第693話 優勝候補は?
☆亜美視点☆
予選を突破した私達、白山大学バレーボール部。
他にも希望ちゃんのいる青葉丘教育大学、奈々ちゃんのいる七星大学、そして遥ちゃんのいる羽山体育大学も決勝トーナメント進出。
何処の大学も山の真逆に入って、それぞれがぶつかるのは準決勝、決勝となる。
つまり私が希望ちゃんと対戦するにはここから2勝、更に奈々ちゃんや遥ちゃんと対戦するには希望ちゃんのチームに勝たなければならない。
どのチームも予選を圧倒的な強さで抜けてきた強敵だよ。
現在はミーティング中。 明日戦う東東京のチームの試合動画を視聴中です。
「良いチームだねぇ」
「そうね。 バランス良いですわね」
と、奈央ちゃんの言う通り攻守に隙のないバランス型のチームのようです。 予選を抜けてきただけあるねぇ。
「とはいえ、こっちには清水と西條がいる。 明日も2人を中心に試合を組み立てていく」
「頼むわよ、2人共」
「はい」
「お任せですわ」
私達白山は私達1年生2人を中心に戦う作戦のようです。
ここで躓くわけにはいかないねぇ。 まずは希望ちゃんとの勝負するためにはね。
今日のミーティングはこれにて終了。
明日の試合に備えてゆっくり休む事にします。
という事で、私と奈央ちゃんは大浴場へやってまいりましたよ。
「明日は余裕そうですわねぇ」
「いやいや、油断しちゃダメだよ。 月ノ木学園にいた時みたいに、皆が皆凄い選手じゃないんだし」
と、先輩達に聞かれたら怒られるかもしれないような事だけど、実際にはやっぱりかなり見劣りする。
月ノ木学園の皆は本当に凄かったんだと、今更ながらに実感しているよ。
「ま、それでも私と亜美ちゃんがいれば何とかなるわよー」
「あはは、頑張ります」
「で、明日は皆の試合も観て帰るんでしょ?」
「うん。 奈々ちゃんのとこは同時刻に開始だから観れないけど、希望ちゃんのとこと遥ちゃんのとこは観て帰るよ」
明日は4つあるコートで8試合の予定が組まれている。
私達白山と奈々ちゃんの七星大は前半試合に参加するので、お互いの試合観戦は出来ない。
逆に後半に試合のある希望ちゃんと遥ちゃんの試合は観戦出来るのだ。
「特に、順調に行けば準決勝で当たる希望ちゃんのとこは要チェックですわね」
「うん。 強敵になる事間違い無しだよ」
希望ちゃんくらいのリベロとの対戦経験はまず無いから、私のスパイクが通用するかどうかわからないもんねぇ。
「で、反対ブロックは何処が上がって来ると思う?」
話題は私達とは逆のブロックへと移る。 現在優勝候補に名前が挙がっているのは、遥ちゃんのいる羽山体育大学。 チーム力の高い大学で、元から強豪だと言われていたところに遥ちゃんが入ったので、当然と言えば当然。
ただ、今大会の予選を見た関係者によると、奈々ちゃんの入った七星大もかなりの戦力アップをしているという。
予選Dブロックの結果だけ見ても、全試合ほぼダブルスコアを付けて勝ち上がっている事から、とんでもない火力があるチームなのかもしれないよ。
「やっぱり現時点では何とも言えないかなぁ」
「そう? 私は奈々美のとこだと思うけど」
と、あっさり結論を出しているのは奈央ちゃん。
「結局のところ、奈々美のスパイクを止められるブロッカーかリベロがいないとどうしようもないと思うのよ。 遥なら可能性は十分にあるけど、そんな遥も常に前衛にいられるわけじゃない。 後衛に下がった時に奈々美をどう止めるかが鍵ってわけ」
「ふむふむ、なるほどなるほど……あれ? それってうちにも言える事では?」
私達白山はブロック力は高いチームではある。 ではあるけど、奈々美ちゃんクラスの火力を止められるかと言われると何とも頼りない感じである。
「まあ、そういう事ですわよ。 私から見れば七星大学が優勝候補筆頭ね。 あの奈々美に対抗できるとしたら、練習試合で勝ってるらしい希望ちゃんの青葉丘かしらねー」
むぅ、奈央ちゃんの評価ではそうなってるんだねぇ。
「じゃあさ、仮に私達と奈々ちゃんが決勝で対戦するってなった時に、どうすれば良いかな?」
「まあ、一つだけ考えている事はあるわよ」
「おお、さすが奈央ちゃん! して、その考えている事とは?」
「簡単よ。 亜美ちゃんが奈々美のスパイクを拾って、亜美ちゃんがスパイクを決めてくれるだけで良いんだから」
「簡単ではないかなぁ……」
奈央ちゃんは他人事だと思って無茶振りするんだから……。 まったく困ったものである。
「私のレシーブ力は希望ちゃんには敵わないよ。 奈々ちゃんのスパイクを完璧に拾うのは中々難しいかな」
「まあ、最悪上げてくれるだけでも。 トスなら任せてって感じね」
「うーん。 決勝戦がその組み合わせになったら、その時は頑張ってみるよ」
「頼みますわよー」
浴場を後にして、寝るまでは奈央ちゃんのお部屋で過ごす事にした。
奈央ちゃんは日課になっているらしい、紗希ちゃんとのビデオ通話を始めるようだよ。
「もしもし、やほー! お、亜美ちゃんじゃん! そっか、大会中なんだっけ?」
「うん。 紗希ちゃん元気そうだねぇ」
「きゃはは、元気元気。 ゴン太も元気よー、ほら」
と、頭の上で大人しくしているハムスターにカメラを向ける。
可愛いねぇ。
「で、大会はどうなのよ奈央ー?」
「予選リーグは皆突破したわよ」
「おお、さすが。 良いなー、私も早く皆とバレーしたいわよー」
「夏の合宿まで辛抱なさい」
「ふぁーい」
サークル活動としてバレーボールを続けているらしい紗希ちゃん。 バレーボールをしていると、月ノ木学園の皆が恋しくなるみたいで、たまにアルバムなんかを開いて大会の事とか思い出しているという。
「部活に入れば良いのに」
「時間が無いのよね。 残念ながら」
「大変だねぇ。 デザインの勉強は捗ってる?」
「捗ってるわよ。 コンピューター使ったデザインとかもあって、結構楽しいわ。 やっぱりこの道選んで良かったって思う」
「そかそか」
「青砥さんには迷惑かけてない?」
「失礼ねー。 ちゃんとやってますー」
同居人の青砥さんとは仲良くやっているようです。
同じ大学の同じ学部ということもあり、一緒に課題をやったりしているみたい。
紗希ちゃんとたくさんお話しできて満足した私は、明日に備えて部屋に戻り休む事にしたよ。
寝る前に、夕ちゃんに電話をかけるのが私の日課である。
「もしもーし」
「おう、亜美か。 予選突破したんだってなぁ」
「あれ、何で知ってるの?」
「さっき希望からも電話があったんだよ」
どうやら私より先に希望ちゃんが連絡をしていたらしい。 むぅ、先を越されたか。
「皆さすがだよな。 どこが優勝するかわかんねーし面白いだろ? 俺はやっぱり七星贔屓だがな」
「私の白山じゃないんだね」
ちょっとショックである。
まあ、在籍している大学を応援するのは普通だけども、彼女の応援もしてほしいと思うのである。
「亜美も頑張れよ。 応援はしてるからな」
「うん。 ありがと」
応援はしてくれているらしいので、とりあえず許してあげようと思います。
夕ちゃんとも沢山話してエネルギー充填が完了した私は、22時頃には布団に入り休むのでした。
大会頑張るよー。
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