第759話 有馬温泉街観光
☆夕也視点☆
ねね橋という橋を後にした俺達は、次なる目的地である金の湯の足湯とやらを目指す。 と言っても、ねね橋からは目と鼻の先と言った距離なので、そこまで歩くわけじゃないようだ。
「と、足湯へ向かう前に一件寄りますわよ。 そこで浴衣を借りて浴衣で観光しますー」
「おー、浴衣ー!」
そういうわけで俺達は浴衣をレンタル出来るという場所へやって来て、男女全員着替える。 色々な柄があり、女子組は選ぶのに時間をかけていた。
着替え終えた俺達は改めて足湯を目指す。
「スポットからスポットの距離が近くて回りやすいわね」
と、紗希ちゃんにも中々に好評なようだ。
程なくして目的の場所へと辿り着く。
「ここはなんだ?」
足湯のすぐ側には建物が建っている。 おそらくはこの足湯もここの施設なのだろうが、無料開放されているようだ。
「ここは温泉テーマパークね。 明日はこちらにも入るわよ」
「温泉!」
「テーマパーク!」
藍沢姉妹が目をキラキラさせて建物を見つめているが、入るのは明日という事らしいので今は我慢してもらい、足湯に浸かる事にした。
「金の湯って言うけど赤茶色なんだな」
「このお湯は空気に触れると赤茶っぽく変色する含鉄泉なんだよ」
「出たわねアミペディア」
「ちなみに有馬温泉には金泉と銀泉があって、銀泉の方は透明なお湯の炭酸水素塩泉なんだよ」
「へぇ、旅館の宿は透明だったから銀泉ね!」
「金泉は明日、ここの温泉テーマパークで楽しみますわよ」
「おー! 楽しみー!」
「ちなみに中は男女別なんやろか?」
「基本別ですが、岩盤浴は男女混同だそうよ」
「岩盤浴良いですね」
何か春人には似合いそうだな、岩盤浴。
「今井君、明日は私と岩盤欲しましょ!」
「紗希ちゃん、浴が欲になってる気がするよぅ」
「紗希は何処にいても性欲全開だな……」
「今井君の前だけよん」
それはそれで困るんだが。
「足湯だけでも気持ちいいものだねぇ。 明日が楽しみだよ」
「浸かり倒すわよ」
奈々美は早くも気合いを入れているのだが、温泉に浸かるのにそんなものが必要なんだろうか?
10分程駄弁りながら足湯を堪能した俺達は、次なる目的地である念仏寺へと向かう。 やはりというか、温泉テーマパークからはそれほど距離があるわけでもなく、割とすぐに到着した。
「こちらですわね。 秀吉の正室だった、ねねの別邸跡だと言われているわ」
「またねねさんだ!」
豊臣秀吉と奥さんはよっぽどここが好きだったと見える。 あちこちにその影が見え隠れしているからな。
「本当は沙羅の花が見たかったんだけど、見頃はとっくに過ぎちゃってるわね……。 もう少し早い時期に来れてれば綺麗な花が見れたんだろうけど」
と、残念そうなトーンで奈央ちゃんが言う。 まあ仕方がないな。
「ここには神戸七福神の寿老人が祀られているらしいですわよ」
しかし、すぐにテンションを戻して寺の解説を始めるのだった。
その後、念仏寺の庭をゆっくりと見て回わり、寺を後にする。
戻る時に、ちょっとした枯山水の庭の中にある、行基像と3羽のカラス像とやらを見物した。
ここでも亜美の蘊蓄が披露されたが、俺にはちんぷんかんぷんであった。
「で、聞いてた念仏寺まで見たわけだけど次はどうするのよ?」
奈々美の問いかけに答えるのはもちろんこのお方。
「次はこのまま湯泉神社へ行きます」
「寺の次は神社と来たか」
「何や京都観光してるみたいですね」
と、京都人の渚ちゃんが漏らす。
そういや京都へ修学旅行へ行った時も社寺をやたら回った気がする。
嫌いではないが好きでもないな。 亜美とか春人はこういうのは好きだそうだ。
「湯泉神社は子宝の神社らしいわよ」
「子宝!」
何故か紗希ちゃんがものすごい勢いで反応をしているが、まだ早いような気がするぞ。 まさかもう子供が欲しいんだろうか? 柏原君大変だなぁ。
「事前に申し込めば子宝祈祷なんかもしてもらえるみたいだけど、今回は私達にはまだ縁が無さそうな話だから申し込みはしてないのよ」
「そんなぁ」
と、急激に落胆する紗希ちゃん。 どうやら本当に子宝に恵まれたいらしい。 紗希ちゃんってちゃんと母親やれるんだろうか? と、ふと失礼な事を考えたのは内緒だ。
「まあまあ。 参拝するだけでも効果は多少あるでしょ。 行きますわよ」
「おー」
と、歩き出すが、やはり目的地は目と鼻の先であった。 長い階段が行手を阻むも、健脚揃いの皆は苦もなく登っていく。
「ねーねー夕也兄ぃ。 夕也兄ぃは子供何人くらい欲しいー?」
ちょこちょこっと隣にやって来た麻美ちゃんに、またよくわからない質問をされる。
しかし子供か。
「やっぱり男の子と女の子1人ずつが理想だな」
「おー。 私5人くらい産むつもりだったけど最低2人で良いのかー! なはは、頑張るぞー」
「何で麻美ちゃんが夕ちゃんの子供産む話になってるの?!」
「可能性が無いわけじゃないよー!」
「そぅだよぅ! 私にだってまだチャンスあるもん! ふんすっ!」
麻美ちゃんに続いて希望も参戦する。
はあ、この2人にはまだ亜美への指輪の話はしていない。 諦めてくれれば良いのだがこの2人の事だから多分諦めてくれないんだろうなぁ。 先行きが不安すぎるぜ。
湯泉神社ではとりあえず参拝だけして神社を後にするのだが、ここで奈央ちゃんが次の目的地を発表する。
「これから3社巡りをします」
「何それ?」
「今行った湯泉神社の他に、有馬天神社、水天神社を回るのよ。 いわゆるパワースポットとして有名らしいですわよー」
「なんかよくわからんがまだ神社を見に行くってことは
わかった」
「ただ、真っ直ぐ行くのは勿体無いから、途中で寄り道するけど」
「寄り道?」
「ええ。 有馬の工房と呼ばれる場所があるみたい。 有馬の歴史とか色々学べるらしいわよー」
「歴史良いねぇ。 行こ行こ」
そういうのには目が無い亜美のテンションが少し上がる。 どうやらここからそれなりに近いらしい。
今のところ各スポット間の移動時間で5分以上掛かった事がないぞ。
やはりあっという間に有馬の工房とやらに着いてしまう。 これ、観光に2日もいらない可能性があるな?
「入るわよー」
「おー」
亜美がノリノリで入っていくのを、苦笑しながらついていく。 中はこれといったものはないが、歴史ギャラリーや休憩所といったスペースがあり、観光途中に休憩出来るスポットのようだ。
そばを食べられるスペースもあり、宏太と遥ちゃんは別行動を始め、そばを啜るのであった。
有馬の歴史ギャラリーを見て満足した亜美と、そばをを食べて満足した宏太、遥ちゃんの3人を引き連れて、次なる目的地となる有馬天神社を目指す。
「今日の所は3社巡りを終えたら旅館に戻ってゆっくりしますわよ。 自由行動だから、見たい場所があるなら自由に行ってね」
「おー、わかったー」
やはりというか、観光スポットが密集しているせいか消化速度が早いようだ。 今は昼の13時過ぎたぐらいで、14時ぐらいには旅館に戻っていそうだ。
明日はどうするつもりなんだろうか?
「亜美、自由行動になったら土産屋でも回りましょうよ」
「うん、良いよ」
亜美と奈々美は土産屋巡りをするようだ。 俺はどうするかなぁ。 旅館でじっとしてるのも勿体ないしぶらぶら散歩でもするかねぇ。
ま、まずは3社巡りだ。 それが終わった後に考えれば良いだろう。
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