第738話 代表夏合宿
☆亜美視点☆
7月末です。 8月に入ったらすぐさまバレーボール全日本代表合宿が予定されているよ。
合宿地はまたまた大阪。 移動が大変である。
しかし、これには理由がある。
今回の代表合宿には、現役高校生である麻美ちゃん、渚ちゃんに、都姫女子の新田さんも参加する。
彼女達はこの夏、インターハイに出場予定なんだけど、開催地が大阪なのである。 そこに配慮した形になっているわけだね。
だからか、合宿はインターハイ開始2日前まで続くよ。 今年は8月11日かららしいので9日解散。 開始は2日からなので1週間の合宿だ。 私達は1日に大阪へ向かうよ。
「というわけだから春くん、度々申し訳ないんだけどまた夕ちゃんの事お願いね」
「わかりました」
私達がいない間、家事が全くダメダメな夕ちゃんのお世話は春くんにお願いしている。 申し訳ない。
「俺1人でも何とかなるんだが」
「ならないよ」
「帰ってきたら間違いなく家の中無茶苦茶だよぅ」
誰も夕ちゃんのことを信用していないのであった。
◆◇◆◇◆◇
そんなこんなで8月1日になりました。
早朝に駅前に集合し、一路大阪を目指す。 渚ちゃんは合宿中や大会中にも受験勉強するつもりらしく、大量の問題集を持って来ているようだ。 よほど自分の学力に自信が無いようだ。 逆に麻美ちゃんは携帯ゲーム機を大量に持って来ている。 色々と正反対な2人である。
「あんた、勉強せんでええんか?」
「普段からしてるよー。 私は要領良いから」
自分で言うのかと思ったけど、麻美ちゃんはあれで本当に要領が良い。 勉強のしかたもよくわかっているし、無駄に根を詰めずに適時適量しっかり勉強しているようだ。 やる時とやらない時のメリハリがしっかりつけられている。
ノートも見せてもらったけど、要点がきっちりまとまっていて実に綺麗だった。 成績が良いのも納得である。
「ぐぬぬ……一見アホそうなくせに」
「なははは!」
麻美ちゃん余裕の大爆笑である。
東京駅からは、東京組の3人である弥生ちゃん、宮下さん、新田さんと合流。 新幹線に乗り新大阪を目指す。
「よ、皆お揃いやな」
「おーす」
「おはようございます」
3人と挨拶を交わす。 6月のインカレの後に会ったばかりだから、そこまで久しぶりって感じはしないね。
「ってあれ? 弥生ちゃん髪伸ばしてるの?」
「これか? いや、そうやないんやけど」
大体私と同じヘアスタイルだったけど、今はちょっと伸びており、後ろ髪の先っぽを小さなポニテにしてまとめている。
「この美智香が伸ばせ言うてうるさいんや」
「ちょっとぐらいいいじゃんー。 雰囲気変わるわよ?」
「ウチは今まで通りでかまへんのや」
大阪で切ったろかなと、ぶつぶつと呟く。 しかしそれを奈々ちゃんが聞いて返す。
「良いじゃん。 それ似合ってるわよ?」
「そやろか?」
「うんうん。 私もそう思う」
これはこれで似合うと思う。
「まあ、せやったらもうちょいこのままでもええわ」
案外チョロいようだ。
「私も以前ウィッグやらなんやらでめちゃくちゃに弄られたな……」
遥ちゃんは何故か遠くを見ながらそう呟く。 今でこそ自分で髪を伸ばすようになったけど、最初はかなり抵抗ある感じだったよね。
「亜美ちゃんも髪伸ばしたらええやん」
「私はこれで良いよ」
私は変えるつもりはない。 幼稚園児の頃からずっとこの髪型だからね。
「亜美ちゃんも伸ばせば似合うと思うけどなぁ」
「希望ちゃんも伸ばせば良いのに」
「私は別に」
希望ちゃんには希望ちゃんの拘りがあるらしい。 わかるわかる。
◆◇◆◇◆◇
新大阪──。
「到着ー! なはは、前回の合宿以来だ」
「ウチは京都におった時にたまに来とったさかい、新鮮味あらへんな」
「あはは。 ささ、ホテル行くよ」
今回の合宿で宿泊予定のホテルはすぐそこだ。 早く言って監督に到着報告を済ませよう。 紗希ちゃんももう来ているはずである。
ホテルへ入り、小林監督に報告と挨拶。 その後は紗希ちゃんにも連絡してロビーで合流。
「やっほー。 皆とは先月会ったばかりね。 弥生と宮下さんと新田さん、お久しぶりー」
「おー、久しぶりやな」
「おひさー」
「お久しぶりです」
紗希ちゃんも来て勢揃い……じゃないや。 大阪出身の2人と眞鍋先輩を忘れてたよ。
ただ3人はまだ来ていないらしい。 ルーキーチーム集合はまだ少し先になりそうだ。
「腹減ったし昼飯に行こうぜー」
「遥はすぐそれ」
「ははは、ええやん、どっか食いに行こや」
というわけで、ホテルに着いて早々にお昼ご飯を食べに行く事になったよ。
賑やか賑やか。
お昼は近くのラーメン屋さんで済ませたよ。 私はしょうゆラーメンをいただきましたよー。 美味美味。
「そや。 渚、受験勉強は出来とるか?」
「ま、まあ、ぼちぼち」
「大丈夫だよ。 私がビシバシ家庭教師してるからね」
「ほんま亜美ちゃん頼むで?」
「お任せだよ」
志望校合格率100%を誇る私の家庭教師術をもってすれば渚ちゃんも合格間違い無しだよ。 やったね。
「渚っち! 勉強なんか出来なくても生きて行けるよ」
「あかんで渚。 美智香みたいなったらあかん」
「が、頑張る」
そういえばいつの間にか宮下さんのことを下の名前で呼ぶようになったみたいだ。 弥生ちゃんと宮下さんも仲良くなったようである。
「ちなみに、もし大学落ちたらどうするのー?」
「縁起でもない事を……受かるわい」
「もー、例え話じゃんー」
麻美ちゃんはケラケラ笑いながら渚ちゃんの背中をバンバン叩いている。 ちなみに麻美ちゃんは大学落ちたら浪人はせずに小説家一本で行くとか。 麻美ちゃんはしっかり考えているようだ。
「縁起でもあらへんのはたしかやけど、あんたも最悪の場合を想定して考えておいた方がええで。 その辺、藍沢妹はちゃんとしとる」
「う、わ、わかった」
と、渚ちゃんは少し元気を無くすのであった。 でも弥生ちゃんも言う通り、最悪のパターンは想定しておくべきだ。 特に渚ちゃんは実家に無理を言ってまで千葉の大学を受験するのだ。 落ちたら京都に戻って来いと言われるかもしれないし。
「なはは、落ちなきゃ良いのだー!」
「あんたが言い出したんでしょうが……」
奈々ちゃんには呆れられるのでした。
ラーメン屋を出てホテルへ戻ると、黛姉妹がロビーで寛いでいた。 どうやらラーメン屋に行ってる間に到着したらしい。 話によると眞鍋先輩も来ているとの事。
これでルーキーチーム勢揃いだ。
「ふぁぁ……朝早く起きたから眠たいよ。 部屋に入って寝よう」
私はお昼を食べたせいもあるのか、眠気がいきなり襲ってきた。
他の皆もミーティングまで仮眠するとの事で解散。
部屋に戻ってベッドへダイブ。
「ふわぁ……眠いねぇ。 夕ちゃんはお昼食べたかなぁ?」
一応春くんにお願いしたし大丈夫だとは思うけど、念の為メールしとこうかな。
「……あぅ、もう眠い。 おやすみだよぉ」
夕ちゃんからの返信を待つ余裕すらなく、目を閉じて夢の中へと旅立つのであった。
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