第736話 デザイン案
☆夕也視点☆
さて、今日は午前の講義へ出ている。 今日も奈々美と一緒だ。
今日は奈々美も講義の後は部活も無いという事で以前相談した指輪のデザイン案を作るのに協力してもらう予定になっている。
午前の講義も終えて大学の門の前で奈々美を待つ。 奈々美の知り合い達が俺の姿を見て「藍沢さんならもうちょっとで出てくるわよー」だとか「今日は昼からホテルちょっこーってヤツー?」みたいに茶化されてしまう。 まあ大学内では俺と奈々美は付き合っていることになっているからそれも無理はない。
しかし昼からホテルってなぁ……。
「お待たせ夕也」
ちょっと待っていると奈々美が手を上げてこっちへ近付いてきた。
「とりあえずファストフードでも食べていきましょ?」
「了解」
先に腹ごしらえを済ませてしまおうという事で近くのファストフード店へと向かう事にした。
◆◇◆◇◆◇
バーガーを頬張りながらどこでデザイン案を練るかを相談してみると。
「そうね。 その辺の安いホテルにでも入りましょっか」
「マジか……」
本当に昼からホテルにちょっこーだとは思わなかった。
「何よ。 別にナニしようってわけじゃないでしょ? あ、もしかしてしたいわけ? しょうがないわねぇ、1回ぐらいなら別に良いわよ?」
「しねぇって」
「あら残念」
どこまで本気何だかさっぱりわからん。 こいつは俺とそういう事をすることには抵抗が無いのだろうか?
「ん。 じゃ、ホテルで良いわよね?」
「あいよー」
ま、指輪のデザイン案を練るだけだから大丈夫だろう。 バーガーを完食してファストフード店を出て、近場の格安ホテルへと向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇
「ここが一番安いわね」
「……」
何でよりによってラブホなんだ。 たしかにこの辺りでは一番安いのは安いが……。
奈々美は気にせずさっさと入って行ってしまう。 実は宏太とこういうとこに入り慣れていたりするんだろうか? 有り得る。
奈々美が適当に部屋を選んでさらにズンズン進んでいく。 部屋に入るとやたら雰囲気のある部屋であった。
「お前慣れてんな」
「まあね。 何回かラブホに入ったことあるし」
やっぱりそのようである。 まあ、家ではやり辛そうだもんな。 奈々美は部屋に入るや鞄を置いてこう言った。
「汗かいちゃったしシャワー浴びていいかしら?」
何しに来たんだよ……。 と、文句でも言おうもんならぶん殴られるかも知れないのでここは反抗をせずに「どうぞどうぞ」と好きなようにしてもらう。
シャワールームからは奈々美がシャワーを浴びている音が聞こえてくる。 機嫌も良いのか鼻歌も飛び出している。 つーか、何でシャワールームの窓はすりガラスなんだよ。 微妙に奈々美の体のラインが映って妙にえろいぞ。 いや、何をまじまじと見てんだよ。
とりあえず壁の方を向いてシャワールームの方を見ないようにする。
少しするとシャワーの音が止んでシャワールームから奈々美が出てきた。
「よし、始める……か?」
「そうね。 ん? どうしたのよ」
「何でお前バスタオル巻いて出てきてんだ? 服着ろ服」
「別に良いでしょ? 真っ裸じゃないんだし。 なんならあんたは、私の真っ裸見たことあるし構わないでしょうが」
「見たことがある無いの問題なのかよ……」
「そんなもんでしょ」
こいつが良くても俺が困るんだよなぁ。 何て破壊力した物をぶら下げてやがるんだこいつは。
「……何? 胸ばっか見ちゃって?」
「何でもねぇ。 さて、とりあえず始めるぞい」
「おっけ。 で、あんたが今日までに考えた案ってのは? 見せて見なさいよ?」
そう促されて俺は
「……綺麗なノートね? 中を見てもいいかしら?」
「お、おう」
奈々美はノートの1ページ目を開いてすぐに閉じた。 それもそうだろう。 ノートの1ページ目には「難しい。 わからん。 どんな指輪が良いんだ?」と書いて終わっている。
つまるところ……。
「あれだけ悩んでおきながら、案はまだ1つも無いって事ね?」
「その通り!」
「アホか……何日考えてるのよ?」
「それなりには」
「よくこれで1人で何とかしようとしたわね?」
「む、むう」
「ま、婚約指輪渡すなんて一生に一度の事だし慎重になるのも仕方ないわね」
「それな!」
「にしても今日まで進捗0ってのは慎重すぎだと思うけども」
「あぃ……」
「はぁ。 で、基本的な情報ぐらいは決まってんでしょうね?」
「おう。 予算は20万前後、ダイヤの指輪だ」
「ダイヤで20万ね。 本体次第だけど0,25~0,3カラットぐらいかしら? 相場には詳しくないけども」
「俺もよくわかってないからそこんとこは奈央ちゃんに任せようかと思う」
「そうね。 あの子なら良い具合に予算にあった石を選んで作らせてくれるでしょ」
「うむ」
「問題は本体の形ねぇ。 亜美は私や紗希と違って派手なのは好まないのよ。 デザインは地味めな方が良いと思う」
「おお!」
いきなり有用な情報が出て来たな。 早速ノートにメモだ。 地味めなデザインが良いと。
「そうそう。 指輪本体は特にひねったりすることはしない方が良いでしょう。 単純な構造のリングで良いと思うわよ? 凝りたいって言うならこういう感じのにするとか……リングに亜美の名前彫るとか」
と、ノートに絵を描いていく。 2本のリングをクロスようなデザインの指輪を描いて、頂点部に石を入れる台座を描き込みダイヤと書き入れる。
「おお……なるほど。 これぐらいなら派手じゃないな」
「でしょ?」
なんだかんだ言ってこいつに相談したのは正解かもしれんな。 1人で考えても何1つ思い浮かばなかったものが、奈々美相談しただけで一気に進んだ。
「普通でしょこれぐらい。 あんたが情けなさすぎるのよ」
「うぐっ」
「さて、材質はどうする? やっぱ純金? 白金?」
「亜美には金より白金とか、何なら銀でもいいような気もするが」
「そうね、私もそれに同意だわ。 良い感じじゃない」
俺はノートに材質候補を描き込む。
「何よすぐに決まるじゃない。 こんな事で何日も悩んじゃって」
「いや、さっきも言ってたけど一生に一度だぞ? 慎重にもなるだろ」
「はいはい。 さて、まだ30分ほど時間余っちゃったけどどうしようかしらね?」
「出ればいいだろ?」
「勿体ないじゃないの。 途中で出ても1時間分のお金取られるのよ?」
「じゃああと30分ゆっくりしてりゃあいいじゃないか」
「ラブホよここ?」
「いやいや……お前もいい加減懲りろな?」
「ぬー。 夕也の癖に。 ほれほれ、バスタオルの上から見える谷間どう?」
「むむう」
正直って魅力的だが……。
「ふふ、冗談よ冗談。 今回は私もそこまでやる気は無いわよ」
と、奈々美はそこらに放置してあった今日着てきた服を拾い上げ、脱衣所へと消えていく。
驚かせやがって。 しかし奈々美は相変わらずだな。 俺と宏太のことどっちも好きだというが、本当に何を考えているんだか。
脱衣所から出て来た奈々美と時間を潰してからホテルから出て家へと戻ることにした。 家に戻ったら今日決まったデザイン案を紗希ちゃんに送ってみようと思う。
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