第732話 嬉しいのかな?
☆亜美視点☆
朝です。 朝食を食べた後は、京都へ戻るという紗希ちゃんを駅までお見送り。
その場で皆とは解散となった。
麻美ちゃんと渚ちゃんはこのまま拠点に戻り、受験勉強のようです。
私はその2人に頼み込まれて家庭教師をしてあげる事になった。
お休みでも大忙しだよ。
「んじゃ、夕方には帰るからねぇ」
「おう」
「家庭教師頑張ってね」
「麻美、亜美に迷惑かけるんじゃないわよ?」
「失礼なー」
「清水先輩、よろしくお願いします」
皆とは別れて、私達3人は拠点へと戻る。
「んー。 拠点って呼ぶの何か武骨で嫌じゃないー?」
と、そう言い出したのは麻美ちゃんだ。 たしかに何か名前を付けたほうが良いかもしれないね。 今度皆に相談してみる事にしました。
◆◇◆◇◆◇
「ビシバシだよ!」
「な、何なんですかそのキャラ……」
「亜美姉は形から入るタイプだからねー。 家庭教師になる時はこんな感じだよ」
「さー、やってくよ! まずは問題集! 出来たら見せてね」
「は、はい」
「おー」
という事で、せっせと問題集を解き始める2人。
私はその間は暇暇なので、読書でもして待っている。
「わかんないとこあったら遠慮なく訊いてね」
「はい」
「おー」
麻美ちゃんは成績も良いし、大丈夫そうだというのはこの間でわかっている。
問題なのは渚ちゃんの方のようだよ。
「ぐぬぬ。 せ、先輩。 これなんですけど、どうやったらこうなるんでしょう?」
「ん? どれどれ」
渚ちゃんの指差す問題を見る。 どうやら式を展開して解く問題のようだね。 展開するのはわかるが、何でその形になるのか、理屈がわからないようだ。
理屈がわからないと形で覚えていても、理解できているわけじゃないから、ちょっと意地悪な問題を出されると躓くやつだ。
「よーし。 良い? これはね?」
だから、ちゃんと理屈がわかるように実際に式を作って渚ちゃんに解かせながら丁寧に説明していく。
「つまりこういう事ですか……」
「うんうん。 じゃあちょっと意地悪な問題出すよ」
説明した事を理解出来たなら問題無く解けるはずだ。
「む……」
カリカリ……
渚ちゃんは悩みながらも私の教えた事を思い出しながらゆっくりと式を展開していく。
時間は掛かったが何とか形に出来たようだ。
「うん。 バッチリだよ。 理解したって事だね」
「おお……凄い……この私でもわかるようになったで。 清水先輩ありがとうございます!」
「いやいや。 この調子でどんどんいこう」
渚ちゃんもちゃんと教えてあげればすぐに出来る様になるじゃない。 きっと頭は良いんだね。
その後もちょいちょいわからないという渚ちゃんを教えながら、時間は昼を回った。
3人で駅前のスーパーへ買い出しへ行き、簡単なお昼ご飯を食べながらテレビを視る。
「このドラマ好きなんよ」
「ドラマはあんまり見ないなー。 私は大体バラエティー」
「私はワイドショーかな」
「清水先輩っぽい」
「亜美姉は小学生の頃からワイドショーばかりだったー」
「ドラマもバラエティーも視てたよ」
基本的にお昼はワイドショー、夜はバラエティーやドラマであった。
「このドラマ、次回が最終回なんですよ」
「ほお。 私見てないからわからんー」
「私もだね」
とはいえ、別に視たい番組があるわけでもないのでこのまま渚ちゃんが視たがっているドラマを視聴する事に。
どうやらドロッドロの人間関係がテーマのドラマみたいだ。 騙し騙され、略奪から浮気からやりたい放題。 凄いドラマだよ……。
「この人達ってどういう関係?」
「この2人は愛人関係です。 お互いパートナーがいながら隠れて関係を……」
「と、とんでもないドラマだね」
「渚はこういうのが好きなのかー」
「そや」
ドラマはどんどん進んでいくが、主人公の男女も周りの人間達に振り回されながらも、仲を進展させていく。 どうやら愛し合ってはいるようだけど、周りの人達が色々と障害になっており中々順風満帆とはいかないようである。
しかし、遂に男性の方が男を見せるようである。
「おお、やっぱプロポーズするんやな」
「おお……」
「プロポーズー」
と、3人で見入る。 男性の方が女性と2人でデートを楽しんだ後、不意に取り出す指輪。
婚約指輪だ。 それを見た女性の方は驚いた表情を見せた後で涙を浮かべる。
「……」
「おお、ようやくここまで……」
「渚は没入しすぎだよー」
「ええやろ別に」
女性がプロポーズを受けたところで次回へ続くようである。
プロポーズかぁ……。 当然私もされたことは無いけど、プロポーズされるってどんな感じなんだろう? ドラマの女性みたいに嬉しくて泣いちゃうのかなぁ?
「うーん」
「どしたの亜美姉?」
「うん。 プロっポーズされるのって嬉しいのかな? って」
「嬉しいに決まってるやないですかぁ! 私、今井先輩にプロポーズされるって考えただけで……あかん、幸せすぎて死んでまう」
「渚はまだまだ甘いなー! 私なんかプロポーズされるどころか結婚して子供まで産んでる妄想してるよ!」
「それはやり過ぎやろ」
「良いじゃんー」
最近はそうでもないけど、麻美ちゃんは結構妄想癖がある子だったのを思い出したよ。 どうやら今でも時々妄想ワールドに突入しているらしい。
でも、夕ちゃんにプロポーズされる想像かぁ。
「ん-む」
「亜美姉は嬉しいと思わないの?」
「嬉しくないわけじゃないと思うんだけど、実際にされてみないと何とも言えないよ」
想像上の夕ちゃんにプロポーズされてみたけど、所詮は私の想像。 感動的な感じにはならないねぇ。
大体私は、今のところ夕ちゃんとの結婚っていうのはあんまり考えていない。 お互い大学生だっていうのもあるし、結婚しなくても一緒にいられるし幸せだし。 結婚というものにこだわりは特にないのである。
その話自体は夕ちゃんにもしっかりとしてある。 そんな私に夕ちゃんはプロポーズするだろうか?
しないだろうなぁというのが正直なところである。
「亜美姉はなんていうか冷めてるねー」
「あはは、良く言われるよ」
「今井先輩の事ほんまに好きなんですかぁ?」
「それに関しては間違いなく好きだよ? そこは偽りなし!」
「なんや難しい関係ですね。 ドラマの主人公よりある意味面倒くさい女やないですか」
「うっ」
「なはは! 亜美姉は面倒な女ー」
結構グサリと刺さる言葉だねぇ。 でもやっぱり私は面倒くさい女なんだろうなぁ。 夕ちゃんは本当にこんな面倒くさい女で良いんだろうか? 私は今でも十分幸せだけど、夕ちゃんは今どうなんだろう?
「よくわかんないなら私達に譲れー」
「うわわ、ダメだよー」
と、2人からあーだこーだ文句を言われるも、よっぽどのことが無い限りは夕ちゃんを手放す気は無い。 よっぽどの事っていうのは例えば以前騒動があったように、誰かが夕ちゃんの子供を身ごもっちゃったりした場合である。 そうなれば仕方ない。 夕ちゃんも責任を取らなきゃいけなくなるし、泣く泣く夕ちゃんとはお別れするしかなくなる。
そうならないように夕ちゃんや周りの女子の行動は要監視だ。
うーむ。 夕ちゃんを守るには結婚するのが一番なのかなぁ?
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