の参加者の子達より前に出れたわ。 ちょっと斜めに走る分不利かと思ったけどこれなら。
「にしても走りにくいわね」
柔らかい砂に足を取られて上手く力が伝わらないわ。 なるほど、夕也と宏太が気にしていたのはこれだったのね。
中々加速がつかないわ。
それでもなんとか旗を取って1回戦を突破。 それにしてもこれは慣れないと辛いわね。
「奈々美。 私から逃げるなんて情けないですわねー」
「うっさいわねー。 亜美と当たるまでは負けられないのよ」
「ふふ、まあたしかに」
とりあえず1回戦は突破。
☆亜美視点☆
皆順当に残ってるね。
「おっと、次は私だねぇ」
「頑張ってね亜美ちゃん!」
「お、私の相手は亜美ちゃんか。 勝負だ」
「お、遥ちゃん! 良いよぉ」
私は遥ちゃんと勝負だよ。 旗は2本あるけどここで遥ちゃんを倒しておくのはありかもしれない。 状況によりけりではあるけど。
さて、準備してと……。
「ではいきますよー」
パァンッ!
ピストルの音に反応してすばやく立ち上がりスタートを切る。
「むっ?!」
砂に足を取られて上手く地面を蹴れない。 なるほど、夕ちゃん達のあれはそう言う事だったのか。
前を向くと遥ちゃんは先にスタートを切って走り出していた。 これはもう遥ちゃんとの勝負は諦めた方が良いようだ。 すぐに狙いを別の旗に定めて加速する。
「むむぅー」
思ったように加速がつかない上に距離的にも私がトップスピードに乗るには少し短いのが辛いところであるが、ダイブして辛くも旗をゲット。 危なかったけどなんとか突破だよ。
「亜美ちゃん苦戦したね!」
「あはは、砂浜でのダッシュが思ったよりきつくて」
「なるほどなー。 たしかにそうかもな」
遥ちゃんと同じ旗を狙ってたら確実に負けていたよ。 危ない危ない。
☆麻美視点☆
「おお、次は私だー」
あれれー? 私は皆とは対戦無しかー。 残念だー。
「麻美、頑張りやー」
「うむー。 頑張ってくるー」
というわけでゆっくりとスタート地点へと向かい準備に入る。
「うんしょと」
ちなみにこんな時でも足に重りを巻いているよー。 シュシュでカモフラージュして隠してるけどねー。 砂浜では足を取られて走りにくくなるものであるー。 なので、トラックで走る時みたいな走り方では加速しにくい。 足の裏全体でしっかり地面を掴んで蹴らないと。
「ではいきます」
パァンッ!
「うおおおー」
スッっと立ち上がり振り向いて全力ダーッシュ!!
「あははは! あはははー! あははは!」
他の人達をぶっちぎって圧勝。 やっぱり亜美姉や西條先輩が相手じゃないと燃えないなー。
2回戦に移る前に一度皆で集合する。 亜美姉やお姉ちゃん、西條先輩は砂浜でのダッシュに慣れないらしい。 逆に私、神崎先輩、蒼井先輩は砂浜でのダッシュについてある程度理解していたので問題なく走れている。 これは風が向いてきたー!
亜美姉達化け物に勝つチャンスだー。
「もうすぐ2回戦ね。 ここからは私達仲間内でつぶし合いになると思うけど、容赦しないわよーん」
「わっはっはっはー! 地の利は我々にありー!」
「化け物退治だぜー」
皆、亜美姉や西條先輩に負け続けて鬱憤が溜まってるやつだー。 今日は絶対に勝つぞー。
☆亜美視点☆
皆、私や奈央ちゃんを目の敵にしてるねぇ。 でも今回は私もちょっと危ういねぇ。 まだ砂浜での走りに慣れていないから、皆と当たったら勝てるかどうか怪しいよ。 特にここからは旗も1つになっちゃうからね。
勝負を避ける事は出来なくなるというわけです。
「2回戦の最初の対決は誰になるかなー?」
「誰と当たっても全力でぶっ倒すわよーん」
「私もだー!」
むむぅ、出来れば誰とも当たらずに感覚を掴みたいところだけど……はてさてどうなるか。
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